『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』プロデューサー松浦大悟が掲げる「50年目のスーパー戦隊」のポリシーは「フレームから”はみ出してけ”」!

2025年5月9日(金)11時30分 マイナビニュース


カラフルに色分けされた仮面のヒーローがチームワークを活かし、人類を脅かす邪悪な敵を倒す「スーパー戦隊シリーズ」。子どもたちが生まれて初めて目にする実写キャラクターアクションドラマと言われ、安定した人気を誇るこのシリーズは今年(2025年)、第1作『秘密戦隊ゴレンジャー』(1975年)放送開始50年という、大きな節目を迎えた。
スーパー戦隊50周年記念インタビューの今回は、最新作『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』のチーフプロデューサーを務める松浦大悟氏にご登場いただいた。
プロデューサー補として『機界戦隊ゼンカイジャー』(2021年)『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』(2022年)『仮面ライダーガッチャード』(2023年)などに参加して着実に腕を磨いてきた松浦氏が、初のチーフとして取り組んだ連続テレビドラマである『ゴジュウジャー』は、スーパー戦隊50周年記念作品という要素をも持ち合わせている。決して優等生ではない「はぐれ者」たちの集団という意欲的な設定を備えるゴジュウジャーのヒーロー性をどのように構築するか。松浦氏の作品への向き合い方や、面白い作品を作るための方法論を尋ねた。
○昭和世代のベテラン勢と若きプロデューサーの関係性
——ここ数年、スーパー戦隊シリーズは「いわゆる戦隊」という定番パターンからの意識的な脱却が見られる気がしますが、その中でも『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』第1話の型破り感は格別でした。ゴジュウウルフ/遠野吠しかレギュラーメンバーが変身しないというのも意表を突かれました。第1話で主役ヒーローが1人しか出てこないのは過去に『超力戦隊オーレンジャー』(1995年)というケースがありましたが、それでも第2話で5人そろいましたから。第5話まで主役メンバーがなかなかそろってくれない『ゴジュウジャー』の異質さが際立っていますね。
ゴジュウジャーが全員そろって「名乗る」のが第7話で初ですからね(笑)。
——第1話で示された世界観でわかるのは、従来の「巨大ロボット」にあたる存在がテガソードという「神」で、ゴジュウジャーの変身アイテム&武器としても機能していること、そして叶えたい「願い」のため、センタイリング(指輪)を持つ者同士で争いあい、奪いあうということですね。設定を知ったときは『仮面ライダー龍騎』(2002年)のような「命の奪いあい」的な殺伐さを予感したのですが、いざ始まってみると、ちょっとノンビリしているといいますか、リングを取り合っているはずの吠や陸王、竜儀たちが喫茶店「テガソードの里」でつるんでいるとか、独特な雰囲気がありました。
慣れ合う気はないといいながら、実はけっこう仲良くしてますよね。全員ツンデレ野郎説もありますが(笑)。相手と戦って、リングを集めようとしているのは確かですけれど、別に命を取り合ってるわけではありません。そういう意味ではスポーティというか、「スーパー戦隊」シリーズとして、悲壮感を持たせないようには意識しています。
——吠とファイヤキャンドルが戦う直前、突然「応援団」が出てきて両者を応援するのには驚きました。ああいうところ、『ドンブラザーズ』の遺伝子を受け継いでいるような気がしました。
確かに『ドンブラザーズ』ではドンモモタロウの登場時に何の説明もなく「天女」が出てきましたから、「ここで応援団が出てきます」という説明をスタッフにしやすかったというのはありますね(笑)。天女が出てくるなら、応援団も出てくるだろう、と。謎の説得力がありました。
——本作は松浦さんがチーフプロデューサーを務めた初の連続テレビドラマですね。ご自分がチーフになったら、こんな作品をやってみたいといった構想は以前からお持ちでしたか?
まったくなかったです。そもそもスーパー戦隊のような「キャラクター作品」と呼ばれる番組では、商品企画などさまざまな「外枠」から決まってくるケースが多くて、自分がこういう内容の作品を作りたい、という思いだけでは成立しないものなんです。根本は商売ですから、フレームが先にできていて、その中で何をすればいいのか考える、それがプロデューサーの仕事になります。
——チーフになったことで、プロデューサー補時代とどんな部分が変化しましたか。
毎回の台本と向き合う時間が増えました。そのおかげで、本編外で遊ぶ余力が少なくなっちゃった(笑)。でも基本的な部分、主にやっていることは『仮面ライダーガッチャード』のころとそんなに変わっていません。『ガッチャード』が終わって、さあ次は『ゴジュウジャー』だ、がんばるぞ! みたいな思いは一緒です。
——チーフともなると、作品作りにあたっていろいろな「決めごと」の最終判断を任されることもあるのでは?
