相場展望5月29日号 米国株: 米国長期金利が上昇し、危険水準⇒米国株を直撃リスク高まる 日本株: 日経平均は38,000円が壁、ボックス圏相場の上限

2025年5月29日(木)15時5分 財経新聞

■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
 1)5/26、祝日「戦没者追悼記念日(メモリアルデー)」のため休場
 2)5/27、NYダウ+740ドル高、42,343ドル
 3)5/28、NYダウ▲244ドル安、42,098ドル

【前回は】相場展望5月26日号 米国株: 世界的地位と信頼性の低下⇒基軸通貨・ドルの信認が揺れる 日本株: 物価上昇率が4月に前年同月比+3.5%に急伸、米国を上回る

●2.米国株:米国長期金利が上昇(債券価格は下落)、危険水準⇒米国株を直撃リスク高まる
 1)米国長期金利が上昇(債券価格は下落)し、危険水準⇒米国株を直撃リスク高まる
  ・長期金利の推移(10年物国債利回り)
    5/21  4.599%
    5/27  4.444
    5/28  4.477

  ・長期金利の低下により、株式の相対的な割高感が薄れ、米国株は買われ上昇。
    ・米国信頼感指数の改善もあって、長期金利が低下。

  ・ただ、この金利低下は一時的なもの。

  ・もともと、長期金利は高水準圏にあり、わずかな低下に、株式相場が反応したに過ぎない。

  ・米国財務省が超長期国債の入札を行ったが、不調であった。これは、財務省が提示した金利が低すぎる(国債価格が高すぎる)ことを意味している。

  ・加えて、トランプ米国大統領による
    ・高関税賦課による同盟国の切り離し
    ・米国を牽引してきた高頭脳者の流出促進(ハーバード大学いじめなど)
    ・移民・不法移民の放逐
    ・親プーチン習近平路線へシフト
   等などにより、米国の「覇権強国」から「世界の大国のなかの一国」への道を進んでいる。

  ・世界の基軸通貨「ドル」を維持できてきた基盤に亀裂を入れたのがトランプ氏である。不幸なことは、トランプ氏が自分の政策が「基軸通貨ドル」の放棄に気が付いていないことだ。

  ・これでは、財政赤字を埋めてきた米国債の入札の不調が深化することになる。米国債入札の不調のなかで資金調達するとなれば、「高金利」しかない。

  ・おそらく米国長期金利が4.75%を軽く超えていくと想定する。そうなった場合、株式は相対的に割高感が目立ち、米国株相場は売られることになる。

 2)対EUの50%関税発動時期の6/1⇒7/9への延期を好感し、5/27大幅反発
  ・EUに対する50%関税発動時期を約1ヵ月延期しただけ。
  ・50%関税は、トランプ氏の「はったり」に過ぎない。相手を自分都合のペースに巻き込む手段にほかならない。
  ・このような情報で、米国株の大幅高は「危うい」上昇のようにみえる。

 3)FRB高官は、(1)インフレ率の上昇(2)失業率の上昇への転機を予想
  ・トランプ関税によるインフレ上昇に備えて、FRBは金利を据え置いている。失業率は歴史的に低い水準にある。
    ・しかし、労働指標からは求人件数が減少傾向にあり、失業率の上昇懸念が増している。

 4)米国株は5/27、EU向け50%関税発動延期で一息
  ・NYダウの推移
    3/25  42,587ドル
    4/08  37,645  : ▲4,942ドル安
    5/19  42,792  : +5,147ドル高
    5/23  41,603  : ▲1,189ドル安
    5/27  42,343  : +740ドル高
    5/28  42,098  : ▲245ドル安

  ・米国株市場は5/27、トランプ高関税の発動延期で一息。
    ・NYダウは5/27、+740ドル高と大幅反発。
    ・5/27の米国主要株価指数の状況(前営業日比)
       NYダウ      +1.78%高
       ナスダック総合指数 +2.46
       ナスダック100指数 +2.39
       S&P500種指数   +2.05
       半導体指数(SOX) +3.38

  ・ただ、米国債の超長期債入札不調で、金利上昇が見込まれるため、慎重さが必要と思われる。

●3.トランプ氏の関税を差し止め、米国国際貿易裁判所は「大統領権限を逸脱」と判決(ロイター)
 1)米国憲法、は議会に他国との通商を規制する独占的な権限を与えており、米国経済を守る大統領の緊急権限によってこれが覆されることはない、とした。

●4.トランプ氏の減税法案は「財政赤字削減を阻害」と批判=マスク氏(ロイター)
 1)減税法案は下院で5/22に可決され、現在、上院で審議が行われている。
 2)議会予算局によると、法案が成立した場合、今後10年間で連邦債務が3兆8,000億ドル程度増える見込み。
 3)マスク氏は、「正直言って、この巨額の支出法案を見てがっかりした」と、財政赤字削減ではなく赤字増大につながる可能性に懸念を示した。

●5.カシュカリ総裁、米国金利据え置きを支持、関税の影響明確になるまで(ブルームバーグ)
●6.トランプ氏、ハーバード大学への助成金30億ドル打ち切り検討と表明(ロイター)
 1)トランプ米国大統領は先週、同大の留学生受け入れ資格取り消しを発表した。ハーバード大学はトランプ政権を提訴し、ボストン連邦地裁は政権の措置を一時差し止めする判断を下した。

