「事実無根」の近藤芳正、柔らかい京都弁で主人公演じる…「フランス風松竹新喜劇を気軽に見て」

2025年4月29日(火)15時54分 読売新聞

映画の主演は2本目。名バイプレーヤー同士、村田雄浩との演技では「僕が泣く場面は脚本になかったのに、自然とああなっちゃったんです」=木佐貫冬星撮影

 今年2月に京都で公開され、好評だった「事実無根」(柳裕章監督)が5月、首都圏の映画館でお披露目される。京都の町で、挫折感を抱えながら生きていく人たちの群像劇で、主人公のカフェのマスターを近藤芳正が演じている。実生活でも京都で暮らす近藤は、「京都で何かできないかと思っていたので、今回の仕事は本当にラッキーでした」と満足げだ。(近藤孝)

 近藤が演じるのは、京都市下京区にあるカフェを切り盛りする星。高校を卒業したばかりの沙耶(東茉凜)をアルバイトに雇うが、ホームレス風の男(村田雄浩)が彼女の様子をうかがっていることに気づく。やがて、沙耶と男の正体が分かり、星の不幸せな過去も明らかに。3人の人生は、星が事実無根と信じているトラブルが災いしたのだ。

 星のカフェは、公園に隣接する、小さいが風通しの良さそうな店。老夫婦ら常連客も多く、近所の子供たちも勝手に出入りしている。2020年から京都で生活する近藤には、現実の人間関係と重なって見えた。「東京にいた時は、役者どうしだったり、スタッフだったり、出会う人が同じ業界の人ばっかりだったんですね。ところが、京都では、大学教授とか、お医者さん、居酒屋の店長と知り合いになれた。全然違う職業の人たちと触れあうのがすごく楽しい」

 柔らかい京都弁も印象に残る。重くなりそうな物語に洒脱しゃだつな感じが漂うのも、言葉の力が大きい。「京都に住んでいるとはいえ、京都弁をしゃべることには慣れていないので、勇気がいると思った」というが、同じ頃、NHK連続テレビ小説「ブギウギ」で、ヒロインのマネジャー役を「バリバリの関西弁」で演じていた。笑いながら、「“関西弁養成ギプス”をはめられて、家でずっと稽古してました」と振り返る。

 舞台も京都、言葉も京都弁。ローカル色が強いにもかかわらず、イタリア、フランス、インドなどの映画祭で受賞を重ねてきた。余勢を駆って、5月10日から新宿Kシネマ、同31日から横浜のシネマ・ジャック&ベティで公開される。「挫折した人間が何とか希望をもって生きるとか、うそが世の中に蔓延まんえんしている今、許せる、許せないの境界線はどこにあるのかを考えることって、どこでも共通するテーマかもしれませんね」

 軽妙な感じはフランス映画風でもある。終盤、琵琶湖畔でのクライマックスの場面は、エリック・ロメール監督やギヨーム・ブラック監督のバカンス映画のタッチにも通じる。「ベタな笑いもあるので、“フランス風松竹新喜劇”と勝手に名付けてます。そんなふうに気軽に見てほしいですね」

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