「ささいな額」の輸入品にも消費税、TemuやSHEINなど事業拡大に対応…世界で見直し広がる
2025年5月16日(金)9時0分 読売新聞
「デミニミスルール」見直しの動き
少額の輸入品への関税や消費税を免除する制度「デミニミスルール」を巡り、財務省が消費税を課税する方向で検討に入った。中国発のインターネット通販サイトなどが制度を利用して低価格商品の販売を増やしており、海外と国内の事業者の競争条件を平等にする狙いがある。米国のトランプ政権が中国からの輸入品に適用を停止するなど、世界で見直しが広がっており、国内でも対応を急ぐ。(土居宏之)
EU・豪を参考
来年以降の税制改正を見据え、少額輸入品に消費税を課すことを想定。制度の見直しで先行する欧州連合(EU)や豪州の方式を参考に課税方法を検討している。関税については、課税すると現場での作業負担が重くなる課題があるとして、免税措置を続ける見通しだ。
「デミニミス」は「ささいなことについて」を意味するラテン語だ。通関作業の負担を軽減するために、各国で同様の制度が導入されている。日本では現在、1万円以下の輸入品に対し、関税と消費税の課税を免除している。
見直しの先行事例のうち、EUでは2021年に付加価値税の免税制度を全廃した。通販サイトの運営事業者に税務当局への登録を任意で求め、原則として事業者に納税させている。登録がない事業者の輸入品の場合は、通関時に課税し、購入者から付加価値税を徴収している。
一方、18年に制度を見直した豪州は、物品サービス税の免除を一部で廃止する手法を採用している。売り上げが一定規模以上の事業者に税務当局への登録を義務づけ、申告納税を求める。基準に満たない小規模な事業者からの輸入品には免税制度の適用を続けている。
具体論深掘り
EUと豪州方式のそれぞれで課税逃れの対応や税関の事務負担の面で課題がある。財務省は政府税制調査会(首相の諮問機関)で、見直しに向けた具体論を深掘りする考えだ。
近年、中国発のネット通販サイト「Temu(テム)」や「SHEIN(シーイン)」などが各国でこの制度を利用し、低価格商品の販売を拡大しているとされる。調査会社センサータワーによると、24年に世界でダウンロードされた携帯電話向けEC(電子商取引)アプリは、Temuが5億5000万回で1位、SHEINが2位だった。
財務省によると、昨年、1万円以下の「少額貨物」の輸入は1億6966万件、4258億円となり、5年間で約5倍に拡大した。日本でも中国系オンラインモールの存在が件数を押し上げているとみられる。
制度を巡っては国内の事業者が不利な競争を強いられる問題点があることに加え、少額貨物の輸入が急増することで不正薬物などの水際取り締まりに影響が出かねないとの指摘もある。
米政府は「関税制度の抜け穴をふさぐ」として、5月2日から中国を対象にした免税措置を停止したほか、ベトナムが2月から制度を全廃した。EUは関税についても免除の廃止を検討するなど、各国で制度見直しの動きが広がっている。