「お世話になっております」よりもよほど効果的…メールの相手がつい前のめりで読む「書き出し3フレーズ」

2025年5月29日(木)17時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Inside Creative House

■「問題がないことが、問題」


メールの際に、「お世話になっております」や「お疲れ様です」から始めていませんか。こうした方は、まず売り上げを上げる気がありません。「人とつながる意識」が低いと言えます。


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「お世話になっております」や「お疲れ様です」という常套句を何の疑いもなく、普通に使っている方は、誤解を恐れずに言えば、「小さな箱の中」で生きています。誰もが使っている言葉ですし、言葉として何の問題もありません。が、「問題がないことが、問題」なのです。


「お世話になっております」「お疲れ様です」から始まるメールは、間違っていません。間違ってはいませんが、文字が並んでいるだけで、書き手の意思や意図が感じにくいのです。


だからこそ、何の記憶にも残りません。その他大勢の中に埋没してしまうのです。


読み手の印象に残り、興味関心を惹こうとする意識を持つだけで、これからの人間関係やビジネスは大きく変化していくものです。


筆者は仕事柄、たくさんの優れた経営者やリーダーとお会いしますが、今回お伝えする内容は、こうした優れた方に共通する視点でもあります。


■一見すると無難で、波風を立てない「いい人」だが…


さて、こうした意図のないメールを送ることは、一見すると無難で、波風を立てない「いい人」に見えるかもしれません。しかし、見方を変えれば、何も印象に残らない「どうでもいい人」になってしまわないでしょうか。


「いや、たかがメールでそれは言い過ぎでしょ」と思われるかもしれません。そして、その湧き上がってきた感情こそが「小さな箱」なのです。「小さな箱」の言い方を変えれば、固定観念、自分の枠組み、思い込みやパラダイムと言ってもいいかもしれません。


そして、メールに意思や意図を込めない方は、同じような仕事の進め方をします。一事が万事です。たかが、メールの書き方ひとつと思うかもしれませんが、その人の仕事に対する姿勢が透けて見えるのです。そして、優れた人は、こうした仕事に対する姿勢を驚くほどよく見ています。


こうした仕事への姿勢は、人生に対する姿勢につながります。


当然、お客さまへの向き合い方につながりますから、それを見て優れた人は、その人との付き合い方を決めています。そして、それは絶対に教えてくれません。


■実際に使える心を掴むフレーズ3例


人間関係を円滑にする「テニスの法則」というものを紹介しましょう。テニスの法則とは、相手とコミュニケーションをとるときに、最初に話題にするとスムーズになる言葉をまとめたものです。


テニスの法則は、それぞれあいうえお作文のようになっていて、テは、天気の話題。ニはニュース、スは好きなモノになります。


「テ」は、「暖かくなって桜が咲き始めましたね」「そろそろ梅雨入りしますね」のように天気や天候に関する話題を出すことで、本題に入る前のクッション言葉のようになります。


「ニ」は、「大阪万博が始まりましたね!」「もうすぐ父の日ですね」といったものから、近い地域に住んでいれば「駅前に新しくオープンしたスーパーに行ってきました」「もうすぐ○○神社のお祭りですね」と最新ニュースに関する話題を出します。


「ス」は好きなモノの話題です。洋服やアクセサリー、ネクタイやバッグなど、相手の持ち物や身に着けている物を話題にします。基本的に嫌いな物を身に着けている人は居ませんから、身に着けている物を話題にすることは相手への承認につながります。


■徐々にパーソナルな話題に踏み込む


テニスの法則は、「テ」「ニ」「ス」の順に徐々に相手へのアプローチがパーソナルなものになっていくようになっています。まずは無難な天気の話から始まり、ニュース、好きなモノと相手のパーソナルな話題に踏み込んでいくようになります。ぜひ相手との関係性の中で言葉選びしていただければと思います。


こうした「テニスの法則」を意識して実際にコミュニケーションをとるだけでも、無味乾燥なビジネスメールを送るよりもぐっと心の距離が近くなることと思いますので、まずは実践してみてください。


さて、ここからはさらに踏み込んで、相手と意図的に関係構築する方法をお伝えしたいと思います。


■さらに相手と深い関係を構築する方法は?