『ガッチャード』のときも、湊(陽佑/チーフプロデューサー)のおかげで僕は割かし好きなようにやらせてもらっていたので、気持ち的にはほとんど変わっていませんね。生意気でしたから、いろんなところに口を出していたけれど、湊がそれを受け入れ、尊重してくれた。今でもとても感謝しています。
——改めて、プロデューサーの仕事のたいへんさと、やりがいを聞かせてください。
プロデューサーって、監督をするわけでもない、脚本を書くのでもない、特別「コレが出来る!」という存在ではないにもかかわらず、みなさんに「これをやってほしい」と言わなきゃならない役割です。なので、あまり身勝手なことばかり言っていると「じゃあお前がやれ」と不愉快に感じさせてしまうかもしれない。そういう意味で、プロデューサーの仕事は難しいなと思っております。
自分自身は何もできないので、いろいろなことをたくさんの人たちに助けてもらいながら、番組として形にするのがプロデューサーなんだと認識しています。こちらの思いを伝えて、やっていただくために「お願いします〜〜!」と泣きながら頼み込んで、「まあ、そんなに言うならやってやらんでもない」と動いてくださったときには、やっぱりこちらもすごく嬉しいですね。
——まだ20代という若さの松浦さんですが、田﨑竜太監督、佛田洋特撮監督、福沢博文アクション監督など、ご一緒にお仕事をされている方たちはバリバリの昭和世代のベテラン勢ですね。組まれてみて、世代間ギャップを感じたりすることはありますか?
感じますが、あんまり気にしないですね。おそらく昔と比べたら、上の世代の方々が僕みたいな若造に対して、優しくなっているような気がして、そこは時代感に助けられているのかな(笑)。年齢差でいえば、僕は息子みたいな世代、もしかしたら孫世代なのですが、僕自身が昭和の時代に作られた特撮やアニメ作品が好きですし、そこで話が盛り上がったりする。お酒も好きだし、、昭和世代の方々とうまく波長が合うのかもしれません。仕事をお願いするとき、年齢が上の方々のほうが頼りやすいというのもあります。甘え上手なのかもしれないです(笑)。
○素面キャストが乗り込むロボット戦、その意図は?
——巨大な「手」から人型へと変形するテガソードのインパクトがすごいですが、佛田特撮監督とはどのようなお話をされたのですか。
今回、巨大ロボットをどんどん押していこうという方針なので、過去のロボットものを勉強し直すために『勇者ライディーン』(1975年/東北新社)を観てみたんです。そうしたら、これから『ゴジュウジャー』で僕らが目指そうとしていた「神秘のメカ」の要素が入っていて、佛田さんと意識を共有していた部分がありますね。ライディーンみたいに、巨大な石像が半分に割れて、ゴゴゴゴって動くやつやりましょうと提案したら、佛田さんからは「何を言ってるんだお前は」みたいな怪訝な顔をされました(笑)。「手」の形のメカなんてどうすればいいんだ! だなんて思っていたら『ライディーン』の敵要塞「ガンテ」が先にやっていた(笑)。
もともとロボットが好きなので、佛田さんに「本格ロボットものをやりましょう」と話したら、「あまりリアルロボット寄りになってもうまくいかないよ」と言われたことがあります。でも、佛田さんと話していく中で、最近の「戦隊ロボ」って、デザインとモチーフだけが先行しちゃってあんまり「ロボ」になってないよね、という疑念を覚えたんです。たとえば、「ロボットのどの部分にコクピットがあって、操縦者がどこに座って動かしているか」ということまで考えて、デザイン出来ているのか? とか。それこそリアルロボットではないので、そんなところばかり一生懸命になっても仕方がないけど、そういう「現実感」みたいなものを、今回のロボにも入れ込みたかった。なので『超電磁マシーン ボルテスV』(77年)みたいにテガソードレッドの「目」の部分にコクピットがジャキーン! と出てくる演出をやりませんか? って、提案したんです。
——等身大チームヒーローのアクションと、巨大ロボットの特撮バトルという2つの見せ場を打ち出すのが「スーパー戦隊」の特徴ですが、『ゴジュウジャー』でもそういった部分は意識されていますか。
『ゴジュウジャー』では、等身大アクションも巨大ロボットも、どっちも頑張ろうとしているので、ヘタをすればどっちつかずになる危険性もあるんですね。要素過多、過積載で動かなくなる恐れがある。でも、巨大ロボット戦が等身大アクションの「おまけ」みたいにならないように見せるためには、どうすればいいか、試行錯誤しながらやっています。過去の作品でいえば『超電子バイオマン』(1984年)や『特命戦隊ゴーバスターズ』(2012年)みたいに、パターンにならないようチャレンジしている作品もありますから。『ゴジュウジャー』の試みが上手くいったといえるかどうかは、終わってみないとわからないと思います。
