メンバーの“契約問題”と完全体カムバックへの“期待と葛藤”…課題を抱える「EXO」の現在地

2025年5月22日(木)21時45分 All About

K-POP業界に多大な影響を与えてきた「EXO」。最年少メンバー、セフンさんの除隊を今年9月に控え、完全体でのカムバックも期待されています。ただし、メンバーの契約問題など課題を抱えているのも事実です。EXOの“今”と“これから”について語り合います。※サムネイル写真:アフロ

M世代の韓国エンタメウオッチャー・K-POPゆりこと、K-POPファンのZ世代編集者が韓国のアイドル事情や気になったニュースについてゆるっと本音で語る【K-POPゆりこの沼る韓国エンタメトーク】。韓国エンタメ初心者からベテランまで、これを読めば韓国エンタメに“沼る”こと間違いなし!

今回のテーマはEXO! 彼らが直面している現実、メンバーの契約問題、そして完全体カムバックへの道のりについて語ります。それぞれの思いを抱えながらも“EXO”として歩み続けようとするメンバーたちの姿。課題と葛藤の中で彼らとファンが見据える未来とは?

EXOの抱える今の課題


編集担当・矢野(以下、矢野):これまでK-POP業界にさまざまな影響を与えてきたEXO。彼らの「今」と「これから」のことが気になります。まず、今はどんな状況なのでしょうか?
K-POPゆりこ(以下、ゆりこ):最年少のセフンさんが入隊中で、予定通りにいけば今年9月中に召集解除となります。その後すぐカムバック!を期待したいところですが、別の懸念点もあります。
矢野:メンバーの契約問題ですよね。前回も話題に上がりましたが、シウミンさんのソロ活動がSMエンターテインメント(以下、SM)によって妨害されたというニュースも出ていました。
ゆりこ:シウミンさんのソロ活動を古巣SMが邪魔したのでは?という話でしたね。KBSの『MUSIC BANK』という日本の『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)のような有名音楽番組があるのですが、同タイミングにSMのアーティストが出演するからという理由で、番組側がシウミンさんの出演を拒んだとか何とか。KBS側は「出演について協議する過程で議論の方向性や期待に相違があったようだ」と発表していますが、何だか歯切れが悪いですね(苦笑)。非公式で“そういった話”があった可能性は否めません。直接的な言葉はなくても“忖度(そんたく)”とかね……邪推ですけれども。
矢野:そして残念ながら、記念すべきデビュー13周年のオンラインイベント「EXO:13IRTHDAY HOME PARTY」にチェンさん、ベクヒョンさん、シウミンさんの姿はありませんでした。
ゆりこ:ファンとしては「残念」の一言で片付けられませんでした。ベクヒョンさんたちにスケジュール共有やオファーがされていなかったという話も出ています。そろって出演してほしかったけれど、その状況で「出てほしかった」と言うのは酷だというのも理解しています。SNS上でもエリ(EXO-Lの略称、EXOファン)たちそれぞれの複雑な気持ちがつづられていて、胸が苦しかったです。捉え方は人それぞれで、どの視点や思いも否定できるものではありませんでした。だから今回はEXOの抱える今の課題についても目を逸らさずに考えてみたいなと思いました。
矢野:こんなふうに状況がこじれてしまった背景には何があるのでしょうか?

