岩井俊二監督 中山美穂さんお別れの会で惜別の言葉 その場でLINE送り「ゆっくり読んでください」

2025年4月22日(火)18時0分 スポーツニッポン

 昨年12月に急逝した中山美穂さん(享年54)のお別れの会が22日、東京国際フォーラムで開かれた。1995年に中山さんが主演した映画「Love Letter」の岩井俊二監督(62)がお別れの言葉を読んだ。岩井氏は中山さんの同作にまつわる面白エピソードの数々を披露。最後は天国の恋人に手紙を書いた同作の主人公・渡辺博子と同じように天国の中山さんにLINEをした。

 「Love Letter」は、天国の恋人に向けて送った手紙をきっかけに、埋もれていた2つの恋が浮き彫りになっていく物語。世界中で愛されている恋愛映画の金字塔で、現在公開30周年を記念した4Kリマスター版の上映が行われている。中山さんは今作でブルーリボン賞、報知映画賞、ヨコハマ映画祭、高崎映画祭などで主演女優賞を受賞し、女優として地位を確立した。

 岩井氏は「あなたが天国に行ってしまってから心に大きな穴がが空いたよう。現実を受け止められずきょうを迎えています」と喪失感をあらわに。「『Love Letter』を世に送り出してから、僕らは次の作品をまた一緒に作る気満々で会う度にそんな話を毎回していましたが、なかなかその1本が準備できなかった。こ自分の不徳の致すところです」と悔やんだ。

 岩井氏が中山さんと初めて出会ったのは歌番組の収録中だという。「『Love Letter』の出演をお願いするのが目的でした。この作品は1人2役にすると決めていました。1人は天真爛漫な明るい女性、もう1人は大切な人の死で心に傷を抱えた女性。あの頃テレビで見かけたあなたの姿は、どちらかといえば天真爛漫で、心の傷を抱えた女性という姿がいまひとつイメージできず、イメージしきれないままあなたと対面することになったのです」とした上で、「けれど、対面した瞬間僕は確信しました。あなたならできると。目の前のあなたはテレビで見ていたイメージとは裏腹にとても神秘的で近寄りがたいオーラをまとっていました」と名作“誕生”した瞬間を明かした。

 続けて、「この人なら見事に2役を演じきれると確信した刹那、あなたはこう言いました。“私映画あまり好きじゃない”だ“やりたくない”。その場が凍りつきました」と中山さんの衝撃の言葉を告白。「僕はしどろもどろになって、“ぜひ2人で素敵な映画を作って、一緒に映画を好きになりましょう”とか言いました。後日お引き受けいただけると連絡があり、『Love Letter』という映画を作るようになりました」と振り返った。

 「撮影現場を振り返って当時のあなたを思い出そうとすると、不思議なくらいあなたのオフショットが思い出せません。あなたはずっと役のままでした」と明かした。「覚えているオフショットといえば、夜に小樽のカラオケに行って、一緒に『ロンリー・チャップリン』を歌ったことです。モノマネをした時に、“似てない!”と全力でポップコーンをぶつけてくれたことぐらいです。翌朝になるとすっかり役に入りきっていて、“昨日は楽しかったね”と言ってもあなたはひどくそっけなかったです」と在りし日を懐かしんだ。

 「映画に全身全霊集中していたあなたは本当に僕に対してそっけなかった。そんなあなたが唯一、僕に心配そうにやって来たことがありました」と告白。「藤井樹の役をほとんど撮り終えて、渡辺博子のパートに入るタイミングでした。あなたは言いました。“渡辺博子をどう演じたらいいか分からない”と。“そのまま僕に対してのそっけない感じのままやってくれたらいいんだよ”と言いかけた時に、あなたはこう言いました。“藤井樹の性格は良く分かる。私そっくりだから”と。監督と主演女優の認識が真逆という事態。戸惑いました」としながら、「あなたが演じた渡辺博子は僕がイメージした渡辺博子そのものでした」と中山さんの演技を称えた。

 完成した映画を見た中山さんを「あなたは泣き崩れて床に伏せたままなかなか立ち上がるませんでした」と振り返り、「よほど、映画で感動してくれたんだとあの時は思ったけど、今思えばあれは全身全霊で何かを成し遂げた人がその代償としての後遺症だったのかもしれません」と語った。「しかし、あなたはそれだけでは終わる人ではあります。次にあなたはこんなこと言い出しました。“もう映画しかやりたくない”と。極端から極端へ。あなたはそういう人でした」としのんだ。

 「『Love Letter』という映画は、ありがたいことに様々な国のファンに愛されました。最近もリバイバルブームが相次ぎ、若い子にも愛され続けています」と感謝した。

 最後に「渡辺博子は天国の彼氏の手紙を書いておきました。時代は変わりました。SNSなどです。このメッセージはLINEで送らせていただきます。天国でゆっくり読んでください」とし、スマホを取り出して中山さんにLINEを送った。「既読が付いたらちょっと怖いです。いやうれしくて…」としながら、「送りました」と結んだ。

 岩井氏は弔辞後の囲み取材で、「返事返ってくるかもしれないですよね」と声を掛けられると、「いずれ僕も近くにいけると思うんです。天国にいけるかどうか分からないですけど、また一緒に作りたいなと思いますね。それまでは、もうちょっとこっちで頑張ります」と天国での再タッグを望んだ。

スポーツニッポン

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