岡本圭人、岡本健一と2度目の親子共演への思い 「成長した姿を見せられたら」【インタビュー】

2024年3月27日(水)8時0分 エンタメOVO

岡本圭人 (C)エンタメOVO

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 若村麻由美と岡本圭人岡本健一が出演する舞台「La Mère 母」と「Le Fils 息子」が2つの劇場で同時上演される。同作は、劇作家フロリアン・ゼレールによる家族三部作のうちの2作で、若村が主演する「La Mère 母」は日本初上演、「Le Fils 息子」は2021年に続く、待望の再演だ。いずれの作品も若村は母・アンヌ、圭人は息子・ニコラ、健一は父・ピエールを演じる。21年の「Le Fils 息子」で父親の健一と親子共演を果たし、初舞台を踏んだ圭人。今回の2作同時上演への意気込みや再びの親子共演への思いを聞いた。



−岡本さんにとっては初舞台となった「Le Fils 息子」の初演時を振り返って、今、どんなことを感じていますか。

 (初演の)初日は特に自分の中で忘れられない時間だったなと思います。ストレートプレーで舞台に立つというのが夢でもあったので、それがかなった瞬間でもありました。憧れていた父親との共演でもありましたし、自分にとっては俳優としての1つ目のお仕事でもあったので、この作品は自分にはすごく特別な作品です。ただ、今考えると、自分の役を演じることに精いっぱいだったと思います。悩みを抱える少年という役柄だったので、本番中はそれでも良かったのかもしれないですが、稽古中は本当に悩みを抱えている男の子になってしまって、スタッフの皆さんやキャストの皆さんにいろいろとご迷惑をかけたなという反省もあります。そこまで入り込める、まるで自分の物語のように思えるというのがフロリアン・ゼレールの魅力なのかもしれませんが、とにかくこの作品を届けたい、いろいろな方に見ていただきたいという一心で臨んだ初演でした。

−初演時は、お父さんの健一さんからはどんな言葉がありましたか。

 幕が開くまで相当不安だったようで、「お前、大丈夫? できるの?」と(笑)。ですが、大千穐楽が終わった後には、自然とハイタッチやハグができたので、お互いに充実感があったのだと思います。見に来てくださったお客さまや友人など、この舞台がすごく心に残ったと言ってくださる方が多いので、今回、こうして再演という形でまた多くの方に見ていただけるのはすごく楽しみです。

−健一さんは、再演が発表された際のオフィシャルコメントで「あのようなつらい思いは、もう『体験したくない』というのが正直な気持ちでした」と初演を振り返っていました。圭人さんはそうした思いはないですか。

 もちろんすごくつらいお話ですし、悲劇的でもあるのですが、こうした舞台を届けることで同じような悲劇が起こらないようにという思いも込められている作品だと僕は思います。それに、きっとこの作品以外で父親と共演する機会はなかなかないと思います。もしかしたらこれが最後かもしれない。なので、僕自身は再演を望んでいました。この作品を経験したことで、自分自身と役を切り離すことが大事だということを学びましたし、この作品で初舞台を踏んだ後にもたくさんの経験をさせていただいたので、成長した姿を見せられたらいいなと思っています。

−健一さんと親子という役柄を演じてどんなことを感じましたか。

 実は、「Le Fils 息子」の初演のときに、壁にぶつかったことがあったんですよ。僕はニコラを演じていて、父親はピエールを演じているけれども、普段の自分と父親は役とはまた別の人物。そうした中で役を演じていくうちに、どっちが本当の父親か分からなくなってしまう瞬間がありました。父親なのに父親じゃないと、頭がこんがらがってしまって。それで、演出のラディスラス・ショラーに相談したところ、「演出をする立場からはあなたたちを本当の親子としては見ていない。それぞれを一人の役者として見ている。だから、圭人も父親として見るのではなく、役者としてピエールを見るべきだ。(劇中にいるのは)ニコラであって圭人ではない。ピエールは健一じゃないんだから」と言われ、スッキリしました。自分は自分、ニコラはニコラと切り離すことができたんです。その役を生きることが自分の仕事なのだからそれに集中しようと。それが(稽古が始まって)最初の1、2週目くらいです。その時までは、本当の親子が親子を演じる難しさは感じていました。



−その大きな壁を乗り越えてからは、スムーズに?

