詩人の伊藤比呂美さんが訳した絵本は17刷に……入学や進学にあたって読みたい児童向けの1冊

2025年4月28日(月)15時30分 読売新聞

イラスト・大野八生

新たな一歩 優しく後押し

 4月になり、入学や進学などで環境が変わった人も多いだろう。慣れない環境で、新しい人や出来事と出会い、戸惑い、悩んでいる人もいるはずだ。そんな人たちのために、心の処方箋となるような本を紹介しよう。(前田啓介)

 <おめでとう。/今日という日は、きみのためにある>。励ますような言葉から始まる絵本『きみの行く道』(ドクター・スース作・絵、伊藤比呂美訳、河出書房新社)は、一人の少年が様々な困難を乗り越えて、前へと進んでいく物語を描いている。

 <何が起こっても/だいじょうぶ。なやむことはない。/どんどん行きなさい、そのままどんどん。/きみじしんも変わっていくんですから>

 語りかけるような文章で、これから新しい人生の一歩を踏み出そうとする人の背中を優しく押してくれる。

 本書は2008年の刊行以来、支持を集め、今月には17刷が刊行された。読み聞かせでも人気だという。担当編集者の島田和俊さんは「主人公の冒険が、人生そのもののように感じられる。そのことが、子供だけではなく、大人にも人気の理由となっている」と話す。

古典をヒントに

 新しいものに接し、どうしてよいか分からないとき、手がかりを与えてくれるのが古典だ。『扉をひらく哲学』(岩波ジュニア新書)は、副題に「人生の鍵は古典のなかにある」とあるように、11人の古典研究者が古今の名著をもとに、人生の悩みを解決するヒントを与えてくれる。

 親との関係、何のために勉強するか、本当の自分とは何か——。誰でも、どこかで抱いた悩みが取り上げられる。扱われるものは、『論語』やソクラテスら古代ギリシャ哲学、ブッダなど幅広い。

 たとえば、「人の意見にすぐ影響されてしまいます」という悩みに対して、哲学者の納富信留さんは古代ギリシャ哲学を用いて答えを出す。人から影響されることは仕方ないが、され方が問題だという。自分をしっかり持って、相手の意見の良いところをしっかり学ぶことが大切だと説く。そのためには「対話」が必要だと話を進めていく。

 長く読まれてきた名著には、時間の積み重ねに耐えた価値がある。編著者の一人で、哲学者の中島隆博さんは本書の中で、「古典とは過去から私たちに贈られた贈り物です」と唱える。さらに中島さんは、古典が「みなさんが悩みの中にいる時に、ぐらつく足場を支えるつえとなってくれる」と説明する。

 新しい人間関係を作るための手段としてSNSは便利だ。しかし、その特性を理解して使わなければ、知り合った人とトラブルが起きるなどの恐れもある。

 情報リテラシー(読み解く能力)専門家である小木曽健さんが監修した『被害者にも加害者にもならないために SNSから心をまもる本』(Gakken)は、ネットやSNSをどう利用するのが良いのか、実際に小木曽さんに寄せられた子供たちや、保護者からの相談をもとに、最新事例とその対応法、相談先なども記している。

 全国の学校を訪問し、適切な使い方を伝える活動をしている小木曽さんは「SNSはただの道具。どう利用するかが大事だ」と強調している。

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