——これまでは変身後のヒーローが巨大ロボを操縦するというのがほぼほぼ決まり事のようになっていましたが、『ゴジュウジャー』のテガソードでは、専用のコスチュームを着た素面の人物たちが乗り込んでいます。これにはどのような狙いがありますか。
コクピット内のキャラクターの動き、感情表現については、全体のドラマをつかさどる「監督」や本編スタッフのテリトリーなのですが、ロボ戦が始まってしまうと佛田さんの特撮班にお任せという感じで、気持ちが離れていってしまう傾向にあると思ったんです。本気でロボットものをやろうとしている中で、そういう意識では絶対によくない気がして。そこでコクピットの中に素面キャストを搭乗させて、まずは我々「制作する側」の意識を、ロボットのシーンは「特撮班のもの」ではないんです、本編班がしっかり関わらないといけないんですよと、自分事として再認識できればと思った部分が大きいです。
——1977年の『小さなスーパーマン ガンバロン』(創英舎)では仮面のヒーローであるガンバロンが、巨大ロボット・ダイバロンに乗り込むと素顔を活かしたヘルメットにチェンジし、操縦者の感情がダイレクトに見える演出が施されていました。スーパー戦隊でも『鳥人戦隊ジェットマン』(1991年)や『激走戦隊カーレンジャー』(1996年)など、いくつかの作品でそういった(変身前の人物がロボットを操縦する)演出を試みていますが『ゴジュウジャー』のように徹底した例は今までなかったです。
従来のように、仮面を被ったキャラクターがロボットを操縦し、リアクションの芝居をしているのも面白いんですけどね。二者択一で、どちらかに決めておかなければならないので、今回は素面キャストに操縦してもらおうとなりました。
——『ゴジュウジャー』の評判次第では、これから「巨大ロボットには変身前の人物が乗っているほうが自然」みたいな流れに変わる可能性もあります。
おかげさまでここまで、スタートダッシュの評判が各方面で良い感じでして。「DXテガソード」や「レオンバスター50」などの各種個人武器の販売成績もいいと聞いていますし、中でも予想外の人気だったのが「センタイリング」です。やっぱり個々のデザインをプレックスさんに頑張ってもらったのがよかったのかな。とにかくあちこちで期待値を上回る人気ぶりだそうで、数字が付いてきてくれて、まずは胸を撫でおろしているところです。
○メインライター・井上亜樹子さんの「武器」
——第5話の時点で、吠、陸王、竜儀、禽次郎、角乃とメインキャラ5人の人物紹介が完了し、作品世界についても視聴者がだんだんなじんできたのではないかと思います。いろいろなものを背負っていて、時には悲壮感も持ち合わせながら、それぞれのキャラクターがカラッと明るく仕上がっている印象です。
『ゴジュウジャー』をやるにあたっては、とにかく「明るい」作品にしたいという思いが強くありました。人間関係がギスギスしすぎているとか、みんながしかめっ面をしているのはいけない。お話の展開とか、一部の描写ではわりとキツいことをやっていても、みんながニコニコしていれば大丈夫なんじゃないかという(笑)。「スーパー戦隊」の魅力は「明るさ」と「いい意味でのアバウトさ」なのではないかと思っています。
——メインライターの井上亜樹子さんのキャラクター造形については、いかが思われますか。
登場キャラクターについては、亜樹子さんがほぼすべて肉付けを行っていると言っても過言じゃありません。期待を上回るキャラメイク能力を実感し、ほんとうに(メインライターを)お願いしてよかったです。現在進行形でホン(脚本)を上げていただいてますが、やっているうちにどんどん精度が高まっているなと感じています。
スーパー戦隊に限らず、番組って、登場キャラクターを好きになってもらえたら「勝ち」だと思うんです。一度好きになってもらえたら、極端な話ストーリーが無かったとしても、キャラクター同士の行動を追うだけで面白くなっていく。いかに愛されるキャラクターを生み出すことができるか、そこが重要なポイントだと感じています。
——『仮面ライダー555』(2003年)や『ドンブラザーズ』など、強烈なキャラクターの個性で魅了する父上の井上敏樹さんと、亜樹子さんが重なる部分はありますか。
大先生(井上敏樹氏の愛称)とはぜんぜん違いますね……。そういう意味では、亜樹子さんはまだ良識的な脚本家の部類に入るかと(笑)。ちゃんとこちらの話を聞いてくださるし、打ち合わせもしっかり時間をかけて、やってくれます。大先生みたいに「わかったわかった、じゃあ書いとく」って言って、30分で打ち合わせの席からいなくなるなんてことはない(笑)。
