ロゴも店内もパクリだらけ…ロシアに誕生した“偽スタバ”に潜入! ナゾの新メニュー「野いちごの粥」が激甘すぎた

9月2日(金)18時0分 文春オンライン

 今年3月、ロシアのウクライナ侵攻を受け、米・スターバックスが同国に展開していた全130店舗を閉鎖。5月には完全撤退を発表し、2007年に上陸して以来、15年の歴史に幕を下ろしたかに思われた。ところが——。


 8月18日、「スターズ・コーヒー(Stars Coffee)」なる“ロシア版スタバ”が突如モスクワ市内に出現したのである。



“ロシア版スタバ”ノーヴィ・アルバートの店舗には行列ができた


「レストラン経営を手掛ける実業家のアントン・ピンスキー氏と“ティマティ”の名で知られるロシア人ラッパーのティムール・ユヌソフ氏が、国内のスターバックスを買収したのです。7月中旬から着手し、8月9日に新名称の登録を申請。本格的にオープンしたのは、8月19日でした。今後は、9月中に200店舗オープンさせる予定だそうです」(ロシア大手通信社記者)


 現地から届けられた写真にも店前に行列が出来ているのが分かる。店内も若い世代から大人まで大変な盛況ぶりだ。


ロシア人が「スタバ好き」である2つの理由


 そもそもロシアで人気を博していたという元祖・スターバックス。大きく2つの理由があったという。モスクワのノーヴィ・アルバートに完成した“ロシア版スタバ”1号店も訪れた近隣に住むドミトリー氏(24)が振り返る。


「まず、店内で仕事ができるという点です。ロシアには1990年代からコーヒーを飲むための喫茶店はありましたが、ラジオが大音量で流れているなど何か作業をする場所としては向いていませんでした。


 もう一つは、カップに名前を書き込んでくれるサービスが大変喜ばれたことです。ソ連時代から長らくロシアでは、“フレンドリー”や“サービス精神”という概念とは無縁の店が多かった。当時、笑顔で対応し、カップにメッセージを書き込んでくれるスターバックスの店員には驚いたものです。スターズ・コーヒーになった今でも、客の名前を書くサービスは続ける方針だそうです」


 では、大人気となったロシア版スタバ「スターズ・コーヒー」で一体どんなメニューが提供されているのだろうか? ドミトリー氏が店内の様子や商品の印象を教えてくれた。


「カウンターの位置などはそのままで店内のデザインは以前と同じです。メニューもさほど変わりませんが、エスプレッソやカプチーノといった定番に加え、『抹茶ストロベリー』や『スパイシーシトラスアメリカ—ノ』といった新商品が登場していました。値段は平均的な475ml入りで、310ルーブル(約703円)から385ルーブル(約873円)で販売されています。一般的な相場より少し高い印象ですね。ガラスのウィンドウ内には、クロワッサンサンドやベリーのタルトが並んでいる。コーヒーは上質だったのですが、新メニュー『野イチゴの粥』が激甘で驚きました。来店した若い子たちは皆満足していると言っており、店内で写真を撮って楽しんでいましたよ。


 今は一つのレジに10人〜15人の列ができています。ですがロシア人はいつも新しい店ができるとこぞって訪れるものの1週間もすれば落ち着くので、いずれ行列に並ばなくても食べられるようになると思います」


店内インテリアもロゴも“ほぼそのまま”


 開店早々、モスクワっ子から上々の評価を得ている「スターズ・コーヒー」。だが気になるのは、店名とロゴが“本家”と酷似していることだ。


「ロゴに描かれた女性はスターバックスの『人魚・セイレーン』に似ていますが、頭にロシアの伝統的な髪飾り『ココシニク』を付けているんです。当初は店名を『スターボックス』か『スターズ』で検討していたようですが……」(前出・通信社記者)


 だが、こうした露骨な“パクリ”は大きな問題を孕んでいると専門家はみている。実際、ロシア国内ではスターバックスが同チェーンを訴えるのではないかとの噂も飛び交う。知的財産権に詳しい齋藤理央弁護士が解説する。


「商標法の目的は、商標を保護することで商標を使用する者の業務上の信用維持を図ることです。類似性は外観、称呼、観念の三点で判断されますが、今回の事例ではロゴがあまりにも似ていることから、外観の観点で商標権の侵害が成立し得る。国によって商標法の内容は異なりますが、少なくとも日本でやれば商標権侵害が認められるでしょう」


丸亀製麺も…ロシア国内で横行する“無断営業継続”


 ロシアでは、スターバックス以外にもウクライナ侵攻を機に完全撤退した企業の“無断営業継続”が後を絶たない。撤退した店舗をそのまま居抜き、本家のロゴなどを生かしつつ、店名を変える形で営業を続けるのだ。日本のうどん専門飲食店『丸亀製麺』もその被害に遭っている。同社は3月末にロシア国内から撤退しているが、フランチャイズ契約を結んでいた店舗が店名を変えて営業を再開。運営元であるトリドールホールディングスは営業停止を求めているが、現在も無断営業が続いているという。


「週刊文春」では、大手ファーストフードチェーン・マクドナルドが撤退した店舗内をそのままに開業したハンバーガーショップ「Вкусно – и точка(フクースナ・イ・トーチカ)」をレポートした( https://bunshun.jp/articles/-/55330 )。ロゴや店名などは変更しているが、メニューや店内の機械、食材の流通経路、一部スタッフもマクドナルドだった時から引き継いでいる、まさに“ロシア版マクドナルド”だ。


 だが、6月の開業当初から行列が絶えなかったこの店も、8月現在は客足が遠のき始めているという。現地の報道によると、品質の低下なども理由に上げられるそうだが、「Вкусно – и точка」も訪れたドミトリー氏はこう話す。


「開業当初は確かに人気でしたが、本家マクドナルドのリピーターからは『店名が違うなら、もう別の店だ』と敬遠されてしまった。今回のロシア版スターバックスはその反省を元に、本家になるべく近づける形で開業したのではないでしょうか」


 スターバックスの名は、小説『白鯨』に登場する航海士・スターバックに由来する。一方、新チェーンの名称は、「できるだけ以前の店名と似た名前で営業する」という新オーナーの意思で決められたのだという。「配色、文字のフォントは異なっている」と主張しているが、果たしてコウカイしない結末となるか。


(「週刊文春」編集部/週刊文春)

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