 スムーズだったわけではないですよ(苦笑)。自分にはまだできないところも多かったですから。一番、印象に残っているのは、演出家のショラーから「ニコラのお腹の中にある黒いダークホール、闇を感じないとこの役を演じることができない」と言われたことです。「それがないとこの舞台は絶対に失敗する。ただの家族の話になってしまう。そうした闇を抱えて、それでも一生懸命生きている。だから、そういう苦しさや黒い闇を見つけてほしい」と言われて、そこが苦労したところでした。「なぜこうなってしまったんだろう。なぜニコラはこう思うんだろう。なぜこういうせりふを言うんだろう」と、自分の芝居一つ一つを振り返って作り上げていきました。

−なるほど。では、そうした初演を経て、岡本さん自身の家族に対する思いに変化はありましたか。

 父親とこれほど長い期間一緒にいたのは子どもの頃以来だと思うので、親子の関係性は縮まるかもしれないと思っていました。家族への思いという意味では、「La Mère 母」の台本を読んだときの方が変化はあったかもしれません。これまで母がどう思っていたのかをあまり考えてこなかったことに気付き、母と会う時間を大切にしよう。もっと会いに行こうと思うようになりました。

−今回は、「La Mère 母」と「Le Fils 息子」の2作同時上演です。最初にこの企画を聞いて、どんな感想を持ちましたか。

 最近は、そうした企画が多くなった印象があります。父親も昨年末にシェークスピア作品の2作同時上演に出演していました。今回の作品は両作品とも役名が一緒ですが、別の家族の物語を描いています。ただ、せりふの中ではリンクする部分もある。そうした2作品を同じキャストで演じることで、きっと新しい演劇体験をお届けできるのではないかなと思います。

−改めて、「La Mère 母」の台本を読んだ感想や見どころを教えてください。

 先ほども話しましたが、台本を読んで僕は自分の母を思い出しました。もしかしたら、自分の母親もこんなふうに思っていたのかもしれないなと。ゼレールのこの家族三部作は、どの作品も誰もが共感できる物語だと思います。母親役の若村さんとは初舞台から毎年、共演させていただいています。僕のことを自分の子どものように思って大切にしてくださっているので、その自分たちのつながりもこの作品には出るのではないかなと思います。実は、昨年の夏頃から、僕はこの作品の翻訳作業にも参加させていただいていて、翻訳家の方と一緒にどうしたら日本語で上演した時により伝わるようになるんだろうと、何度も読み合わせをしながら言葉を探しています。言語の壁はありますが、それをなるべく自分たちの言葉になじませようと考えています。

−先ほど、初演は自分の役を演じることに精いっぱいだったと話していましたが、今回は、どのような心持ちで稽古に臨もうと考えていますか。


 一生懸命やるというのは変わりません。ただ、初演からの2年半でたくさんの経験をさせていただいて、すばらしい俳優の皆さんと共演させていただいて、すばらしい演出家の方々と一緒に舞台を作り上げてきて、たくさんのことを学べました。きっと成長できたところも多いのではないかと思います。今またこうしてニコラと向き合って演じることで、きっと全く違う作品になるのではないかという期待があります。「La Mère 母」で演じるニコラと「Le Fils 息子」で演じるニコラも全く違う役柄ですが、同時上演だからこそ感じることもあるでしょうし、見方も変わってくると思います。演じる僕たちにとっても新しい体験になるのではないかなと楽しみです。

(取材・文・写真/嶋田真己)

 「La Mère 母」は、4月5日〜29日に都内・東京芸術劇場 シアターイースト、「Le Fils 息子」は4月9日〜30日に東京芸術劇場 シアターウエストで上演。

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