「トランプ関税ショック」が日産・ホンダを“再接近”させる《7500億円最終赤字の日産が持て余す米国工場をホンダが活用して…》

2025年4月28日(月)7時0分 文春オンライン


日産が2025年3月期の連結決算で7500億円もの巨額最終赤字になる見通しだ。もはや日産単独で生き残るのは至難の状況となった。さらに、トランプ政権による関税アップに日産のみならず、ホンダも苦しむ。この危機をきっかけに、両社の再接近はあるのか——。井上久男氏のレポート「 トランプ関税ショックが日産・ホンダを“再接近”させる 鴻海と『日台4社連合』誕生か 」の冒頭を紹介します。



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かねてより過剰設備に悩む日産


 トランプ関税は日本の自動車業界を大きく揺るがしている。米ワシントンで4月17日(日本時間)、日本政府が派遣した赤澤亮正経済再生担当相が米国政府と初交渉に臨んだが、自動車への追加関税の撤廃について、赤澤氏は「強く申し上げた」と言うものの、現状では撤廃への見通しは立っていない。


 今後の展望が見えない中、日産自動車とホンダがいち早く関税対策を加速させている。かねてより過剰設備に悩む日産は、リストラ策「ターンアラウンド計画」で、米テネシー州の工場でのSUV「ローグ(日本名エクストレイル)」の生産ラインを縮小する予定だったが、撤回した。ローグは九州工場でも製造しているのだが、関税対策で米国での減産を取りやめたので、その分は九州で生産を減らすことに決めた。


 また、ホンダはUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)による関税免除を活かして、次期型シビックを米国からメキシコに生産移管する計画だったが、取りやめた。加えて、カナダ工場で生産している一部車種も米国内の工場生産に移管することを検討している。



業務提携を発表した日産の内田誠社長(左、肩書きは当時)とホンダの三部敏宏社長(2024年8月) ©EPA=時事


日産が持て余す米国工場が活用できないか


 しかし、ホンダの米国における主力生産拠点であるオハイオ工場は、「すでにフル稼働の状況にあり、カナダからの移管分を受け入れられる状況にない。関税を避けるために米国生産を増強したいが、即座には対応できない」(ホンダ関係者)という。


 そこでホンダでは、日産が持て余している米国工場が活用できないか、検討に入っているようだ。日産は米国で100万台余りの生産能力を保有していると見られるが、2024年は52万台しか生産しておらず、半分以上の設備が稼働していない。昨年8月に日産との業務提携を発表して以降、ホンダでは一時期、日産の米国工場の一部を買い取る案さえ検討されていた。


 ホンダと日産は2月13日、共同持ち株会社設立による経営統合交渉の打ち切りを決めたものの、両社とも業務提携は継続する意向を示しており、4月半ば以降、改めて業務提携の交渉を再開したという。そこで再び、ホンダによる日産米国工場の活用案が浮上してくる可能性がある。「トランプ関税」が予期せぬ呼び水となって、両社が再接近するかもしれないのだ。


※この記事の全文「 トランプ関税ショックが日産・ホンダを“再接近”させる 鴻海と『日台4社連合』誕生か 」は、月刊文藝春秋のウェブメディア 「文藝春秋PLUS」 に掲載されています。


(井上 久男/文藝春秋 電子版オリジナル)

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