「あんぱん」“朝ドラっぽくない”OP映像&主題歌の挑戦 CP語る狙い「見るほど発見」「フル尺も是非」
2025年5月12日(月)8時15分 スポーツニッポン
◇「あんぱん」制作統括・倉崎憲氏インタビュー
女優の今田美桜(28)がヒロインを務めるNHK連続テレビ小説「あんぱん」(月〜土曜前8・00、土曜は1週間振り返り)は放送スタートから約1カ月半。朝ドラ王道の展開などが好評を博し、平均世帯視聴率も番組最高更新となる16・5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区、第25回・5月2日)を記録し、好調に推移している。制作統括の倉崎憲チーフ・プロデューサー(CP)が取材に応じ、当初は「朝ドラらしくない」などの声も一部あったものの、回が進むにつれて見れば見るほど、聴けば聴くほどハマる視聴者も増えているオープニングタイトルバック映像と「RADWIMPS」による主題歌「賜物」について語った。
<※以下、ネタバレ有>
「ドクターX〜外科医・大門未知子〜」シリーズなどのヒット作を放ち続ける中園ミホ氏がオリジナル脚本を手掛ける朝ドラ通算112作目。やなせ氏と妻・暢さんをモデルに、激動の時代を生き抜いた夫婦を描く。中園氏は2014年度前期「花子とアン」以来2回目の朝ドラ脚本。ヒロインの今田美桜は21年度前期「おかえりモネ」以来2回目の朝ドラ出演で初主演、相手役の俳優・北村匠海は朝ドラ初出演となる。
タイトルバックはSF作品のような近未来的な映像が特徴。コンペを実施し、22年から「映像作家100人」に4年連続選出のクリエイター・涌井嶺氏が制作した。
涌井氏は、時代を超えて愛される数々の不朽の名作を創り出したやなせさん夫妻の人生を「過去から現代、そして未来へと続く映像で表現しました」とコメント。「のぶとしてでなく、現代の姿で登場する今田美桜さんは視聴者の皆さんの代表であり、2人が生み出し、2人の色で染まった世界の案内役です」と狙いを明かした。
倉崎氏も「のぶ(今田)と嵩(北村)の関係性を表しているコンセプトにチーム一同、惹かれました。今田さんが“1本の光”に導かれているとも、逆に導いているとも、どちらにも捉えることができて、2人がお互いに導き、導かれ、つらい時期があっても、光を追い続けたからこそ(ラストの)『アンパンマン』(のシルエット)にたどり着く。そういう2人の人生が表現できると思いました」と解説。
劇中の時代は、戦前の1927年(昭和2年)からスタート。絵本「あんぱんまん」の刊行は73年(昭和48年)、アニメ「それいけ!アンパンマン」の放送開始は88年(昭和63年)で、戦中・戦後と半世紀にわたる夫婦の軌跡を描く予定。
「タイトルバックは今田さんが戦前から戦後、現代から未来へと激動の時代を駆け巡るという内容なので、どの時代の衣装を着ていただくかも議論しましたけど、視聴者の皆さんの代表として現代の姿になりました。中盤で漫画のコマ割り風の映像になっていたり、見れば見るほど発見があり、ストーリー性を感じていただけると思います」
「RADWIMPS」は野田洋次郎がボーカルを務める2人組。朝ドラ主題歌を手掛けるのは初で、「賜物」はアップテンポの曲調や鮮やかな転調、韻を踏んだラップ調の歌詞も特徴。オンエア上は90秒版(月曜)か70秒版(火〜金曜)しか聴けないが、4月18日にフルバージョン(4分48秒)が公開されると、ドラマの世界観と深くつながる2番以降の歌詞、重層的なメロディーがさらに反響。生きること、命の尊さを高らかに歌い上げる壮大なナンバーだと判明した。
フル尺動画のコメント欄には「聴けば聴くほどスルメ曲」「曲調が節々で変わるのが本当に人生のよう」「フルで聴くと、歌詞が『あんぱん』にピッタリ」「もう今年の紅白が楽しみすぎる」などの声が続出。中毒性があり、再生回数は100回再生を超えた。
NHKのイベント「18祭」(18年)でRADWIMPSが1000人の18歳世代と歌った「正解」などを聴き、倉崎氏が「彼らが問い掛ける死生観だったり、どう生きるかというメッセージ性が、今作のテーマともリンクする部分がある」と感じてオファー。「一度完成したと思った段階から、洋次郎さんが最後の最後まで粘りに粘って、さらなるバージョンを作ってくださって。『これほど1曲に時間をかけたのは初めてです』とおっしゃるほど、1年近く向き合い続けていただき、悲喜こもごもの人生を描く映画のような、ようやく一緒にたどり着いた曲です」と格別の思い入れを明かした。
「やなせさん夫妻の人生を描くには相当深い部分に到達しないと難しいですよね、という共通認識を持っていました。主人公・のぶの疾走感、生命力や突破力も大事していただきたいとお願いして。洋次郎さんのコメントにも『朝、出たくない布団から這い出す力が湧くような“効き目”があること』(などを主眼に)とありましたが、目覚めにピッタリな、朝起きたくなる曲に仕上げてくださいました。是非、フルバージョンも聴いていただければと思います」
朝ドラとしては、斬新な映像と主題歌。スタート当初は一部で「慣れない」などの声も聞かれたが、倉崎氏は「例年とは違う表現にチャレンジしているので、『朝ドラっぽくない』と感じる視聴者の方がいらっしゃるのも当然。朝ドラは半年間、毎朝放送がある長丁場ですから、視聴者の皆さんの受け取り方もドラマの内容やご自身の環境によって、第1週、中盤の週、最終週と、その時々で変わっていっていいと思っています」と力を込めた。
今作のヤマ場の一つとなる「戦争パート」。その時、タイトルバックの見え方や主題歌の聴こえ方も変わり、見る者の心に一層突き刺さりそうだ。