心を掴むフレーズとは、結論から言うと、相手にとって「自分ごと」になっているかどうかです。


自分にとって興味関心があれば、心を掴まれるし、興味関心がなければ、ただの文字の羅列となり、心を掴むことはできません。


たとえば、相手が大谷翔平の大ファンなら、「昨日の大谷のホームランすごかったですね!」から始めれば、「そうそう、あれはすごかったな」と想起させることもできるでしょう。ポジティブな感情を相手に与えることもできます。


相手が、自分と同じ出身地なら「地元に美味しいアップルパイの店を見つけました!」と地元グルメを共有することもできるでしょう。実際に食べておいしかったら、教えてくれたことへの感謝の念が起こるかもしれません。


写真=iStock.com/MSPhotographic
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相手が、映画好きなら「『キングダム 大将軍の帰還』の大沢たかおが日本アカデミー賞の最優秀助演男優賞を受賞しましたね!」と映画の話題を挙げることもできます。キングダムファンなら、うれしいニュースとなり親近感を覚えることでしょう。


■相手が大切にしていることを理解する


いくつかの事例を紹介しましたが、心を掴むフレーズとは、読み手にとって興味関心のあるものになります。


杓子定規に「この言葉を使えば、絶対に心を掴める」というものは存在しません。逆説的にいえば、存在しないからこそ、特別なフレーズになり、心を掴むともいえます。


人は自分が関心を持っているものに関心をもってもらえるとうれしいし、自分が大事にしているものを大事にされるとうれしい生き物なのです。


例えば、もしあなたに子供がいらっしゃるなら、子供を友人から褒めてもらえたらうれしいでしょう。または、もしあなたが大切にしている腕時計やお気に入りのネクタイやバッグがあったとしたら、それを褒められたら、うれしいと思います。


相手が大切にしていること、大事にしていることを理解する必要があります。


そのためには、日常のコミュニケーションの中で、プライベートな話題を含め雑談をする必要があります。私たちは、ビジネスの話題だけでは人と仲良くなりにくいものです。


モノとモノは接着剤がくっつけますが、人と人は雑談がくっつけます。だからこそ、雑談は無駄なものではなく、相手を理解するために必要なものです。コロナ禍でオンライン化が進みましたが、その分、雑談が減りました。その結果、転職したり、うつ病を経験したりという方もいたようです。こうした事象も、世の中とのつながりが希薄化したことに起因しています。私たちは意図的に「濃厚化」していく必要があります。


■「テニスの法則」を使うと、どんなメリットがある?


実際に使っている人は、圧倒的にビジネスチャンスが増えます。結果的に、売り上げを大きく上げていきます。


いったいなぜでしょうか?


人は自分に興味関心をもってくれる人に興味関心を持つものです。心理学では「返報性のルール」と呼ばれています。信頼されると信頼したくなるし、好意を持たれると好意を持ちやすくなるのです。


結局のところ、ビジネスは「関係性で決まる」と思いませんか? どうせ頼むなら気心が知れたあの人に頼もうと思うのが人情だからです。


■人はみな「特別感」を感じたい


人はみな「特別感」を感じたい生き物です。ありふれた対応、一般的な対応では特別感は作れないし、好意を抱いてくれるようなファンを作ることはできません。


人は周りから大事にされたいし、尊重してもらいたいのです。だからこそ、自分のことをわかってくれている、理解してくれている、関心をもってくれている人に惹かれます。自己承認欲求が満たされるのと同時に、安心感や信頼感まで覚えます。


多くの人は、メールをただの情報伝達の手段にしていますが、非常にもったいないなと感じています。メールに、情報共有という機能だけでなく、感情共有して関係構築していく役割を持たせるのがコミュニケーションの達人になる近道だと感じています。


私がスタッフに口を酸っぱくして何度も何度も伝えていることがあります。それは、メール一通で1ミリでもお客さまと仲良くなろうということです。そのメールは心の距離が近くなるものなのかどうか? その判断軸でメールを見返してみると良いと思います。


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加藤 芳久(かとう・よしひさ)
組織変革コンサルタント
リーダー育成と組織変革を得意とする経営コンサルタント。「理念型育成」を日本で初めて開発・体系化した人財育成の専門家。情報経営イノベーション専門職大学客員教授。大学卒業後、大手旅行会社、コンサルティング会社を経て、2016年に株式会社加藤経営を設立。資金も人脈も無いゼロからの起業だったが口コミで評判が広がり、上場企業、官公庁からのオファーが殺到する。これまで200社以上に対して人財育成の体系化・組織風土変革を支援してきた。顧客企業は、日本ハム、三井ホームなどの大手企業を中心に、飲食店から化学メーカーまで多岐にわたる。最高で半日200万円という高額フィーながらコンサル依頼が絶えない。日本最大級の洋上研修への参画をはじめ、台湾、シンガポールなど海外にも活躍の場を広げている。2013年からは私塾にて東洋思想と帝王学を学び、人生の本質は何かを探究してきた。「100年後に生まれてくる子供達に誇れる国を遺す」という理念のもと、社員同士の絆を強め離職率を劇的に下げながら業績を伸ばすコンサルティングに定評がある。2022年には、株式会社ファイブベイ(FiveVai)設立、取締役副社長兼CHO(チーフハピネスオフィサー)に就任。著書に『お客さまの9割をリピーターにする33のしくみ』(KADOKAWA)がある。千葉県千葉市生まれ。
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(組織変革コンサルタント 加藤 芳久)

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