「日本人がレベルを下げている」宮脇咲良(27)に辛辣な声も…LE SSERAFIMの韓国での評価が一変した出来事とは?《現地記者が解説》
2025年5月2日(金)18時0分 文春オンライン
〈 「あまりにも歌がヘタ」「実力不足」批判も越えて…デビュー3周年を迎えたLE SSERAFIMの"転機"《現地記者が解説》 〉から続く
きょう5月2日にデビュー3周年を迎えた、5人組ガールズグループのLE SSERAFIM(ル セラフィム)。2022年に、「IZ*ONEの人気メンバーが中心」「BTSの妹分」として華々しくデビューしたが、これまでいくつもの“試練”に直面してきた。
今や世界中から注目を集める彼女たちの軌跡を、韓国在住のジャーナリスト・金敬哲氏が振り返る。(全2回の2回目/ 最初 から読む)

◇◇◇
“夢の舞台”でのパフォーマンスが、大きな物議を醸す
その年の最もホットなアーティストが出演するとされる米最大の音楽フェスティバル「Coachella(コーチェラ)」。これは、K-POPシーンでも“夢の舞台”として知られている。「コーチェラに招待されること」=「名実共に世界的なアーティストとして認められる」という意味で受け入れられるためだ。
2024年4月、LE SSERAFIMはデビュー2年足らずでこの夢の舞台に招待され、「K-POPアーティストの中でデビュー最短で出演」という記録を立てた。しかし、コーチェラでのLE SSERAFIMのパフォーマンスは、韓国国内で大きな物議を醸してしまう。「『デビューから最短での出演』という大義名分のために、準備もできていない状態で出演した」などと、激しく非難されたのだ。
LE SSERAFIMの最大の魅力といえば、「力強く美しい」「情熱的な」パフォーマンスだろう。楽曲もパワフルなものが多いため、40分間ずっとステージに立ち続け、激しい歌唱とダンスを続けるコーチェラの舞台では、時々音が揺れてしまった。
韓国で歌唱力が厳しく批判された
すると、YouTubeで公演を見ていたK-POPファンを中心に、LE SSERAFIMの歌唱力を問題視する声が上がり始めた。芸能ニュース専門のネットメディアでは、「治療が必要な音痴のステージ」(スポーツ東亜)、「下手なライブで実力がバレてしまった」(My Daily)、「惨事に近いライブだった」(Joy News24)など酷評の嵐だった。
このとき、メンバーのサクラ(宮脇咲良)は、殺到する批判の声に意気消沈しているであろうファンを慮ってか、ファン向けのプラットフォーム「Weverse」に日本語で長文のコメントを掲載。「誰かの目には、未熟かもしれない。でも誰にとっても完璧な人なんていなくて、私たちが見せてきたステージの中で、最高のステージだったことは、揺るぎない事実です」と心境を打ち明けた。
「日本人メンバーがK-POPのレベルを下げているのではないか」
だが、この投稿も韓国のネットユーザーたちからは受け入れられず、「『頑張りました』で終えてしまえば、それはプロではない」「頑張ったし、本気だったって? 誰もそれを否定していない。だが、あまりにも歌がヘタだった」などの攻撃的なコメントが相次いだ。『世界日報』のネット版は、LE SSERAFIMのサクラやカズハだけでなく、他の日本人メンバーを擁するグループを挙げながら、「日本人メンバーがK-POPのレベルを下げているのではないかという不満の声まで出ている状況だ」と述べた。
K-POPのステージは歌唱力だけではなく、パフォーマンスの完成度や観客の反応なども含まれて評価される「総合芸術ジャンル」である。そのため、歌唱力だけで彼女たちの実力を下げることに対して「見当違いだ」と反論する音楽専門家もいた。
ただし、大多数の韓国人は「歌手は何よりも歌が上手でなければならない」という信念が強い。コーチェラを契機に始まったLE SSERAFIMの歌唱力に関する論争はまたたくまに広がり、グループへのマイナスイメージとして浸透した。
HYBE事務所内での抗争にも巻き込まれ……
この論争とちょうど同じころ、LE SSERAFIM の所属事務所である「HYBE」はもう1つ大きな争いを抱えていた。NewJeans(現NJZ)を手掛けたプロデューサー、ミン・ヒジン氏との、HYBE傘下のレーベル「ADOR」の経営権を巡る対立だ。
この対立において、ミン氏が「LE SSERAFIM vs. NewJeans」という構造を作り出したのは意図的なものだっただろう。ミン氏は「『HYBEの初のガールズグループ』という売り出し文句はもともとNewJeansのものだったのに、LE SSERAFIMが奪った」「HYBEはLE SSERAFIMとNewJeans を露骨に差別した」などと主張。事件と直接の関係がないLE SSERAFIMにまで、莫大なダメージを与えた。