大先生と亜樹子さんが似ているとは思いませんが、ただ、亜樹子さんは幼いころから、ものすごい読書家なんです。それって、同じく読書家である井上敏樹さんの下で育ったことが大きく起因しているとは思うんです。名作文学、近代小説から漫画に至るまで、膨大な本が身近にある環境で育っている、そこがすごいところだと思います。
単なる血縁関係だけで類似点を決めつけるのは、楽なモノの観方であまり好きではありませんが、「環境」での類似点はある気がしていますね。おそらく、井上敏樹さんのホンは読んでなくても、井上敏樹さんが読んだ本はたくさん読んでいるはず。亜樹子さんの人間的深みというのは、そんな常人離れした読書環境にあるでしょうし、そこが「武器」なんだなって感じています。
——第8話から、カルマさん演じる「吠の兄・クオン」が登場します。放送開始前の発表会見では、詳細がまったく語られない謎のキャラクターでありながら、カルマさんの持つ存在感が期待を高めてくれましたね。カルマさんレギュラー起用についての経緯を聞かせてください。
『ゼンカイジャー』の駒木根葵汰くんや、『ドンブラザーズ』の志田こはくちゃんが出演しているということで、テレビ朝日のドラマ『伝説の頭 翔』(2024年)を楽しく観ていたら、すごく味のある俳優さんがいるなあと、カルマさんに注目していました。レギュラーキャストの中では唯一、オーディションではなくこちらサイドからのオファーという形で、出演をお願いした方です。クオンは亜樹子さんが「書いていて楽しい」と話していましたし、すごく得意なキャラクターなんだなって思います。僕はぜんぜん意識していなかったのですが「松浦さんが食いつくのは、クオンみたいな『愛の強い束縛系』のキャラですね」って言われちゃったなあ(笑)。とても魅力的な人物になりましたので、登場したらもう、ファンのみなさんの人気をかっさらっちゃうんじゃないかと大いに期待しています。
——第5、6話あたりで、メンバーそれぞれの過去や、今後の展開につながるいくつかの「謎」が散りばめられはじめました。角乃が探している「灰色の目」の男は誰なのか、などについては、SNSで早くもいろいろな考察が行われているようです。
入り組んでいますよね。入り組んだままで終わらないように、気をつけないと……。僕個人の嗜好なんですが、オタク気質があるくせに「理屈」や「ディティール」に弱いところがありまして(笑)。なぜこうなったかの理由とか意味に、それほど重要性を感じていない節もあって……。「過去」に何があったかより、そのキャラが「今」どういうことをしたら熱いのか、萌えるのか(笑)そういうことばかり考えちゃうんですね。もちろん、必要な因果関係については劇中できちんと解決させるつもりですし、そうしないといけないのですが、つじつま合わせに終始するような作り方にはならないと思います。でも、偉そうなことを言って、何の回収もしないでネットで燃えるのは困りますので、ちゃんと「灰色の目」などの要素については回収しますよ! 期待していてください!(笑)
——複雑な謎や、テレビ劇中で判明しなかった事象についても、最近は公式WEBで松浦さんをはじめ、プロデューサー陣が詳細な説明・解説を入れているケースも多いですね。放送終了後、画面を観ていて気付くことのできなかった隠しネタなどがWEBで明かされると、また視聴してみたくなるといった効果があると思います。
作品を好きになってくださった方に、より深く作品世界のことを知ってもらえたら楽しめるんじゃないか、という感覚でやっていますので、WEBの評判がいいと嬉しいですよね。その一方で、WEB情報がなくとも、漠然とテレビを観て内容が理解できるようにも努めています。子どもたちは熱中して画面を観てくれると思っていますけど、放送中、洗濯物を干したり、洗い物をしているお母さんたちにも、なんか騒がしい番組をやってるなあって感じで興味を持って、観ていただきたいんです。画面さえ観てくださればこっちのもの。洗濯物を干しに行こうと思っていたら、面白くて30分ずっと観てしまった〜〜なんていうのが、僕にとっての理想ですね(笑)。
○「恋愛ソングの歌詞のような心境」で向き合うユニバース戦士
——歴代スーパー戦隊のレッド戦士が、まったく別な変身者によってまるで新キャラクターのように刷新されて登場する「ユニバース戦士」も毎回の見どころです。ただでさえ、レギュラーキャラはゴジュウジャーもブライダンも濃厚な個性があるのに、ゲスト、セミレギュラー的にユニバース戦士を出して絡ませるのは、はっきり言って大変ではないですか。
要素が多いのは最初から承知しています。とにかくやれることをやってみて、後から困ればいいやって感じです。すでに困っているところがないわけでもないですが……(笑)。過積載なのはしっかり自覚しつつ、パッと見には重いと感じさせないように、勢いでごまかしながら1年間を走りきろうと目論んでいます!
