インド、「iPhone」とって世界5番目に大きな市場に
2023年7月25日(火)16時0分 JBpress
インドが米アップルのスマートフォン「iPhone」にとって世界で5番目に大きな市場になったことが分かった。
米・中・日・英に続く市場
香港の調査会社カウンターポイントリサーチのデータを基に報じた米CNBCの記事によると、2023年4〜6月期におけるインドでのiPhoneの販売台数は、全iPhone販売台数の約4%だった。また、インドスマホ市場におけるiPhoneのシェアは前年同期の3.4%から5.1%になった。
これらの数値は依然として小さいものの、23年4〜6月期におけるインドでのiPhone販売台数は、前年同期比50%増と急成長した。iPhoneにとってインドは、ドイツとフランスを上回り、米国、中国、日本、英国に続く市場になった。カウンターポイントによれば、インドがiPhone販売のトップ5市場に入ったのは、これが初めてだという。
Apple初のインド直営店
インドでの急速な成長は、アップルが小売りと製造の両面において世界第5位の経済大国で存在感を高めているからだとCNBCは報じている。
アップルのティム・クックCEO(最高経営責任者)は先の決算説明会で、23年1〜3月期におけるインド事業が四半期ベースで過去最高を更新し、売上高は前年同期比2桁増を記録したと報告した。
インドではアップル製品に対する需要が急増している。こうした状況を背景に、同社は国際事業の経営体制を刷新し、インドに一段と比重を置いている。23年4月18日には同社初のインド直営店「Apple BKC」を商都ムンバイでオープンし、その2日後に首都ニューデリーで2号店「Apple Saket」をオープンした。
インドのスマホ市場は、中国・小米(シャオミ)などの中国メーカーやアップルの強力なライバルである韓国サムスン電子などが販売する低価格Android端末が主流だ。だが最近は中間層の拡大にともない、高価格帯端末を購入する消費者が増えている。
カウンターポイントによると、インドでは価格が400米ドル(約5万6000円)以上の端末の、全出荷台数に占める比率が19年時点で4%だった。だが、現在は10%を占めている。この価格帯の売上高は、同国のスマホ全売上高の35%を占めている。
インド製造にも注力
一方で、アップルはサプライチェーン(供給網)の中国依存を減らし、生産をインドなどの新興国に移そうとしている。
米ウォール・ストリート・ジャーナルは先ごろ、アップルの主要サプライヤーである、電子機器受託製造サービス(EMS)大手の台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業が、中国への依存を低減させると報じた。EMS世界最大手である鴻海は、アップルの最大サプライヤーの1社である。アップルの主力製品であるiPhoneは、世界出荷台数の70%を鴻海が組み立てている。
鴻海の劉揚偉・董事長(会長に相当)によると、現在、同社の売上高の約70%は、中国工場で生産された製品によるものだ。しかし、今後はこの比率を減らし、他国での生産比率を高めていく。
米ブルームバーグ通信などによると、鴻海は現在、インド南部タミルナドゥ州のチェンナイ近郊にある工場で、iPhoneを年間600万台組み立てている。だが、24年までには生産台数を2000万台に引き上げ、従業員数を3倍の10万人に増やす計画だ。加えて、南部カルナタカ州で新たな生産施設を建設する計画で、iPhoneなどを製造する予定だと関係者は話している。
Appleインド売上高、今後10年で年400億ドルに
こうした動きに対し、アナリストらはアップルのインド事業を楽観視していると、CNBCの別の記事は報じている。
それによると、米金融大手モルガン・スタンレーのアナリストらは、インドが今後5年間で、アップルの収益成長の15%を占めると予測している。現在アップルはインド事業から年間60億米ドル(約8400億円)の収益を得ている。しかしこの金額は10年間で400億米ドル(約5兆5800億円)に達するという。この規模の金額は、アップルが全く新しい製品カテゴリーを1つ立ち上げることと同じだという。
筆者:小久保 重信