北村有起哉さんが『徹子の部屋』に登場。父親の思い出を語る「デビュー作で共演した麻生久美子さんと、朝ドラ『おむすび』で夫婦役に。父・北村和夫と同じ俳優を選んだからこその決意」
2025年4月4日(金)11時0分 婦人公論.jp
「父(故・北村和夫さん)と同じ俳優という職業を自分で選んだからには、できるだけ親のスネをかじらず、自分の力でこの道を進んで認められたい」(撮影:宅間國博)
2025年4月4日の『徹子の部屋』に、北村有起哉さんが登場。新人時代の思い出や、父・北村和夫さんとの貴重なエピソードを語ります。今回は、朝ドラヒロインの父親役という夢を『おむすび』で実現した時の思いや、デビュー作の思い出を語った、2024年12月19日の記事を再配信します。
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噺家、硬派な刑事、テロリスト……ひとくせある演技で見る人に強烈な印象を与えてきた北村有起哉さん。現在放送中の朝ドラでは心配性の父親を好演している。家に帰れば2児の父で子育てに奮闘中という、名バイプレーヤーの素顔とは(構成=大内弓子 撮影=宅間國博)
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親のスネはかじらないと心に誓った
「いつか朝ドラのヒロインの父親役を演じるんだ!」。若かりし頃、自分に暗示をかけるようにそんな目標を立てていました。
父(故・北村和夫さん)と同じ俳優という職業を自分で選んだからには、できるだけ親のスネをかじらず、自分の力でこの道を進んで認められたい。そんな決意を、誰もが知るドラマに出るというわかりやすい例を挙げて、掲げたのでした。
その野望が50歳になった今、『おむすび』でついに叶ったんです。ホッとしました。ただ、喜びはほんの一瞬。「ここで失敗はできないぞ」とすぐに気持ちが切り替わりました。いいパフォーマンスをしなければ、と気を引き締めて撮影に臨んでいます。
僕が演じている聖人(まさと)は真面目な人です。橋本環奈さん演じる娘の結(ゆい)のことも、過剰じゃないかと思うくらい心配する。また、頼まれたら断れずに頑張ってしまうんですよね。なかでも、再び神戸で暮らし始めてからの聖人にそれがよく表れています。
阪神・淡路大震災のあと故郷の福岡県・糸島に戻って実家の農業を手伝っていたものの、聖人としてはどうしても神戸に思いが残っていました。
やっぱり理容師をやりたいという気持ちがあったのはもちろん、それ以上に、お世話になった商店街の人たちのために何もできず、ずっともやもやしていたわけです。だから再びの神戸生活では、商店街のメンバーからすごく頼られる存在になっていく。
ただし、外ではしっかりしていても、家ではまったく頼りにならなくて肩身が狭いんです。家族のなかでの男性の立ち位置ってわりとそんなものですよね。僕も似ているなと思います。(笑)
このドラマでは、平成という時代を通して家族や食などいろいろなエピソードが描かれますが、震災も大きなテーマです。阪神・淡路大震災のあと日本は何度も大きな災害に見舞われ、今年も能登で大きな地震と豪雨被害がありました。
こうしてドラマで震災について描き、自分というフィルターを通して何が起きたのかを知っていただくことも、役者の大事な役目。その意味でも、この聖人という役を本当に真摯に演じなければ、とあらためて感じます。
高校の文化祭を機に役者の道へ
役者という仕事については、子どもの頃から、父が所属していた文学座の舞台を母と観に行っていたので、知ってはいました。
これは後から聞いた話ですが、舞台で親父が女性にキスをしているのを観た僕が、「やめろーっ!」と叫んだことがあったらしいんです(笑)。『オセロー』というシェイクスピアの四大悲劇の名作で、親父がオセローを演じていて、嫉妬に狂って殺してしまった妻のデズデモーナを抱き上げて接吻するシーンがあったんですね。
僕自身は、小学校2、3年生だったので覚えていないんですけど、劇団内では有名なエピソードとして語り継がれていると、大人になって聞きました。とはいえ、親父が家で仕事の話をすることもなかったので、役者を意識することなく育ったんです。
芝居を面白いと思ったのは高校の文化祭のとき。最初は仕方なくかかわっていたんですけど、「どうせなら面白いものやろうぜ」と、気づいたら自分で脚本、演出、キャスティングまで。さらに、ちょっとおいしい役で出演もして、『仁義なき戦い』のパロディみたいなものを作っていました。
そのときに、「めちゃくちゃ楽しいんだけど!」と思ったんですよね。しかも、文化祭の後にクラスの女子4人から告白されたものだから、「俺、向いているかもしれない」と勘違いしてしまった(笑)。そして、「そういえば、親父ってこういうことをやっていたんだっけ?」と、仕事として役者を意識し始めたんです。
高校卒業後はとにかく基礎を身につけようと、日本映画学校を経て、和田勉さん主宰の俳優養成所で学びました。その途中でオーディションを受けてデビューが決まったのです。それが、今村昌平監督の映画『カンゾー先生』(1998年)。
今村監督は親父と親友でしたから僕のことをご存じでしたけど、それでも選んでくださって、自分の出番がくる前から岡山のロケ現場に入って勉強するように、とのお達しがありました。
ところが、単に人手が足りなくて手伝いが欲しかったみたいで(笑)、「セミの声がうるさいから捕まえてこい」とか使い走りをさせられては怒られる。こんなにこき使われたらさすがにやってられない、と思うようになりました。
するとそれを見透かしたように監督から言われたんです。「お前、もういらないから東京に帰れ」。怖かったですよ。「帰りません」と言って、その後はひたすら働きました。
その体験があったおかげでわかったんですよね。これだけのスタッフの苦労があって役者は芝居ができるんだ。きらびやかに見えるけど、地味で職人のような世界であり、作品はみんなで作るものなんだと。
ちなみに、このデビュー作でご一緒したのが、今回の朝ドラで夫婦役として共演している麻生久美子さん。しっかり一緒に芝居をするのはあれ以来なので、あのときのスタッフさんが観たら喜んでくれているんじゃないかなと思います。
久美子ちゃんとは当時のことを話したりはしませんが、今村監督との共通の思い出があるからか、語らずとも共にいい現場が作れているなと思っています。
<後編につづく>
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