最終回へ拭えない嫌な予感…『日本一の最低男』“想像を心地よく超えていく”第10話
2025年3月13日(木)6時0分 マイナビニュース
香取慎吾主演のドラマ『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』(フジテレビ系、毎週木曜22:00〜 ※FODで見逃し配信)の第10話が、きょう13日に放送される。
今作は、ある不祥事で退社に追い込まれてしまった元報道番組のプロデューサー・一平(香取)が、再起を図るため政治家を目指し、その戦略として亡くなった妹の夫と子どもたちと同居し、ニセモノの家族=“ホームドラマ”を演じることを決意する…という物語。
“ホームドラマ”ではなく本物以上の絆を手に入れた一平は、いよいよ“家族”のため、そして自分たちが暮らす街のため、“政治”へ本気になった。しかし、そこには様々な困難が待ち受けていた——。
○作品の評価が回を追うごとに高まってきた理由
まずは、今回のおおまかなあらすじを紹介したい。
一平の“家族”が本物以上になりかけた矢先、大江戸区の再開発問題に正助(志尊淳)が巻き込まれ負傷してしまう。それが大きなきっかけとなり、一平は準備を進めていた区議選ではなく大江戸区長選挙へ出馬することを決意し、区長・長谷川(堺正章)と対立することとなる。すると、長谷川サイドは先んじて一平を蹴落とそうと探りを入れ、一平が退社に追い込まれた原因でもある、パワハラを受けたとされる野上(ヘイテツ)を見つけ出す。現在の彼は、多くの登録者を抱えた動画配信者になっていた——。
今作が評価を大きく高めてきた要因は、視聴者の“想像を心地よく超えてきた”からだろう。
香取慎吾がこれまで多く演じてきた疑似家族モノに政治家を目指す主人公というギミックを加えた、ただの焼き直しなのかと思いきや、見事にそれを現代版へアップデートしてみせた!と思わせるのだが、実はもっと深かった。“家族”を描くことは現代社会を描くことでもあり、それこそが主人公の根っこにあった「世の中を良くしたい」という思い——政治家への資質をより明確に浮かび上がらせるための設定ではない理由だったのだ。
つまり今作は、疑似家族という設定で遊ぶだけの話ではなく、家族を描くために社会を描き、社会を描くためにも家族を描かなければならなかった。これら全ての要素がもれなく必要であり、それが意外な場所に意外な形で美しくパズルが埋まっていく——そんな“想像を心地よく超えてきた”体験ができたからこそ、今作の評価は回を追うごとに高まっていったのではないだろうか。
○「選挙編」で作風が全く異なるテイストに…!?
だからこそ、ここまで見続けてきた視聴者にとっては、この先どんな物語が展開されたとしても、想像を心地よく裏切ってくれるであろう期待が膨らんでいることは間違いない。しかし、しかしである。先に紹介した第10話のあらすじから想像してしまうのは、どうしても嫌な予感ではないだろうか。
ここまで大切に積み上げてきた“家族”の物語が、正助の負傷によって不意に崩されてしまったことは、それが「選挙編」へなだれ込むトリガーだと分かっていても腑に落ちない部分がある。そして「家族編」から急激に「選挙編」へ移行したことによって、これまで楽しんできた作風とは全く異なるテイストになってしまうのではないかと心配にもなってくる。
それに輪をかけて、最終回へ向けて用意された物語の片りんが、“敵陣の悪意”に“かつてのパワハラ”、“動画配信者”とは、今作にどれだけの信頼を置いていたとしても、それらの要素が全て嫌な予感にさせてしまう。
だが最終回前の第10話、そうした嫌な予感や視聴者の想像は、今回も当然、“心地よく超えていく”。そしてラストがどうなってしまうのか?いい意味でのフラストレーションも残しつつ最終回へつながれていく。
これまで楽しんできた視聴者はもちろんだが、ここからの2回のみを視聴するという人にとっても、間違いなく楽しめるエピソードに仕上がっている。
「テレビ視聴しつ」室長・大石庸平 おおいしようへい テレビの“視聴質”を独自に調査している「テレビ視聴しつ」(株式会社eight)の室長。雑誌やウェブなどにコラムを展開している。特にテレビドラマの脚本家や監督、音楽など、制作スタッフに着目したレポートを執筆しており、独自のマニアックな視点で、スタッフへのインタビューも行っている。 この著者の記事一覧はこちら