——過去作にとらわれず、性格なども大胆に変化させているユニバース戦士について、松浦さんの構想では全員分の戦士の設定ができあがっていたりしますか。
それは全然ないです。毎回のお話を考えながら、その都度登場するユニバース戦士と、変身する人物像をひとりずつ作っていくやり方でやっています。
ただ、今までのスーパー戦隊レッドを「作り直す」という作業、なかなか悩ましいところがありまして。たとえば僕が個人的に大好きなルパンレッド(快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー)やシンケンレッド(侍戦隊シンケンジャー)とかも、従来と違った新しいキャラにしなければいけない……。オタクの自分としては元の作品を愛し、作品世界にひたりたいんですけど、プロデューサーとしては、彼らを現在進行形のキャラクターに生まれ変わらせなくてはいけないわけで。「夜野魁利じゃないルパンレッドか……」「志葉丈瑠じゃないシンケンレッドか……」と板挟みに苦しむ自分もいるんです(笑)。こんな切ない思いをするのなら、彼らを好きになるんじゃなかった……とか思うくらい(笑)もはや恋愛ソングの歌詞のような心境になりながら、ユニバース戦士と向き合っています。
——佛田監督がインタビューで「作っているほうが楽しんでやらないと、面白いものは生まれない」とおっしゃっていました。これは松浦さんのお考えとも共通しますか。
それは大いにありますね。明るく楽しく、バカなことでも思いっきりやれるのがスーパー戦隊のいいところ。作っていても楽しいですし、それが一番の武器だと思っています。スーパー戦隊はいくつかの「決めごと」さえ押さえておけば、どんな風に作ってもスーパー戦隊になる「懐の深さ」を備えています。それだったら、思いつく限りどんなことを試してもいいんじゃないかと、チャレンジングが可能なシリーズでもあるんですね。それだけに、以前と同じことを繰り返すのはもったいない。これからも、どんどん新しいことを盛り込んで作っていきたいと思っています。
——波乱万丈、先の予測がつかない展開が魅力の『ゴジュウジャー』ですが、松浦さん的には最終回の着地点がどうなるか、大まかにでも決まっていたりするのでしょうか?
全然決めていません。ていうか、今までそんなやり方をしてこなかったので、他のやり方がわからないんです。そもそも、最終的にこうなるなんて細かく物事を決めてしまうと、作っているほうが楽しめなくなりますから。先のことは、その時になってみないとわからないというほうが、東映らしいんじゃないですか(笑)。
——『ゴジュウジャー』を作る上で、もっとも大事にされている考え方があれば、教えてください。
どんな形にせよ「優等生」にはなりたくない、と思いながら作っていますね。主題歌(Wienners『WINNER!ゴジュウジャー!』)の「はみ出してけ」というフレーズを自分の支えにしているので、常に「今俺がやっていることは、フレームからはみ出しているのか? はみ出していないんじゃないか?」と、精査をしながら取り組んでいます。ということで、『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』スタッフ、キャスト一同、全力で楽しく「はみ出して」いく所存ですので、どうぞ応援をよろしくお願いいたします!
(C)テレビ朝日・東映AG・東映
秋田英夫 あきたひでお 主に特撮ヒーロー作品や怪獣映画を扱う雑誌・書籍でインタビュー取材・解説記事などを執筆。これまでの仕事は『宇宙刑事大全』『大人のウルトラマンシリーズ大図鑑』『ゴジラの常識』『仮面ライダー昭和最強伝説』『日本特撮技術大全』『東映スーパー戦隊大全』『上原正三シナリオ選集』『DVDバトルフィーバーJ(解説書)』ほか多数。 この著者の記事一覧はこちら

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