『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』を見る前に知りたい5つのこと。賛否の理由は?
2025年5月20日(火)20時30分 All About
『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』は、「トム・クルーズ、ありがとう」という感謝でいっぱいになる内容でした。5つのポイントから内容を称賛しましょう。(サムネイル画像出典:(C) 2025 PARAMOUNT PICTURES.)
本作はアクション映画『ミッション:インポッシブル』シリーズの8作目。第1作が公開されたのは1996年で、29年の時を経ての「集大成」となる作品です。
ありがとう、トム・クルーズ!
結論から申し上げれば、「トム・クルーズという超大スターと共に今この世で生きていること」への感謝でいっぱいになる作品でした。シリーズを追いかけてきた人は特にリアルタイムで、この「ファイナル」を見届けることをおすすめします。ただし、上映時間が2時間49分と、長尺であることにはご注意を。後述するように、その長さには必然性があると思える一方、確実に賛否も呼ぶ理由にもなっています。しかし、それでこその映画館のスクリーンで「どっしりと腰を据えて見る」ことに喜びを覚える内容でもあると思います。
先行公開期間中の現在、本編を見た人からはトム・クルーズへの感謝の言葉が相次いでおり、レビューサイトのFilmarksで4.2点、映画.comで4.1点と高得点をマークしています(5月19日現在)。否定的な意見はあれど、絶賛の数は圧倒的でもあり、「歴史的な映画」としてこれからも語られることでしょう。
そのほか、本編のネタバレにならない範囲で、本作を見る前に知ってほしいことをまとめてみましょう。何も知りたくないという人は、先に劇場へ足を運んでください。
前置き:ムビチケは、先行上映中も販売中!
まず、映画の内容と関係ないことで恐縮ですが、本作のムビチケ(カード券/オンライン券)は22日まで発売中で、先行公開中に買って使うことができます。おトクに見たい人は、予約の前に購入しておくといいでしょう。今回の先行上映は「公開日が早まったことと何が違うの?」と疑問に思ってしまう部分もありますが、「通常は上映が始まると買えなくなるムビチケ(前売り券)を買って使うことができる」のは観客にとってのメリットです。
ただし、劇場で買える物理的なカード券は「購入の翌日から使用可能」となっているのでご注意ください。また、パンフレットの販売は、本公開の23日からとなっています。
そして、22日までの先行上映中は、本編直前にトム・クルーズからの、日本のファンに向けてのメッセージ映像も上映されます(※IMAX版を除く)。こちらも見逃さないほうがいいでしょう。
1:シリーズの予習は必要? 主人公イーサンの「初期に立ち戻る」作品に
本作は2023年公開の『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』に続く「PART TWO」のような立ち位置です。その間にはしっかりとした「区切り」が付けられているものの、実質的に「2部作の後編」であるため、可能であればそちらだけでも見ておいたほうがいいでしょう。
しかも、今回の『ファイナル・レコニング』は、過去のシリーズの出来事の回想が「映像」として流れたりもするので「こういうこと、あったあった!」と記憶を掘り起こせます。過去作の内容をあまり覚えていないという人も、無理に見直さなくても大丈夫です。

主演のトム・クルーズ自身が「このシリーズは全作品にまたがるものなので、観客はイーサンの初期に立ち戻り、彼を違う形で理解することになる」と語っていることもその根拠です。
今回のイーサンは「今までの彼らしさ」がありながらも、「これまでとは異なる一面」を見せるため、彼に思い入れがあればあるほど、時には不安になり、時には心から応援したくなり、時には後述する物語およびトム・クルーズ自身に漂う哀愁をも、より良い意味で感じられると思います。
2:『トップガン:マーヴェリック』との共通点も
トム・クルーズ主演・制作の伝説的アクション映画の最新作ということで、多くの人が連想するのは『トップガン:マーヴェリック』でしょう。同作と今回の『ミッション:インポッシブル』には、そのほかにも符合するところがあります。実際に5作目の『ローグ・ネイション』から8作目である本作までの監督を務めたクリストファー・マッカリーは、『トップガン マーヴェリック』でも脚本と制作に関わっており、「私たちは、『トップガン マーヴェリック』で学んだ全てのことを、この映画に取り入れました。どちらの映画においても、私たちは、観客に観たことがないものを提供したかったのです」とも語っています。
その「観たことがないもの」というのは、言わずもがな、後述するアクションのことでしょう。そして、「学んだことを取り入れたこと」の1つに「1作目のキャラクターが長い時を経て再登場する」場面もあると思えます。
1作目で任務の監督役だった「キトリッジ(ヘンリー・ツェニー)」が、前作『デッド・レコニング』から引き続き登場し、主人公への対応はかなり異なるものの、『トップガン マーヴェリック』の「アイスマン(ヴァル・キルマー)」に重なる印象もありました。
さらに、1作目から最新作まで長い時間が流れたことで、『トップガン』の主人公ピート・ミッチェルにも、『ミッション・インポッシブル』の主人公イーサン・ハントにも、演じているトム・クルーズ自身が年を重ねたことも相まって、やはり「あの頃と変わらないようで」「でも少し違った魅力」を感じられるようになっていると思うのです。

3:意外に「しっとり」した最終作? 「狂気」がトム・クルーズ自身に重なる
タイトルに『ファイナル』と銘打たれており、(おそらくは)シリーズの最終作でもあるため、「ド派手なフィナーレ」を期待する人もいるでしょう。しかしながら、本作の印象は全体的には「しっとり」とした、どこか「哀愁」を感じさせる内容でもあります。