■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
 1)5/26、上海総合▲1安、3,346
 2)5/27、上海総合▲6安、3,340
 3)5/28、上海総合▲0.76安、3,339

●2.先行き不透明な中国経済、賃金未払い問題が深刻化、放火・暴動が発生(日テレ)
●3.中国経済に根強い将来不安、「利下げでも消費せず」止まらぬ貯蓄志向(Newsweek)
 1)家計の預金残高総額(今年3月末時点)は160億元(22.3兆ドル)を突破し、前年比で+10.3%増。

●4.BYD株が続落、値引き発表で中国EV市場の新たな値引き合戦を懸念(ブルームバーグ)
 1)22車種について6月末まで最大34%値下げすると発表。

●5.「中国製造2025」の後継計画、習指導部が検討も製造業重視は変わらず(ブルームバーグ)
 1)消費拡大が優先課題も具体策が乏しく、数値目標も見送りの方向。

■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
 1)5/26、日経平均+371円高、37,531円
 2)5/27、日経平均+192円高、37,724円
 3)5/28、日経平均▲1円安、37,722円

●2.日本株:日経平均は38,000円台に乗せると、売られる展開が続く
 1)日本株は米国株のアップダウンで揺れる
  ・米国は(1)財政赤字(2)連邦政府の債務(3)トランプ関税で揺さぶられている。
  ・基本的には、米国の高金利は避けられない。
   したがって、バフェット氏のように、現金保有比率を上げるスタンスを一考しするのも賢明。

 2)日経平均は38,000円台に乗せると、売られる展開が続く
  ・日経平均の推移
     3/26  38,027円
     4/07  31,136  :▲6,891円安
     5/13  38,183  :+7,047円高
     5/22  36,985  :▲1,198円安
     5/27  37,724  :+739円高
     5/28  37,722  :▲1円安、一時38,000円台乗せ

  ・5/28日経平均は朝方、+400円超の上昇で38,000円台に乗せ、5/13の38,183円近辺まで上昇。その後、海外短期筋から売りが出され、結局は前日比▲1円安となった。
  ・トランプ関税ショック前の高値である3/26の38,027円が天井となっている点が変わっていないことに注目したい。
  ・今後も、日経平均38,000円を巡る攻防に着目したい。

 3)3月実質賃金▲1.5%と3カ月連続の大幅なマイナス
  ・食料品などの価格高騰が目立つなか、賃金の上昇が追い付いていない。
  ・政府や労働組合は春の賃上げにまい進してきた。ただ、対象は大手企業の賃上げ状況の把握に終始しており、庶民の家計には眼が届いていない。日本の全企業数の99.7%が中小零細企業である。石破首相はわずか0.03%の企業の賃上げにしゃかりきとなっているに過ぎない。
  ・政権与党の公明党でさえ、庶民の家計改善に踏み込んだ提案をしていない。
  ・インフレで消費税による増収で、安穏としているようだ。名目賃金ではなく、インフレを織り込んだ実質賃金の上昇に政策を絞っていただきたい。

●3.NTTドコモ、インターネット銀行大手の住信SBIネット銀行を買収へ(共同通信)
●4.日銀の保有国債の評価損▲28兆円余で過去最大、金利上昇が背景(NHK)
●5.小泉進次郎・農水相、「忖度しない」農政転換に着手、減反廃止でJAは反発か(産経新聞)
 1)コメ価格高騰が続くなか、備蓄米放出の方式を競争入札から随意契約に変えてコメ価格上昇を抑制。事実上の生産調整(減反)を排し、持続可能な米作の実現を目指す構え。コメ増産を推進し、作りすぎて余った場合は輸出したり、価格が下落した際は農家に補償したりする方策を検討している。
 2)ただ、農業協同組合(JA)などの反発も予想される。

●6.随意契約による備蓄米放出、国民の不安払拭を期待=石破首相(ロイター)
 1)小泉農相、備蓄米の随意契約での売渡しの詳細を発表。(NHK)
  ・大手の小売業者を対象に、これまでの平均落札価格の半額程度で売り渡す。これにより、店頭での販売価格は税抜きで2,000円程度に抑える見通し。

●7.ツルハ、株主総会でウエルシアとの経営統合案を可決(HTB北海道)
 1)日本最大のドラッグストア連合が誕生へ。

●8.第一生命・社長、超長期金利の水準は行き過ぎ、年末までに鎮静化へ(ブルームバーグ)
 1)新発40年債は4月以降に急上昇し、5/22に3.675%と過去最高を更新した。
 2)第一生命保険が抱える3月末時点の国内債の含み損は▲2兆400億円と、1年前と比べて▲1兆5,000億円超膨らんだ。債券の時価が帳簿価格よりも▲50%以上下落した場合には減損処理の可能性が生じる。第一生命保険の運用資産は約33兆8,000億円。そのうち日本国債・地方債は16兆6,000億円で、その約半分が20年超の残存期間。

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
 ・2802 味の素     業績好調
 ・4568 第一三共    業績堅調
 ・6367 ダイキン    業績堅調

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