「専属契約の解約を通知」メンバーの抱える契約問題

ゆりこ:まず2022年の再契約までさかのぼります。その際の条件を巡り、メンバーのシウミンさん、ベクヒョンさん、チェンさんがSMに対し専属契約の解約を通知。結局SMとは再契約したままなのですが、ソロ活動はINB100という新会社を設立し、そちらでやっていくことになったのです。
矢野:たしかD.O.さんも同じく、ソロ活動のために新しい会社を作って独立しましたよね。
ゆりこ:はい。D.O.さんもマネージャーと共に「Company SooSoo」という新会社を設立しましたが、今のところ古巣とも円満にソロ活動とグループ活動を両立しています。だから「EXO:13IRTHDAY HOME PARTY」にも参加していました。でもCBX(シウミンさん、ベクヒョンさん、チェンさん)の場合はそうはいかなかった。以前からSMがCBXの独立とソロ活動に際して出した「売上の10%を支払うこと」という条件に対し反発しており、こう着状態です。他に精算金問題などもあり、争点は1つではないんです。
矢野:利益ではなく「売上」という部分が結構エグいですね。経費などを差し引く前の金額からということでしょう。
ゆりこ:双方の言い分はあると思います。SMとしては長年培った「EXO」ブランドをメンバーに使わせる対価として考えているのでしょう。もっと大きいのは「タンパリング」、つまり、引き抜き行為に対する懸念です。独立前からCBXに対してONE HUNDREDという新興エンタメ企業が声を掛けている疑惑が取り沙汰されました。ベクヒョンさんが立ち上げたという新会社INB100は、ふたを開けてみるとONE HUNDREDの傘下企業となっておりまして……。
矢野:SMとしては、長年育ててマネジメントしてきたグループを新興企業に引き抜かれること、つまりタンパリングを安易に許したくないでしょうね。一方でメンバー側にも積もり積もった不満があったのではないでしょうか。
ゆりこ:これはあくまで私の意見ですが、EXOはこれまでの活躍や貢献度に比べて、SMになおざりにされてきた部分も感じなくはないです。もちろん、メンバーの契約内容の詳細や対価の金額は分かりません。これはメンバーの過失ではありませんが、大量脱退や安定しないメンバー構成、恋愛スキャンダルなど、マネジメントとして頭を抱える部分もあったかもしれない。一方で、いちファンの心情として「もう少しEXOを大事にしてもらえませんか?(涙)」と思うことは多々ありましたよ。SMに多大なる貢献をした立役者なのだけどなあと。
矢野:ゆりこさんが、EXOがデビューしてからのK-POPは「冬の時代」だったと言っていましたよね。SMのレジェンド級の先輩グループたちが諸事情で活動を休止し勢いが落ち着き始め、政治的な問題から日本や中国市場では追い風とは言えない状況でした。そんな苦しい時期を支えたEXO。もしかしたら会社に対して思うことはあるのかもしれません。そんな不満を抱える中でCBXが手を組んだONE HUNDREDは優良企業なのでしょうか?
ゆりこ:今の時点では、なんとも言い難いところですね。ONE HUNDREDの創業者の1人、MCモンさんはこれまでも度々トラブルを起こしており、韓国内ではいわくつきの人物ではあります。彼の個人的な問題と、CBXのマネジメント問題についてはきちんと切り離して考えなくてはいけませんが……。私もさらに調べてみたい部分でもありますし、ご要望があれば別の機会にお話しします。
矢野:ISTエンターテインメントとの契約を終了したTHE BOYZもONE HUNDREDに移籍しましたし、SHINeeのテミンさんが所属しているBig Planet MadeエンターテインメントもONE HUNDREDの傘下の会社ですよね。大手事務所で活躍していた人たちが多く所属しているイメージです。そんな中で、それぞれのメンバーはEXOとしてのカムバックについて、どう考えているのでしょう?

