周りから「まだ脱いでるの?」「そういう撮り方はやめて」と…海外から取材殺到した三つ子母のモデル・紗世(SAYO)が明かす撮影秘話
2025年5月24日(土)12時0分 文春オンライン
〈 60キロ柔道少女→“世界一のグラビア雑誌”の表紙に…モデル・紗世(SAYO)が明かす、デビューのきっかけ「彼を驚かしてみようと…」 〉から続く
Instagramでのセクシーな投稿をきっかけにアメリカの一流雑誌『PLAYBOY』の表紙を飾り、「謎の日本人女性」として話題になったモデルの紗世(SAYO)さん。世界中の有名雑誌に次々と掲載されるも、国内メディアでの露出はほとんどなくベールに包まれていた紗世さんは今、三つ子を含む4人の子育てに奮闘していた。
そんな紗世さんに、過去の下積み時代から三つ子育児のリアルなどについて聞いた。(全3回の2回目/ 続き を読む)

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自分の世界観を表現する場がInstagramだった
——紗世さんのInstagramの写真はどれもゴージャスな世界観ですよね。
紗世さん(以降、紗世)仕事でよく求められるイメージを纏っているだけで、素の自分とはだいぶ違います。
——周りの人も紗世さんとは気づかないですか?
紗世 プライベートでお会いする方には、このお仕事のことは特にお話ししていないんです。ですので、おそらく気づかれていないと思います。
——2019年には『PLAYBOY』誌の表紙を飾り、「謎の日本人女性」として一躍話題になりました。その直前にはグラビア引退を考えていたそうですが、この間に何があったのでしょうか?
紗世 当時は周りから「グラビアはやめてほしい」と言われることが多く、次第に自分でもその活動を公にすることを控えるようになっていったんです。
そうした経緯もあって、30歳を迎える少し前のタイミングで、自分の好きな世界観を思いきり表現し、それを一区切りにしようと決意しました。
そのきっかけとなったのが、Instagramでした。
——日本のグラビアでは、紗世さんの好きな世界観を発揮できる場がなかった?
紗世 日本のグラビアだと表現の幅が狭いところもありますし、大前提として、男性のための、男性目線での表現なんですよね。
なので、自分で撮影する時には、ひとつのストーリーみたいなものを想像しながら、誰かと一緒にいるような感じでワイングラスを一つ置いてみたり、本当に楽しみながら、衣装一つにしても、髪の毛1本の流し方にしても、全部自分好みに仕上げた“趣味”として写真を撮り始めたんです。
——それがInstagramのポートレート写真だったんですね。セクシーでありつつ、明るく健康的ですよね。
紗世 私自身のがっしりとした骨格や体型を活かせるよう、似たような体型の海外モデルのイメージを参考にしながら、撮影を進めていきました。衣装もすべて、信頼するスタイリストさんとカメラマンさんに相談しながら、他の方と重ならない、自分だけの世界観を少しずつ形にしていったんです。
そうして引退作品として写真を投稿していくうちに、ほどなくして日本の『プレイボーイ』からお声がけをいただき、撮り下ろしでグラビアを撮影することになりました。
『PLAYBOY』誌の表紙を飾った「謎の日本人女性」に
——グラビアの花形雑誌から声がかかった時の心境は?
紗世 日本の『プレイボーイ』は、グラビアモデルにとっては誰もが一度は憧れる、まさに登竜門のような存在だと思います。そんな、ずっと夢のように思っていた雑誌に、自分が掲載される日が来るなんて正直、想像もしていませんでした。
しかも30歳を迎える頃に、若いモデルさんたちがたくさん活躍されている誌面にご一緒させていただくことになり、そわそわした気持ちで撮影に臨んだ日のことは、今でも鮮明に覚えています。
ですから、そのすぐ後にアメリカの『PLAYBOY』からもお声がけいただいたときには、本当に信じられない気持ちで。驚きと戸惑いが入り混じっていたのを、今でもよく覚えています。
——嘘じゃないかな、みたいな。
紗世 「えっ、私でいいんですか?」というのが正直な気持ちでした。雑誌にはブロンドでセクシーな方々が数多く登場していて、その中に自分が加わるなんて……。本当に信じられない思いでした。
その頃から、英語での発信を始めたこともあって、Instagramを通じて世界中からお仕事をいただくようになりました。
——紗世さん以外にも日本人の「プレイメイト」(『PLAYBOY』で活躍するモデル)はいる?
紗世 お会いしたことはありませんが、3人ぐらいいらっしゃったと思います。
——海外で活躍する日本人のグラビアモデルはあまり多くない?
