ホタテ販路「脱中国依存」、東南アジアを開拓し減少幅は限定的…国内の加工体制も強化
2025年5月9日(金)5時0分 読売新聞
水揚げされたホタテ
政府が近く閣議決定する2024年度の水産白書で、中国による日本産水産物の輸入停止で打撃を受けた日本のホタテの販路が東南アジアに拡大し、「脱中国依存」が進んでいる実態が明らかになった。
中国政府は23年8月、東京電力福島第一原子力発電所の処理水海洋放出に反発して輸入停止に踏み切り、今も措置を続けている。24年の日本の水産物輸出額は3609億円で、放出前の22年と比べ6・8%減った。
最大の輸出先だった中国が門戸を閉じたにもかかわらず、減少幅が限定的だったのは、官民挙げて「安定的な輸出を継続できる供給網」(白書)の構築に取り組んだことが大きい。
白書によると、日本の主力品目「ホタテガイ」の22年の輸出額は911億円で、このうち5割強を占めていた中国向けは24年にゼロに落ち込んだが、ホタテガイ全体の輸出額は695億円と23・7%減にとどまった。
これまで日本産ホタテは、輸出先の中国で殻むき加工し、最終消費地の米国に再輸出するケースが多かった。この殻むき加工の代替ルートを東南アジアで開拓したところ、22年に1%前後だったベトナム向け輸出、タイ向け輸出が24年には15・3%、6・0%に増えるなど、一定の多角化が進んだ。
日本国内での加工体制を強化するため、人件費や機器導入を支援した結果、日本から米国への直接輸出も、22年の8・6%から24年は27・5%にまで増えた。
トランプ米政権の関税措置で輸出環境は再び不透明さを増しており、政府は引き続き、供給網安定の取り組みを後押しする方針だ。