『あんぱん』OP映像&主題歌の挑戦 制作統括が思い語る「例年の朝ドラとは違う表現に」「覚悟を決めて」
2025年5月12日(月)8時15分 マイナビニュース
●今田美桜が戦前から戦後を駆け巡る のぶと嵩の関係性も表現
女優の今田美桜が主演を務める連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合 毎週月〜土曜8:00〜ほか ※土曜は1週間の振り返り)。本作のタイトルバック(オープニング映像)では、RADWIMPSによる主題歌「賜物」が流れる中、白いワンピース姿の今田が戦前から戦後を駆け巡り、最後にアンパンマンのシルエットの姿も。制作統括の倉崎憲氏にタイトルバックの制作意図を聞いた。
112作目の朝ドラとなる『あんぱん』は、アンパンマンを生み出したやなせたかしさんと妻・暢さん夫婦をモデルに、何者でもなかった2人があらゆる荒波を乗り越え、“逆転しない正義”を体現した『アンパンマン』にたどり着くまでを描く愛と勇気の物語。小松暢さんがモデルのヒロイン・朝田のぶ役を今田美桜、やなせたかしさんがモデルの柳井嵩を北村匠海が演じ、脚本は中園ミホ氏が手掛けている。
タイトルバックは、コンペを経てVFXアーティストの涌井嶺氏が制作。倉崎氏は「涌井さんのコンセプト案を読んだ時から演出陣含めとてもいいなと思っていました。戦前から戦後の激動の時代をヒロインが駆け巡り、1本の光で導かれるというところも非常にいいなと思ったので、涌井さんにお願いすることになりました」と説明する。
映像上、嵩役の北村は出演していないが、のぶと嵩の関係性も表しているという。
「1本の光は、のぶが嵩を導いているように見えたりもするし、逆にのぶが1本の光に導かれているようにも見える。最終的にアンパンマンのシルエットにつながっていきますが、数十年での彼女の経験がアンパンマンだったり、嵩のいろんな作品にもつながっていくというのを、半年間放送を見ていただいた方にいろんな受け取り方をしていただけたらなという思いがあります」
今田は役衣装ではなく、白のノースリーブのワンピースを着用。
「昭和2年から始まって、最終的にどこまで描くかのかまだ言えませんが、アンパンマンが生まれたところまでは少なからず描くという、その数十年のスパンがある中で、戦前の衣装にするのか、戦後の衣装にするのか、そういう議論にもなって。であるならば、今を生きる今田美桜さんが、現代人の代表としてタイトルバックに参加し、戦前から戦後に向けた時代の移り変わりを旅してもらうことになりました」
SNSでは、タイトルバックと主題歌に多くの声が上がっており、「朝ドラっぽくない」という意見もありつつ、「聴くうちにしっくりくるようになったかも」「最終的にはみんな慣れて好きになるはず」と好意的な意見も。
倉崎氏は「タイトルバックの映像表現も主題歌も、例年の朝ドラとは違う表現に挑戦をしているので、『朝ドラっぽくない』という声が上がるのは当然承知の上で、我々も覚悟を決めて作っている」とさまざまな反応が生まれることも想定して新たな挑戦をしたと説明。
そして、半年間放送される中で受け取り方が変わってくるのではないかと予想する。
「第1週で見たときと、第5週、第10週で見たときと、最終週の第26週で見たときと、描いている時代によって、あるいは受け取り手の環境によって、感じ方が変わっていけばいいなと。全26週見終わった後に視聴者の皆さんにどう捉えていただけるかというのが一番大事だなと思っています」
●主題歌「賜物」に込められた思いやRADWIMPSとのやりとり明かす
主題歌「賜物」を担当するRADWIMPSとは「生命力」を大事に、また、「挑戦」というのも共通認識としてお互い持っていたという。
「RADWIMPSさんには、やなせさん関連の資料や台本など、ありとあらゆる資料をお渡しし、何度もディスカッションさせていただいて、やなせさんと暢さんを描くにあたって一面的で薄っぺらいものだとダメだというのは共通認識であり、生命力は1つ要素として大事ですよねと。主人公・のぶの疾走感、生命力、突破力も大事にしてほしいという話をさせていただきました。とにかく今までの朝ドラの主題歌というイメージや枠にとらわれずにチャレンジしてほしいし、彼らもチャレンジしたいと。それで最終的に生まれたのが『賜物』という曲です」
そして、「賜物」の意味するものについて、「1つは命だと思います」と語る。
「『あんぱん』のテーマとして、一度きりの人生、全員に平等に与えられた命をどう生きていくかという、すごく普遍的な物語にしたいとも思っていて、そこをRADWIMPSさんが1年近くとことん向き合って落とし込んでくださったという印象があります」
また、「『これだけ1曲に費やしたのは初めてです』とおっしゃっていましたが、それぐらいRADWIMPSさんとしても思い入れがあって向き合ってくださった曲ですし、我々も1年近く一緒に、やっとたどり着いたのがこの曲です」と、RADWIMPSの情熱が伝わるエピソードも明かした。
(C)NHK