京本大我がNYのブロードウェイで学んだこと「信じられない精神力」

2025年5月23日(金)14時0分 マイナビニュース


アメリカ・ニューヨークのマンハッタンにあるブロードウェイは、41もの劇場がひしめき合う、演劇とミュージカルの聖地。ここで毎年行われるのが、ブロードウェイの優れた作品や俳優・クリエイターなどに贈られる、米演劇界でもっとも栄誉あるトニー賞の授賞式だ。今年も「生中継! 第78回トニー賞授賞式」が、WOWOWにて6月9日(8;00〜)に独占放送・配信される。番組のナビゲーターを務めるのは、今年で5度目のタッグとなる、井上芳雄と宮澤エマ。そしてスペシャル・サポーターを昨年に続き、京本大我(SixTONES)が担当する。
二十歳の時にミュージカル『エリザベート』にルドルフ役で出演。2021年にはディズニーの大ヒットミュージカル『ニュージーズ』で主演を務め、昨年は偉大な作曲家の生涯を描いた作品『モーツァルト!』に主演するなど、人気グループ「SixTONES」の一員として活動しながら、10年に渡ってミュージカルに挑戦してきた京本大我。今秋には、2012年のトニー賞でミュージカル作品賞など8部門を受賞した『Once』の日本公演も控える。今年4月、WOWOWの特別番組「京本大我 ハロー・トニー! in NY」のロケでトニー賞&ミュージカルの魅力を新たに発見する旅に出た京本に、スペシャル・サポーターを務めるにあたっての意気込みや、「表現すること」について語ってもらった。
——昨年に続き「トニー賞授賞式」番組でスペシャル・サポーターを務める心境は?
2年連続で携わらせていただき本当に光栄に思っています。今年はNYのブロードウェイまで事前取材に行かせていただき、授賞式会場であるラジオシティ・ミュージックホールを見学したり、ノミネート作品を観劇したりもしたので、より一層身近に感じられますし、実際に自分の目で観たり耳で聴いたりして、舞台裏についても深く知ることができれたからこそ、さらにリスペクトも持ちながら授賞式と向き合える気がしています。
○日本と比べて遥かに身近なミュージカル
——京本さんにとって今回が初のNYだったそうですね。現地の空気を肌で感じてみていかがでしたか?
ミュージカルをやらせてもらっている身からすると、ブロードウェイは憧れの聖地でもあるので、「やっと来られた!」という感じがして本当に嬉しかったです。街中のどこを見渡してもミュージカルの看板が溢れている光景に興奮しましたし、タイムズスクエアのど真ん中に全ての劇場のチケットが購入できるチケットブースがドーンとあったりして。「劇場でミュージカルを観劇する」という行為自体が日本と比べて遥かに身近なんですよね。日本の場合は生の舞台を観に劇場に行くとなるとどうしても肩に力が入ってしまいがちですが、向こうでは映画を観るのと同じくらいのラフな感覚でみんな劇場に来ていますし、上演中も歓声が飛び交うコンサートに近い賑やかな観劇スタイルで。日本だと複数回行われることが一般的なカーテンコールも、現地では基本的には1回のみで。終わったらみんなサッと席を立って外に出て行くんですよね。
——ブロードウェイでは昨年トニー賞でミュージカル作品賞など4部門を受賞した『アウトサイダー』を始め、本年度作品賞を含む6ノミネートされた『フロイド・コリンズ』や、2ノミネートされた『SMASH』などをご覧になったそうですね。ぜひ感想をお聞かせいただければと!
『SMASH』は、マリリン・モンローの架空のミュージカル『ボムシェル』の制作の裏話を描いた作品で、コメディー要素がとても強い作品なんです。スピルバーグ監督が製作総指揮を務めたTVドラマ版を事前に観たのですが、今回観たミュージカル版の方が、シナリオがさらにブラッシュアップされてる感じがしました。マリリン・モンローに扮する役者さんのセクシーさや魅せるパワーも感じられましたね。1925年に起きた洞窟探検家の実話に基づく『フロイド・コリンズ』は『ニュージーズ』のジャックを演じたジェレミー・ジョーダンが主演ということもあって、親近感を持ちながら拝見したんですが、『SMASH』やディズニー作品とはまた打って変わって、ちょっと大人向けの作品という印象があって。事故で穴にはまって出られなくなってしまった探検家の話を舞台化した作品なんですが、シンプルながらもすごく凝った表現方法が採用されていて、ステージングや演出もとても勉強になりました。楽曲も難易度が高い曲ばかりで、レベルの高さを感じましたね。
——トニー賞の授賞式はショウアップされていて、アカデミー賞ともまた違った雰囲気があります。昨年スペシャル・サポーターを務める中で特に印象的だったことは?
リアルタイムでトニー賞の生中継を見たのも昨年が初めてだったのですが、有名な役者さんがたくさん出て来て「こんなに贅沢な時間があるんだ!」と驚かされました。ノミネートされている素敵な話題作のパフォーマンスを一挙に見られるという状況も本当にすごいなって思いましたし、何より授賞式ではそれぞれの役者さんがお互いに讃え合い、作品や一緒に頑張ってきたキャストやスタッフに感謝して涙したりする姿が印象的でした。
