高齢な親が入院、暗証番号を聞きだしキャッシュカード利用は家族でもNG…「代理人カード」ならOK
2025年5月25日(日)10時35分 読売新聞
三菱UFJ銀行が2021年に始めた、予約型の代理人サービスのチラシ
急な体調不良や入院時には、自身で銀行や現金自動預け払い機(ATM)に出向くのは難しい。多くの金融機関には、口座の名義人に代わって家族らが預貯金を引き出せる「代理人カード」などの仕組みがあり、いざというときの備えの一つとなる。(大石由佳子)
東京都内のパート女性(44)には、富山県で一人暮らしをする父(73)がいる。「高齢なので体調が心配。父と預貯金の状況を共有し、入院時など、父の口座から医療費を払えるようにしておきたい」と話す。
行政書士の今藤里子さんは「銀行で代理人カードを作るのが簡単でお勧め」と話す。代理人カードは、家族ら代理人用に発行される2枚目のキャッシュカード。代理人はそのカードで、ATMでの出入金や振り込み、残高の確認ができる。
老親と離れて暮らす子どもが代理人カードを持っていれば、親が体調不良で外出が難しい時、子が親の口座から料金を振り込める。老人ホームで生活する親に代わり、子どもが現金を引き出すこともできる。「親から暗証番号を聞き、本人のキャッシュカードを借りて引き出すことは、家族でも望ましくない」と今藤さん。代理人カードの作成は、口座名義人がきちんと家族などに対応を依頼するということでもある。
名義人本人が窓口に行けば作成でき、通帳や届け出印などを持参して申し込む。代理人の条件やカードの発行枚数は、銀行によって異なる。基本的に作成したカードは名義人が受け取り、代理人に渡す。
窓口での取引についても、代理人制度がある。複数の銀行は、「代理人指名手続き」「代理人関係届」といった名称で制度を設けており、名義人があらかじめ、金融機関に代理人の情報を届けておく。
ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんは、「代理人カードや指名手続きは、名義人に判断能力があるうちでなければ申し込めないので注意が必要」と話す。例えば、認知症の親に代わり、子どもが申し込むことはできない。
名義人は、信頼できる代理人を選ぶことが大切だ。代理人による使い込みなどが起きないよう、名義人と代理人、家族らで情報を共有し、透明性を確保する。
黒田さんも代理人カードを作成し、親の財産管理をサポートしている。「メールやLINEも活用し、定期的に名義人と代理人が一緒に明細を確認する機会を設ける、代理人は口座の残高や、引き出したお金で購入した物のレシートを家族と共有する、などルールを設けるとよい」と話す。
名義人の意思に基づく取引が基本のため、「途中で名義人に判断能力がなくなった場合、代理人カードで出入金を続けることは、本来、認められていません」と黒田さん。
近年は、認知症対策などの観点から、代理人の予約サービスを導入する銀行も出てきた。事前に代理人を指名しておき、認知症など本人の意思確認が難しくなった場合、代理人が取引できる。三菱UFJ銀行が2021年、みずほ銀行が23年に開始している。
どんな対応や仕組みがあるか、口座がある金融機関に問い合わせておきたい。
代理人カードの注意点
・名義人が元気なうちに作成する
・名義人と代理人で定期的に明細を確認
・代理人が引き出したお金での買い物はレシートを残す
・代理人以外の家族とも情報を共有する
(黒田さんの話などを基に作成)