塩野瑛久、18歳でデビューも代表作に恵まれず…昨年の大河『光る君へ』が出世作に。「結婚するなら一緒に不幸になってもいい人と。幸せだけを望むのは得策じゃない」
2025年3月26日(水)12時0分 婦人公論.jp
「確かにあっという間だったなと思います。でもその一方で、ここまでの12年間は、なかなかに濃密だったと振り返る自分もいるのです」(撮影:小林ばく)
2024年の大河ドラマ『光る君へ』では、雅びやかで凜とした佇まいの一条天皇役を演じて話題に。30歳を迎えた今年、役者としての信念や、結婚観について聞いてみると——(構成:丸山あかね 撮影:小林ばく)
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順風満帆とはいかなかった20代
今日撮影してくださったカメラマンさんとは、デビュー作であるスーパー戦隊シリーズ『獣電戦隊キョウリュウジャー』に出演した18歳の時からのおつきあいです。この1月に30歳になりましてと伝えたら、「嘘だろ」ってビックリされてしまいました。
確かにあっという間だったなと思います。でもその一方で、ここまでの12年間は、なかなかに濃密だったと振り返る自分もいるのです。
ありがたいことに仕事に恵まれ、ドラマや映画や舞台でさまざまな経験を積むことができました。でも順風満帆だったとはいえません。同じ頃にデビューした人たちが評価を得て、どんどん輝きを増していく。
僕の後にデビューした人たちも次々と羽ばたいていくと感じ、心がすさんでしまうこともありました。僕にはコレといった代表作がなく、「自分は役者に向いてないんじゃないか?」と思えてきたりして。
その頃は、「とはいえ、ほかにできることもないし」と後ろ向きな感情を抱えつつ、いずれにしても頑張るしかないと、目の前にある仕事に全力投球。どうせやるなら真剣に勝負しないと悔いが残る。それでも駄目なら仕方がないと、自分の心に折り合いをつけているつもりでした。
でも本当は演じることが好きで、やり続けていれば、きっといい風が吹いてくると信じていたからこそ諦めなかったというか、諦められなかったのだと、今ならわかるのです。
運命って不思議だなと思います。中学を卒業し、家業のクレープ店を手伝っていた頃は、役者になるなんて考えたこともありませんでした。
でもある日、お客さんに「ジュノン・スーパーボーイ・コンテストに応募してみたら?」と言われて。最初は落ちたら恥ずかしいから嫌だと断ったんですけど、「誰にも言わなきゃいいじゃない」と母にも説得され、それもそうだなと。そこへ姉が、一眼レフカメラで応募写真を撮ってあげるとノリノリで参戦してきて、気づいたら応募していました。
一次審査、二次審査と残り、このまま勝ち進んだら芸能活動をすることになるのかも、と現実味が湧いてきて、いつものテレビドラマが違って見えたのを覚えています。今にして思えば、役者になりたいという夢が芽生えていたのです。
なので、審査員特別賞をいただいて芸能界入りが決まった時はガッツポーズ。すべては家族のおかげだと感謝しているし、家族の応援が僕の原動力になっているのを感じます。
「受かったと聞いた時は耳を疑いました。その後、天皇の役だと認識して、またビックリ。えーっ! そんな高貴な役、僕にできますか?って。(笑)」
いつも心がけているのは「受けの芝居」
昨年は、NHK大河ドラマ『光る君へ』をはじめ、映画やドラマへの出演が続きました。作品ごとに刺激的な方々との出会いがあり、必ず学びがあるという意味では、これまでに出合った仕事のすべてが転機だったといえるのですが、なかでも大河ドラマで一条天皇役をやらせていただいたことが大きかった。
国民的ドラマの影響力はとにかくすごいですね。両親や祖父母世代の方から「頑張って」と応援していただく機会が飛躍的に増えました。つまり、『光る君へ』は僕の出世作となったのですが……。
実のところ、オーディションに臨んだ時点では、何も理解していませんでした。マネージャーさんは役柄について伝えてくれていたようなのですが、僕は普段からボーッとしているうえに、端から期待していなかったというのが正直なところ。
それだけに受かったと聞いた時は耳を疑いました。その後、天皇の役だと認識して、またビックリ。えーっ! そんな高貴な役、僕にできますか?って。(笑)
でも、プロデューサーさんが僕を選んだ理由について、相手役のセリフをよく聞いて、相手の出方によって自分の芝居の仕方やセリフの言い回しを変える「受けの芝居」ができる人だからと言ってくださったことが嬉しかった。
いつの頃からか、僕は相手が輝くように演じようと心がけていて、そのためには相手の芝居をしっかりと受け止めることが大事だと思っていたので、自分の表現方法は間違っていなかったんだと、大きな励みになりました。
もちろんプレッシャーがあったことは否めませんが、だからこその達成感を得て、また一つ成長できたかなと思っています。
「ずっと一条天皇の衣装のままでいてほしい」と言ってくださる方もいて、最高の賛辞だとありがたく受け止めているのですが、現実的には、そういうわけにもいかなくて。(笑)
ブレずに持ち続けている結婚観とは?
今年はスーツ姿で出演中のドラマ『五十嵐夫妻は偽装他人』で幕を開けました。新川優愛さんと夫婦役を演じています。ふたりは別居中なのですが、新川さん演じるの転職先に、僕が演じる夫の直人もたまたま転職して一緒に働くことに。赤の他人同士を装うことにしたところから恋愛騒動に巻き込まれていくという物語です。
お互いに相手の動向が気になりながらも素直になれない。離婚するのか元サヤに収まるのかと、なかなかにじれったいのですが、この「もだもだ感」に大事なことが詰まっているのだという気持ちで演じています。
ラブコメディでありながら、結婚って何だろう? と考えずにはいられない、深いテーマの作品です。
僕はといえば、そもそも結婚願望がありません。ただ、昔から公言している結婚観はブレていなくて、それは「一緒に不幸になってもいい人と結婚する」というもの。結婚って幸せ絶頂のところでするわけですけど、その後が長いじゃないですか。
いろいろな試練があって壁が立ちはだかった時に、結婚当初とのギャップが激しいとつらいので、幸せだけを望むのは得策じゃないような気がして。って、わかったようなことを言ってますが、『婦人公論』さん的に大丈夫でしょうか?(笑)
もともと一人でいるのが好きなんです。最近は家電にハマっていて、「サウンドバー」というスピーカーを買ったばかり。テレビドラマや映画を観賞する際に、役者のセリフが聞き取りやすい環境を整えました。
やっぱり今は演じることで頭がいっぱいです。教師役をやってみたいとか、シリアスな恋愛ものもいいなとか抱負はいろいろありますが、ご縁のある仕事に感謝しながら、どんな役にも果敢に挑戦していこうと決めています。
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