——今回の経験を通じて京本さんが学んだことは?
ブロードウェイの演者の皆さんが、苦労や大変さを微塵も感じさせずに舞台上で完璧なパフォーマンスをされている姿を目の当たりにして、コンディション維持も含めた彼らのスタミナに驚かされました。決してこなしているわけではないのに、ものすごく軽やかなんです。お客さんの前に立つという意味では同じプロの役者でもありますし、僕も見習わないといけないなって。今回、以前「ディズニー・ブロードウェイ・ヒッツ」で共演した、『アラジン』にジーニー役で出演されているマイケル・ジェームズ・スコットさんと、『ライオンキング』に出演されているキシー・シモンズさんにもインタビューさせていただいたのですが、ブロードウェイって、日本の公演のように最初から期間が決まっているわけではなくて、ヒットすれば何年でもロングランするんです。キシーさんは9年間も『ライオンキング』のナラ役を演じ続けていたるのかと思うとリスペクトの気持ちがさらに増しました。信じられない精神力ですよね。ニューヨークでは、ミュージカル俳優を志す若者たちが通う演劇スクールを見学させていただく機会もあったのですが、僕にとってはそれもすごく貴重な経験になりました。これまで『ニュージーズ』などトニー賞受賞作品に出演したこともありますが、今後出演する作品に対する向き合い方も、確実に変わってくるだろうなと思います。
○自分自身と向き合うことからしか生まれない
——「僕の中で、20代は挑戦でした」「30歳になって、挑戦だけではダメだと感じています」「技術だけでなく、観客に何かを感じてもらえる役者さんにならないといけない」とコメントされていましたが、京本さんがそう感じるようになった理由とは?
20代の頃は「挑戦」をテーマに掲げてトライアンドエラーを繰り返す日々でしたが、30代に入るとより作品に対する責任感も芽生えますし、若さだけではない「役者としての魅力」をしっかりと確立していかなければいけないフェーズに入ると思っているんです。そういった意味でも今回こうしてミュージカルの本場でさまざまな体験をさせてもらえたことが僕にとっては財産になりますし、『Once』の本番に向けて稽古を重ねていく中で、今回の経験が活きたことを実感できるんじゃないかと思っています。
——では、改めて今年の『生中継!第78回トニー賞授賞式』に向けてひと言!
世の中には素晴らしいミュージカルが山ほどあることをいち早く伝えられる絶好の機会になると思いますし、『ニュージーズ』のようにトニー賞で話題になった作品が数年後日本で上演されるケースもあるので、ぜひ注目して観ていただけたら嬉しいです。いま日本の皆さんがそれほど気軽に海外に行けない状況だとしたら、WOWOWでトニー賞授賞式を見ていただくことがミュージカルを一番身近に感じられる時間になると思いますし、僕が自分の目と耳で素直に感じ取ったリアルな感動を、視聴者の皆さんにも共有したいです。僕自身は演者でもありながら、ミュージカルが本職というわけではないので、より皆さんの気持ちに寄り添えるポジションで番組に携わらせていただけるのではないかと思っています。それこそ僕にとっての去年の『アウトサイダー』同様、もし今年のトニー賞で気になる作品と出合えたら、思い切って現地まで足を運んでブロードウェイまで観に行かれるというのも、素敵なことだと思いますね。
——京本さんは昨年9月に、クリイティブ・プロジェクト「ART-PUT」を立ち上げられ、ご自身が作詞・作曲を手掛けた楽曲が収録された初のCDアルバム「PROT.30」も大いに話題になっています。そんな京本さんにとって、「ミュージカルを観ること」はどのような影響を及ぼし、ご自身の「表現」にどう関係していると思われますか?
物理的に揺れたんじゃないかと思うくらい心が大きく動かされたり、鳥肌が立ったりするたび、僕は「ミュージカルを観てよかった」って思えるんですよね。プライベートで何か悩みを抱えていたり、仕事に行き詰まりを感じていたりしても、生の舞台を観ることを通じて自分の中の歯車がもう一度動き出して、自分自身と向き合うためのきっかけを与えてくれる。僕にとってミュージカルは活力の源でもある気がします。
僕は「表現」というものは、意識する・しないに関わらず、自分自身と向き合うことからしか生まれないものだと思っています。エンタメの世界は華やかではありますが、演じる側が何かしらの常にダメージを負いながら生み出しているものでもあって。ある程度のリスクを負ったり魂を削ったりしながら、がむしゃらに、ひたむきに取り組まない限りお客さんには伝わらない。逆に演者が負ったダメージを回復させてくれるのも、それを観たり聴いたりしてくださる方々の力だったりもするんですよね。「表現」というものには、そういった美しさもあるんじゃないかと思いますね。

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