さらに、予告編でも示唆されているように、今回の物語は「選択と結果」を巡る物語でもあります。今回のイーサンはタイトルコールの直前にはっきりと「危うさ」、いや「狂気」をも見せており、その様はコメディーとしてクスッと笑えたりもします。
それと同時に、彼の選択が常に正しいとは限らない——それでも、彼の中には仲間を心から思う気持ちが確かにある。そんな矛盾や複雑さも内包しています。世界もイーサン自身も「窮地に追い込まれる」物語は、哀愁を超えて「悲壮感」すら抱かせるのです。

さらに、6作目『フォールアウト』ではCIA長官だったエリカ・スローン(アンジェラ・バセット)が、今回はアメリカ大統領になっており、イーサンだけでなく彼女にも大きな選択が迫られることも重要です。

4:「寂しさ」も織り込み済みの作風かもしれない
そうした作風は賛否が上がる理由ですし、特にアクション映画としての「痛快さ」を求める人にとっては、期待とややズレてしまうのかもしれません。特に初めの1時間半は「過去の出来事」や「絶望的な状況」に重きを置いた展開が多く、その「説明」が正直に言って、よくも悪くも「長い」印象がありました。個人的には、荒唐無稽なガジェットが登場し、エンターテインメント性がとても高かった4作目『ゴースト・プロトコル』が最も好みで、単体で楽しめる作品として勧めやすいというのも事実でした(『ゴースト・プロトコル』はシリーズ初見の人にもおすすめです)。対して、今回の『ファイナル・レコニング』は「過去作ありき」で、少し敷居の高さを感じたのも正直なところです。
しかし、見終えれば「『ファイナル』がこの作風で良かった」「この長さもやはり必要だった」と振り返ることができました。その理由の1つが、これまでアクション映画のスターとして大活躍をしてきたトム・クルーズが(今回でなくても)いずれは引退するという、寂しくはあるけれど、紛れもない事実と重なることです。
今回はイーサンとの「(いったんの)お別れ」ともいえるため、作品に漂う「寂しさ」は、必然性があるもの。見終わってみれば、前半の「振り返り」は、その寂しさをさらに際立たせるための、必然的な構成だったと思えます。
それでいて、6作目の『フォールアウト』でも特に印象的だった“トム走り”を筆頭に、トム・クルーズの「観客を全力で楽しませる」気概は、今回も全力フルスロットル。還暦を超えてなお、文字通りに「全力疾走」するトム・クルーズおよび、イーサンの“最後の奮闘”は、やはりスクリーンで見届けてほしいです。
なお、トム・クルーズは現在『トップガン』シリーズ第3弾が進行中であることを明かしているほか、アメリカで行われた『ファイナル・レコニング』のプレミアイベントでは「100歳になるまで映画を作り続けるかも」ともコメント。今回がイーサンとのお別れだとしても、これからもトムの活躍を追えるという喜びは、まだまだ続きそうです。
5:トム・クルーズのアクションはやっぱり「見たことがない」
長々とシリーズの立ち位置や作風について語ってきましたが、それでもやはり本作はアクション映画。「トム・クルーズ……あなたやっぱりすごすぎるよ!」となれること、これまでたくさんの映画作品が作られてなお、「見たことがないものが見られる」のが一番の魅力でしょう。今回の大きな見せ場は2つ。そのうちの1つが「潜水艦内」の大掛かりなアクション。閉塞的かつ「水浸し」な場所での恐怖感や没入観は、「劇場でこそ体感できる」ものでした。

さらに、ビジュアルとして大きく打ち出されている「飛行機上」のアクションの撮影には、なんと4カ月半がかかったそう。その前にも、トム・クルーズ自身やスタッフがイメージを膨らませる時期、リハーサル、トレーニング、テストをした期間も設けられたが報われる——まさにマッカリー監督の言う「観客が見たことがないもの」でした。

今回はアクションシーンにおいて、イーサンがほとんどしゃべらないことも印象的。それこそ言葉ではなく画で語る映画の原初的な喜びに立ち会っているようでもありましたし、トム・クルーズ自身が文字通りに、その身を持って観客に最大限のサービスを提供してくれることに感動がありました。
それらも含めて、本作は「劇場でリアルタイムで見て良かった」「トム、ありがとう」と、やはり感慨や感謝でいっぱいになる内容だと思うのです。
おばあちゃん版ミッション・インポッシブルもぜひチェックを!
最後に、本作を見た人にぜひおすすめしたい映画も紹介しましょう。それは、6月6日公開『テルマがゆく!93歳のやさしいリベンジ』。主演は『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』のジューン・スキッブです。詐欺にあったおばあちゃん自らが、犯人への復讐を目指し冒険に出るという内容。『ビーキーパー』であればジェイソン・ステイサムが「無双」するところですが、本作は93歳の女性による危なっかしい復讐劇。アクシデントも相まってハラハラドキドキしつつ、彼女のことが大好きな孫の青年や家族との関係にもほっこりする、大笑いして優しい気持ちになれる、誰にでもおすすめできるコメディードラマになっていました。
劇中でおばあちゃんが、はっきりとトム・クルーズおよび『ミッション・インポッシブル』に背中を押されていることも重要ですし、ジョシュ・マーゴリン監督による実体験を基にしていることも特徴です。数年前、当時103歳だった祖母テルマさんが詐欺の電話にだまされそうになり、監督も“保釈金”として何千ドルも振り込みそうになったのだとか。
トム・クルーズへのリスペクトにあふれ、何よりアクション映画としても面白い『テルマがゆく!』も、『ファイナル・レコニング』と併せてご覧になってください。
この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「マグミクス」「NiEW(ニュー)」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。
(文:ヒナタカ)