さらに、2024年5月には突然の「親日論議」が起こった。2023年5月に発売されたLE SSERAFIMのアルバム『UNFORGIVEN』に収録された「Burn the Bridge」のMVが、「極めて“右翼的な”内容を含んでいる」という言説がインターネットで広がったのだ。それは、「MVの随所で日の丸を象徴するイメージが演出されており、『独島(※日本名は竹島)は日本の領土』というメッセージが投入されている」という全く根拠に乏しい意見だった。
多くのネットユーザーはこの主張を「オッカ」(=無理な非難をするというネット用語)としてまともに捉えはしなかったが、熱心なアンチがSNS上で誹謗中傷をつづけ、 LE SSERAFIMはすべてのSNSアカウントのコメント欄を閉鎖せざるを得なくなった。
「一寸先が見えなかった」メンバーの悲痛な告白
試練が続いたこの1年の雰囲気について、ユンジンはワールドツアーのスタート地である仁川公演(4月20日)で次のように吐露している。
〈「私たちはこれからどうすればいいか、私たちに未来はあるんだろうかと、本当に一寸先が見えませんでした。でも、越えられない壁と向き合った時は、ずっと前に進んで努力するしかないと思いました」〉
彼女たちに対する世間の風向きが変わり始めたのは、2024年の秋頃からである。K-POPアイドルたちにとって重要なイベントである大学祭で、LE SSERAFIMのライブでの実力が大衆から認められ始めたのだ。
韓国の大学祭は「若者たちの間で現在一番人気のあるK-POPアイドルは誰か」を見極める尺度となるほど、その大学の学生だけでなく、外部の人も含めた数万人が集まってくるK-POP界のビッグイベントである。
大学祭のステージでマイナス評価を覆した
韓国では5月と10月に大学祭が集中しているが、LE SSERAFIMは2024年5月は1ヶ所も出演しなかった。これもまた一部のネットユーザーから「批判を避けている」と否定的な視線を浴びた。
ところが、秋にはLE SSERAFIMはなんと7ヶ所もの大学祭に出演し、渾身の力を尽くした情熱的なステージを披露。一瞬にしてそれまでの批判的なイメージを覆した。
大学祭では多くても4~5曲のパフォーマンスが通常だ。しかし、LE SSERAFIMは7曲を披露。歌唱力やダンススキルはもちろん、MCやファンサービスといった舞台マナーまでも完璧だったという評価を勝ち取った。
ネット上では、「私の学校のような地方大学に来て7曲も歌ってくれたLE SSERAFIMはマジで女神だ」「激しいダンスを踊るのにも音程が安定していて驚いた」「実際に見てこそ彼女たちの真価が分かる」など、公演を観覧した大衆の好意的な評価が続々と上がってきた。彼女たちの舞台を実際に見た人々の声によって、それまでのマイナス評価が一変したのだ。
一変したコメント欄にファンは涙
LE SSERAFIMの努力は、2025年3月のカムバック(=新曲のリリース。また、それに伴ってメディアに露出すること)でも高く評価された。
たとえば3月21日のKBS音楽放送の「ミュージックバンク」では「HOT」で1位を獲得。この番組で1位を獲得したアーティストは「アンコール」として生歌を披露するため、アーティストの歌唱力が測られる場でもある。しかし、今回LE SSERAFIMに対しては、否定的なコメントがほとんど見られなかった。
「メンバー全員のライブの実力が向上している」「カズハの新発見!」など好意的な意見が多く、LE SSERAFIMのファンたちは、「(炎上してから)怖くてコメント欄を見ることができなかったが、とても感激した」「コメント欄が称賛でいっぱいで、涙が出る」という感想を上げた。
悪質なコメントが相次いでいたことから、グループの公式SNSだけでなくメンバーの個人アカウントまでコメントを遮断してきたが、この頃にはすべてのアカウントでコメント閉鎖を解除した。
“成長型アイドル”として真価を発揮
韓国の音楽ファンはアイドルにも厳しい実力を要求する。歌唱力に懸念があったLE SSERAFIMは、韓国人の基準から見れば、「アーティストではなく、単なるパフォーマー」というイメージもあった。
さらにHYBEという巨大な事務所のバックアップを受けて華麗にデビューした彼女たちに対して、「実力が伴っておらず、過大評価を受けるガールズグループ」という好ましくない視線も多く、「オッカ」に苦しめられることもあった。
しかし、LE SSERAFIMは厳しい評価を受けてもなお淡々と努力を尽くした。「もう終わった」という世間の評価を覆し、再び華やかに復活したのだ。だからこそ韓国のメディアは、現在LE SSERAFIMは“成長型アイドル”としての真価を遺憾なく発揮しており、ここからが彼女たちの「真の全盛期」になると展望しているのだろう。
(金 敬哲)
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