完全体カムバックへの期待と葛藤

ゆりこ:今年2月にCBXのファンミーティングに行ってきましたが、3人ともお客さんを「EXO-L」「エリ」って呼び掛けていました。つまり目の前にいるのは「EXOファン」であることを分かっているし、自分たちも「EXOメンバー」であるということ。古巣に対し改善してほしい、譲れない部分はあれど、EXOを辞める気はないのではないでしょうか。そしてリーダーのスホさんは至る所で「EXOはカムバックをする」と言ってくれています。さすがリーダー、ファンにとっても心の支え(涙)。チャニョルさんと今年1月の「SMTOWN LIVE 2025 in SEOUL」に出演した際のインタビュー動画でも「セフンとカイ(現在召集解除済み)が戻ったら新しいEXOの姿をお見せします」「ファンミーティングもコンサートもしますよ」って。D.O.さんもインタビューの中で「完全体の活動については心配しないでください。今年中(のカムバック)は難しくとも今年から準備して、できる限り早く出したい」と明言してくれています。最近ソロでカムバックしたKAIさんもグループ活動を期待させてくれる発言をしています。ただ、もうここまでくると「なるようになる」「信じて待つしか選択肢がない」の域。
矢野:できないならできない、するならすると、はっきりとした答えを知りたくなるのは人間の性です。ただ、それがしたくてもできない“大人の事情”があることをファンは分かっているから、見守るしかないわけですよね。そんな中、メンバー本人たちがグループ活動を諦めていないと名言してくれれば、ファンの心は救われます。いつかグループとして帰ってくるその日を楽しみに待ちたい。
ゆりこ:そして、これは淡い期待も込めて、レイさんのお話もしておきたいです。前回のメンバー紹介ではお話ししませんでしたが、唯一の中国人メンバーであるレイさんは正式には脱退を発表していないのです。2017年以降は中国での活動が中心になりましたし、曲も『Don’t fight the feeling』を最後に参加していません。2022年にSMとの契約も終了していますが、その発表コメントにもグループ脱退の文字はなく、最後は「EXO サランハジャ(愛そう)!」というグループのスローガンで締めくくっています。矢野:ネット上で調べてみると、SMとの契約終了の時点で、「実質的には脱退している」という認識の人もいるようです。ファンによっても捉え方は違いそうですね。
ゆりこ:私の周りでも意見が分かれるところです。今年2月に行われたレイさんのソロコンサートでは『Growl(ウルロン)』『CALL ME BABY』『Baby, Don't Cry』を披露していますし、チャニョルさんのコンサートにはセフンさんと一緒に見に来ていました。それに2023年のクリスマス時期に再ブームとなった『The First Snow』の“初雪チャレンジ”も、最初にダンス動画をSNSに投稿したメンバーはレイさんです。私は今も彼はEXOメンバーだと思っていますし、いつかふっとグループ活動に参加する日があるんじゃないかってひそかに期待しています。 矢野:現在SMとは契約していないメンバー、葛藤中のメンバーも含めて全員が集まる日が来たら感動もひとしおですよね?
ゆりこ:狂喜乱舞しますね。想像するだけで涙が出そう。メンバーそれぞれに抱えるものや古巣に対する怒りや不満はあれども、EXOに対する思い入れは強いと信じています。一方でソロ活動を邪魔されたり、周年イベントのオファーが来なかったり……ということが事実であるなら、該当メンバーの負った傷は相当深いでしょう。その部分のケアは必要だと思います。「みんなそろったグループ活動が見たい」のはファンとしての本音だけれど、誰かが精神的負担を抱え、納得できぬまま無理やり参加させられることは望んでいないです。SUPER JUNIOR、SHINee、そして最近Red Velvetの一部メンバーもSMとの専属契約を終了しました。でもグループには残り続ける。こういった流れは続くと思います。
矢野:今や、誰かが事務所を出たら即脱退、または解散という時代ではなくなってきているのを感じます。世の会社員だって、そうかもしれません。円満退社が前提となりますが、辞めた会社ともゆるくつながって、個人事業主としてお仕事をもらったり、プロジェクトに参加し続けたりする人も増えています。
ゆりこ:SUPER JUNIORのようにメンバーが独立しても、以前とさほど変わらずに活動できている例もあるので、何とも言い難いのですが……SM側のシステムをアップデートすべき段階に来ていると感じます。長年貢献してきたベテランアイドルのキャリアをどう考えるのか、どんな道を提示するのか。それは老舗芸能事務所としての責任でもある。
矢野:EXOとSMだけではなく、ここ最近アーティストと事務所が契約問題でもめるケースが目立っています。K-POPが発展し1つの大きな産業となった今、転換点を迎えているのかもしれません。アーティストも事務所も、そしてファンも三方よしの活動スタイルが見つかるといいのですが……。
ゆりこ:そして、別視点のめちゃくちゃシビアな話。K-POP業界は生き馬の目を抜くような世界ですよね。最近「뭉치면 살고 흩어지면 죽는다(モンチミョン サルゴ フトジミョン チュンヌンダ/団結すれば生き残れるが、バラバラになると死ぬ)」という韓国のことわざを教わったのですが、その通りになるケースもあります。EXOメンバーは実力派ぞろいだからソロになっても強い。しかしながら、やはりみんなが集まったときの存在感や影響力は桁違いです。経済的インパクトだって大きいでしょう。
矢野:EXOはメンバーの脱退もあり、入隊の時期もあり、グループ全体の活動が止まりがちゆえ“少し前に大活躍していた”というイメージがあるかもしれません。でもまだまだこれからが見せ場だと。
ゆりこ:“昔はすごかった”というイメージ、ファンとしてはかなり悔しいので、これから“帰還した皇帝の姿”を見せてほしいです。K-POPグループには存続をかけて目先の数字や順位にこだわらざるを得ない時期があります。しかしEXOはもうその段階を卒業しているんじゃないかな。末長く名曲を出し続けて、新しいカルチャーを作り続けていくネクストステージに立っていると思います。
矢野:酸いも甘いも経験し成熟してきたからこその魅力が見られるのではないかと期待しています。
ゆりこ:最新、といっても2023年発売のアルバムですが『EXIST』はEXO史上最高傑作と言えるほどの名盤ですよ。全然衰えてなんかいなかったし、私は『Growl(ウルロン)』が入っている伝説の1stリパッケージアルバム『XOXO』よりも聞き込みました。だからまだ過去形で語るグループではないと胸を張って言いたいです。
矢野:“すごかった”ではなく、今もこれからも現在進行形で“すごい”彼らの活躍を心から期待しています。EXO サランハジャ!
【ゆるっとトークをお届けしたのは……】
K-POPゆりこ:韓国芸能&カルチャーについて書いたり喋ったりする「韓国エンタメウォッチャー」。2000年代からK-POPを愛聴するM世代。編集者として働いた後、ソウル生活を経験。
編集担当・矢野:All Aboutでエンタメやメンズファッション記事を担当するZ世代の若手編集者。物心ついた頃からK-POPリスナーなONCE(TWICEファン)&MOA(TOMORROW X TOGETHERファン)。
(文:K-POP ゆりこ)

All About

「メンバー」をもっと詳しく

「メンバー」のニュース

「メンバー」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