相続工学というデータ研究を始めて5回目の春 元知事から「そこに愛」を求められた話

2025年5月2日(金)12時47分 PR TIMES STORY

 相続手続きサービスのプラットフォーム「みんなの相続窓口」を運営する株式会社ルリアン(本社:京都府京都市、代表取締役会長兼 CEO 藤巻米隆)は、これまでの事業展開により蓄積されたデータをベースとして「相続工学」と銘打った研究を続けています。5月5日の立夏を前に、相続工学にとって5回目の春を3月 13 日に京都で行われた相続工学研究会を中心に、これまでの歩みとともに当社広報チームがレポートします。

  <登場人物>

  蒲島郁夫    麗澤大学特別招聘教授(前熊本県知事)

  大澤義明    麗澤大学工学部教授

  石原慶一    京都大学成長政略本部特任教授

  渡邉文隆    京都大学成長戦略本部研究員(現特定准教授)

  藤巻米隆    株式会社ルリアン代表取締役会長兼 CEO

          (みんなの相続窓口 全国協議会会長)

  仁井勝之    F&Partners グループ代表

          (みんなの相続窓口 全国協議会幹事社代表)

3・13相続工学研究会がまさかの展開に

 相続工学の研究は、当初からのパートナーである筑波大学に、昨年から麗澤大学、今年から京都大学が加わりました。学会での活動についても、応用地域学会、日本オペレーションズ・リサーチ学会に加え、今年4月から日本計画行政学会に参画し、その輪を広げています。そもそも、相続といえば法学や行政論での研究がなされることがほとんどで、工学的視点で分析しようという取組みはほとんどありませんでした。背景として、研究に用いるための体系化されたデータが用意できないことが大きな理由となっていました。以前、『「紙からの脱却」アナログだった相続手続きをITド素人がたった半年でDXしちゃった物語』でご紹介した通り、当社では相続の工程を記録する例のない(あくまで当社感覚)本格的なシステムを作成し、データが集積できる環境を整えたことで、その分析をベースとした「相続工学」を誕生させることができたのです。

 今春、当社とその3大学が集まって互いの成果を発表する「相続工学研究会」(2025年3月13日)がおひざ元の京都市で開催されたのですが、そこで飛び出したのがまさか、まさかの言葉だったのです。麗澤大学特別招聘教授として基調講演とパネルディスカッションに参加した蒲島郁夫・前熊本県知事は「皆さんとの出会いを通じて、私の中で相続工学というものがどんどん大きくなっていきました。非常に重要な研究だと思います。盛り上がってきていることは非常に喜ばしいことです。ただ、私から一つお願いがあるのです。できれば、この“相続”と“工学”の間に“愛”がある研究にしていってもらいたいと願っています」という言葉を発したのでした。東京大学教授から政治の世界に転身し、知事としてくまモンを誰もが知る存在にした他、熊本地震の復興、半導体生産大手のTSMC誘致による県経済の発展などに取り組んできた同特別招聘教授の突然の要望に会場は笑いに包まれ、同時に「相続」というものを取り扱う以上、不可欠なものが何かを再認識する機会となりました。

麗澤大学・蒲島郁夫 特別招聘教授


相続工学研究会の様子

京都大学の研究発表でも

 今回の相続工学研究会から新たに加わった大学の一つが、当社にとって地元にある京都大学です。石原慶一・成長戦略本部特任教授と渡邉文隆・同本部研究員(現在は同本部特定准教授)が参加し、葬儀後に起こる問題(火葬など)についての研究の経過が発表されました。

京都大学成長戦略本部・石原慶一特任教授

京都大学成長戦略本部・渡邉文隆研究員

 研究の最終形となる論文は現在執筆を進めているとのことですが、その研究発表の中で当社のような相続のプラットフォーム事業者にとって印象的だったのが「ジャンケレヴィッチの死生観」と「柳田国男氏の2.5人称の視点」でした。人の死をどのようにとらえるのかについて、私の死(一人称)、近しい人の死(二人称)、誰かの死(三人称)という視点で考えるジャンケレヴィッチに対し、ノンフィクション作家の柳田氏が、医師などが「(治療活動を通じて)他人を身内のように思い始める2.5人称の視点」を指摘したことなどが紹介されました。

 相続手続きを進める、当社プラットフォームに参画する専門家(士業等)も、面談やヒアリングを通じて、ご遺族に対する理解が進んでいくうちに、「何とか争いごとのないように」と願う気持ちが大きくなります。今回紹介された「2.5人称の視点」にピタリと当てはまるもので、当社による相続プラットフォーム運営にも大きなヒントとなる言葉でした。また、いずれにおいても、三人称が二人称化していく過程には、相手のことを知ることで何らかの愛が生まれているからだということも実感できました。

麗澤大学タイアップ講演での重要なメッセージ

 冒頭の話に戻ります。京都大学同様に今回の研究会から加わったのが千葉県柏市にある麗澤大学です。筑波大学時代に当社とともに相続工学を立ち上げた大澤義明教授が昨年4月に同大学工学部の副学部長に就任したのを機に、国内で初めて「相続工学研究センター」が立ち上げられました。同センターには、当社の藤巻米隆・代表取締役会長兼CEO、小西弘樹・代表取締役社長、山西康孝・常務取締役、宇佐美朋香・執行役員デジタルデザイン部長の4名が参画し、前二者が客員教授、後二者が客員准教授という立場で研究を進めているほか、全学年を対象とした講義「相続におけるビジネスプラットフォーム論」も担当しています。

 その麗澤大学で特別招聘教授を務めているのが、前出の蒲島・前熊本県知事で、今回のタイアップ講演が実現することになりました。2024年12月に当社との間でやりとりが始まり、様々な情報共有を通じて、相続工学とその研究について理解を深めた上での講演となりました。