紗世 そうですね。私自身、撮影の現場で日本の方にお会いしたことはこれまでありませんし、アジアの方では中国や韓国のモデルの方を時折見かけるくらいです。
ただ一方で、「日本の文化はとても素晴らしい」と感じてくださる方は多く、「日本らしさを表現した写真を撮ってほしい」とリクエストをいただくこともあります。実際、『Harper’s BAZAAR』の撮影では、振袖を着用させていただいたこともありました。
——ベトナム版『BAZAAR』や『GQ』のサウスアフリカ版など、本当にワールドワイドに活躍されていますよね。
紗世 ある現場で、「あなたが日本人であるというだけで、すでに十分にユニークなんだよ」と声をかけていただいたことがありました。
その言葉に、はっとさせられました。“日本人であること”そのものが価値として受け入れられる場所があるのだと。
海外と日本とのグラビアにおける価値観の違い
——海外と日本とのグラビアにおける価値観の違いや、撮影で求められるものの違いはどんなところ?
紗世 日本ではどうしても「男性向けのコンテンツ」という印象が強くて、「男性の目にどう映るか」という視点が、グラビアの中心にあるように感じます。
一方で海外では、モデル自身の内面や美意識、表現そのものを大切にしてくださる現場が多く、撮影そのものを“女性として楽しむ”といった場所でした。
そもそも「グラビア」という言葉自体が、海外ではあまり一般的ではなくて。
——他の呼び名がある?
紗世 海外では、水着市場そのものが非常に大きいこともあり、「スイムウェアモデル」というジャンルがしっかりと確立されています。
スイムウェアモデル専門の有名な雑誌も存在していて、そこでは年齢や体型にとらわれることなく、実に多様な方々がモデルとして登場しています。
——日本のグラビアは男性向けの性的なイメージが強いですが、海外では全然違うんですね。
紗世 全然違いました。
日本での感覚のまま撮影に臨んだ際、「使える写真がほとんどないから、そういう撮り方はやめてほしい」とはっきり言われたことがありました。つまり、水着を着ていても“セクシーさ”を前面に出すことは求められていなかったんですね。
表情の作り方や、雰囲気の演出も含めて、日本ではそれが「良し」とされるスタイルだったので、当時は本当に驚きました。
つい先日、海外版の『Forbes』の表紙撮影があったのですが、その際も「肌の露出は絶対にしないで」と、何度も念を押されました。
——どんな写真が選ばれやすいんですか?
紗世 日本のグラビア写真は、いわゆるバストアップや肌にぐっと寄ったカットなど、“女の子”そのものにフォーカスした写真が多い印象があります。
一方で海外の場合は、モデルが風景の一部のようにとらえられていて、たとえばプールサイドの写真なら、プール全体がしっかり写っていて、私はその景色の中に自然に溶け込んでいる、そんな構図が多いんです。
その人自身だけを主役にするのではなく、写真を通してひとつの世界観やライフスタイルのイメージを表現しているのだと感じます。
今まで反対していた母から「おめでとう」と言われ…
——海外の舞台で活躍するようになって、紗世さん自身もグラビアに対する考え方が変わった?
紗世 はい。日本で活動していた頃は、母から「お願いだから、そういう仕事はやめてほしい」と言われることもありましたし、自分の中にもどこか後ろめたさのような感情があって、心から誇りを持って取り組めていたとは言えませんでした。
でも、海外の雑誌で表紙を飾らせていただくようになったある日、母が初めて「おめでとう」と言ってくれたんです。その一言が本当に嬉しくて……。
その瞬間に、ようやく自分の仕事に対して自信を持つことができたような気がします。
——日本では結婚・出産するとグラビアアイドルを続けにくい雰囲気がありますが、海外ではどうですか。
紗世 海外のモデルの方々には、お子さんを連れて、ナチュラルに肌を見せているようなスタイルのお母さんもたくさんいらっしゃいます。ですので、「妻になったから」「母になったから」といってグラビアを続けられないという風潮はあまり感じませんね。
ただ、私自身は日本で暮らしていますので、いくら海外の媒体でモデルをしていても、「まだ脱いでるの?」というような見られ方をされてしまう場面もありました。 ですから、結婚を機に、今後はどういうイメージで活動していこうかと考えていた矢先に、子どもを授かりました。
写真=三宅史郎/文藝春秋
〈 スタッフから「ちょっとお腹出てるな」と…三つ子を出産したモデル・紗世(SAYO)が語る、妊娠を隠して挑んだグラビア撮影 〉へ続く
(小泉 なつみ)