退職後も家賃支払う「賃貸」か、住宅ローン見極め「持ち家」か…住居費は手取りの3割が目安
2025年5月4日(日)11時0分 読売新聞
東京都上空(読売ヘリから)
暮らしにまつわるお金について専門家から学ぶコーナー「やりくり」では、4月から、住宅にかかる費用についてファイナンシャルプランナーの竹下さくらさんに聞きます。まずは持ち家か、賃貸住宅にするのかについてです。(大郷秀爾)
——家計の中で住居費はどの程度が目安ですか。
手取り月収に占める住居費の割合は、一般的に3割程度が目安です。パートナーと同居するなど2人世帯になった場合は2人分の収入になり、住居費が同水準なら2割程度に抑えられる利点もあります。ライフステージの変化で教育費などの支出増も考えられ、圧縮できる可能性がある住居費は大きなテーマです。
——持ち家か賃貸住宅かでどんな違いがありますか。
持ち家は住宅ローンを組む場合が大半で、月々の支払いが発生するという点では賃貸と大きな違いはありません。ただ、支払期間に差があります。一般にローンは最長で35年ですから、例えば30歳で購入した場合は、65歳で支払いは終わります。一方、賃貸では住む間は家賃が発生するため、退職後の年金生活に入ってからの負担が大きくなると思われます。
——賃貸に長く住み続けるのは難しいのですか。
住まいに縛られず引っ越しがしやすい、住居費が主に家賃や更新料に限られて家計の管理がしやすいなどの利点があります。転勤が多い、ローンを背負いたくないなど生活スタイルや価値観によっては賃貸が向く人もいます。退職後も無理なく家賃を支払える収入や貯蓄がある、連帯保証人を確保できるという条件を満たせば、賃貸に生涯住み続ける選択肢もあります。
——持ち家に向くのはどんな人ですか。購入を考えるなら、どんなタイミングですか。
ローンを組む前提で考えると健康状態に不安がなく、安定した収入があり、退職までに完済が見込める人は購入を考えてよいでしょう。結婚、出産などで将来の家族構成が見えてきた時期は購入を検討する一つのタイミングです。
——購入時期を考える上で、具体的なポイントは何ですか。
ポイントは四つあります。一つ目は物件価格の動向です。住宅金融支援機構が扱う住宅ローン「フラット35」の2023年度利用状況調査によると、平均購入価格は新築マンションが5245万円、土地付きの注文住宅は4903万円。近年は全体的に上昇基調にあり、購入できる金額か見極める必要があります。首都圏とそれ以外でも水準はかなり異なります。
——ほかのポイントは。
二つ目は住宅ローンにかかわる金利の動向です。マイナス金利政策が解除され、金利上昇などの変動を踏まえて固定型、変動型などローンの種類を選ぶことが重要です。
三つ目は税制面の優遇措置や補助金など国の支援策の充実度です。特に子育て世帯向けには住宅ローンの減税措置など支援が手厚いため、チェックしておきましょう。四つ目は家族構成の変化など、ご自身のライフプランです。
住宅ローンを組めるのが就労期間に限られるため、購入の選択は期間限定といえます。遅かれ早かれ購入するつもりならば、早めに決断するほうが合理的だと思います。
たけした・さくら 1969年、兵庫県生まれ。ファイナンシャルプランナーや宅地建物取引士の資格を持ち、個人のコンサルティングや、講師・執筆活動などを行う。2025年4月に千葉商科大基盤教育機構特任教授に就任。近著に「書けばわかる!わが家にピッタリな住宅の選び方・買い方」(翔泳社)など。