 同特別招聘教授は、国際政治学者サミュエル・ハンティントン氏の「期待値/実態値=不満」というギャップ仮説を紹介した上で、分母となる実態値が小さく、分子の期待値が大きい場合に不満という形につながっていくことを解説。これには、会場で参加していた相続の専門家の皆さんも興味深く耳を傾けていました。遺産相続において、期待するところと実態値の乖離は、さまざまな問題を引き起こします。同特別招聘教授は、その不満を小さくするためには、展望をしっかりと伝えることで期待値を下げることが必要であることも合わせて伝えていました。実際に相続に臨む遺族の中に工学的な数式があるとすれば、これなのではないかと思わされる場面でした。

 さまざまな理論的なバックボーンの紹介後、同特別招聘教授がまとめとして言い放ったのが、冒頭の「相続と工学の間に愛がいる」という旨の言葉だったのです。

相続工学ができるまで〜筑波大学の貢献〜

 時は遡り2021年の4月、ありそうでなかった学問、相続工学は誕生しました。それまで「相続」は、法学や行政論の中で研究することが主流でした。経験則からの“感覚” はあったものの研究結果としての“データ”は、多くありませんでした。相続は、様々な社会課題と密接な関係を持ちます。空き家や所有者不明土地、都市部への資産流出など、超高齢社会の日本においてその深刻さは、年々増しつつありました。相続のメカニズムを解き明かし、社会課題を解決することは、もはや急務となっていたのです。

 当時、私たちはプラットフォーム事業で有していた情報を社会課題解決に活用できないかと模索していました。しかし、データが整理されておらず、分析のノウハウも十分ではなかったため、なかなか思うようには進みませんでした。

 そんな中、転機が訪れます。筑波大学に社会問題を工学的技法によって分析し、解決しようとする「社会工学」という学問があることを知りました。「みんなの相続窓口のリーガルな視点と、社会工学を組み合わせれば、興味のある成果が出せるに違いない!」そう直感した私たちは、筑波大学へと話を持ちかけました。「前例のない話、突き返されるかもしれない・・・」そんな不安とは裏腹に、私たちの話に耳を傾けてくださった当時・同学社会工学類に所属していた大澤教授(現麗澤大学教授)。「おもしろそうな取り組みですね」と快諾していただきました。そして筑波大学との共同研究が始まりました。これが、後の相続工学研究会へとつながっていくことになります。

2021年4月、共同研究に関する協定調印式の様子。当時筑波大教授の大澤義明氏(現麗澤大教授=右)と当社会長の藤巻米隆

研究の進化と発展

 それから工学的なアプローチの下、相続のデータを様々な視点から論理的に分析することが可能となりました。2021年11月に「遠距離相続と遺産移動(応用地域学会)」、12月に「地方が逸失する相続資産の推計〜可動産と不動産の違いに着眼して〜(オペレーションズ・リサーチ学会)」という研究を発表。その内容が日本経済新聞に取り上げられると、さまざまな反響を呼び「相続工学」という学問分野が徐々に形を成していきます。そして2022年3月、相続工学研究会第1回カンファレンスの開催が実現します。手探りで始めた研究が、一つの形となった瞬間でした。研究会はその後も続き、今年4回目を迎えています。

 研究の実成果として、2021年から2024年までの間に10本以上の論文が誕生しました。2023年10月には「相続時調査データによる相続と空き家発生との関係分析」をテーマとした研究が初めて査読論文として学術誌に掲載されました。また、2024年9月には「混合整数最適化による相続工程の長期化リスク採点システム」をテーマとした研究が、第44回日本オペレーションズ・リサーチ学会で事例研究賞に輝きました。2024年4月からは、麗澤大学内に相続工学研究センターが開設。2025年1月からは、京都大学との共同取り組みが始まり、相続工学は今もなお成長を続けています。

愛と政策提言 相続工学の未来

 時系列は再び今年の相続工学研究会に戻ります。研究会のフィナーレとして行われたパネルディスカッションには、基調講演の蒲島・麗澤大学特別招聘教授、研究を発表した石原・京都大学特任教授に、大澤・麗澤大学教授、当社会長・藤巻のほか、相続手続きを実際に担う士業を代表してF&Partnersグループ仁井勝之代表が参加して行われました。仁井代表からは、火葬待ち等の葬儀後の問題に関する京都大学の研究について「保険請求や相続放棄など期限付き手続きに影響する」という相続手続きとの関連性の指摘があった他、2.5人称の視点に対する「非常に考えさせられる」という感想が寄せられました。

 また、蒲島特別招聘教授からは、基調講演に続いて「長期的な視点の重要性とともに、相続工学の研究に愛が必要」という意見が強調されました。当社会長の藤巻からも「相続支援においても愛とホスピタリティが不可欠」という過去の経験をベースとした意見がありました。最後に、相続工学の生みの親ともいえる大澤・麗澤大学教授からは「相続界隈(相続工学研究ネットワーク)の形成と社会発信・政策提言が次のステップ」であるという未来への展望が示され、研究会は幕を下ろしました。

 蓄積されたデータをどう分析しようかと、ある意味途方に暮れて始まった相続工学という研究が、さまざまな大学や人を巻き込んで成長を続け、5回目の春には「政策提言」という未来構想が示されるまでになったことに、関係者一同が万感の思いに浸る会となりました。ルリアンという企業課題の解決から、社会課題の解決へと視野を広げ、「愛」をもって取り組んでいきます。

パネルディスカッションの様子。写真左から当社社長・小西弘樹、当社会長・藤巻米隆、F&Partnersグループ・仁井勝之氏、麗澤大・蒲島郁夫氏、麗澤大・大澤義明氏、京都大・石原慶一氏


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