「本もまとめて読みたいし、物語も書きたい」……小泉今日子さんが60歳を過ぎたら考えている夢
2025年5月2日(金)15時15分 読売新聞
「谷川俊太郎選『茨木のり子詩集』」(岩波文庫) 880円
戦争の時代に青春を送った茨木のり子(1926〜2006年)は、「わたしが一番きれいだったとき」などの詩を残した。「なぜ出会ったかは忘れたけれど、読んだときに本当に殴られたような気がしました」と語る。
文庫本を手に取り、代表作の一つ「自分の感受性くらい」を見つけると、小さな声で詩の何行かをたどり始めた。
ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて
一編の中で詩人は、自分が気難しくなっていくことやいらだち、そのほか駄目なことの一切を戒める。最後に、きっぱりと結ぶ。
自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ
「ばかものって……。茨木さんは戦争や恋愛など様々なことを書いても、人のせいにしない。自分で解決するようにと、自分に向かって言う。格好いいし、色んな人に言葉を浴びせかけてみたいと思います。雨のように」
小泉さん自身の感受性は、まったく鈍っていないように見える。インタビューの間、韓国の人気グループ、BTSのことや、本に関わる意欲的な人たちに会い、『ホントのコイズミさん』(303BOOKS)にまとめた体験も語った。「新しいから、昔のだからみたいな感覚がなくて、格好いいものは格好いいと選ぶ自信だけはあります」
「本だけでなく、テレビや映画、音楽などで、私は『自分の感受性』を育ててもらった。そこで得たものを自分の表現として外に出し、日々、循環させているような感じがする」と語る。
現在は、忙しい日々を送っている。60歳を過ぎたら一度、長期の休みを取りたいと考えている。「本もまとめて読みたいし、物語を書いてみたいんです」
小泉さんは、若いころの曲が今でもキーを下げずに原曲で歌えるという。インタビューで聞いた声は、読書委員会の頃と変わらず、優しく、自然体だった。(おわり、待田晋哉)