間寛平、吉本新喜劇GM就任から3年 「すぐパワハラと言われる時代」 難しさ感じつつ褒める指導で若手育成に奮闘
2025年5月29日(木)10時0分 マイナビニュース
●「褒めながら、傷つけないように芸を教えていかなければいけない」
2022年に吉本新喜劇のゼネラルマネージャーに就任したお笑い芸人の間寛平。5月30日には大阪で舞台『盲目のお蕎麦剣士が巻き起こす新喜劇』、そして6月26日・27日には東京・新宿で「吉本新喜劇inルミネtheよしもと」公演が控えるなど精力的に活動を続けている。「これまで怒られてばかりの人生で、人を叱ったことがなかった」という寛平が、GM就任してからの3年間を振り返った。
寛平は「とにかく面白いことをしようと頑張っている人間はどんどん吸いあげる」という思いで、若手を起用。そんな状況に中堅からベテランまで刺激を受けた。
「来てくれたお客さんが楽しんでもらうことが一番」という寛平のポリシーのもと、自らが背中を見せるように「むちゃくちゃやりました」と笑う。すると「わぁ、こんなことすんねや」「こんなことまでやってもええんか」と若い世代の座員がリミッターを外した。「勢いが出てきましたね。何をやっても良いんです。ただ『お客さんを喜ばせろよ』ということは言いました」。
元々、関西では高い人気を誇っていた吉本新喜劇。一方で「東京をはじめとして “吉本新喜劇”という名前は聞いたことがあっても、まだまだ観たことがある人は少ない。僕の望みは全国の人に知ってもらうこと。そのためには、まずは東京」と6月26・27日に新宿で行われる「吉本新喜劇inルミネtheよしもと」には強い思いがある。
「以前、ルミネtheよしもとができた頃は、新喜劇も上演していたんです。でもいつの間にかやらなくなってしまった……。それが悔しくて。だからもう一度ここでやって、しっかりと新喜劇を見せていこうって。チケットも好評みたいで手応えは感じています」。
実力がある人間はキャリア関係なく登用していく。人材を循環させていいものを作るという寛平GM。吉本新喜劇座員オーディションを5年ぶりに開催し、活きのいい新メンバーが17人も加わった。
現メンバーに対しても大きな刺激となる若手座員だが、令和の今だからこその難しさもあるという。寛平は「僕らの時代は、とにかく怒られて育った。今でこそ結構座員に叱咤していますが、僕なんか、オギャーって生まれたときからおかんや親父に怒られて、この年になっても(明石家)さんまなんかにもいつも怒られて。でも今は怒らないといけない立場」と自身の変化を述べるが「でも今は怒って教えるって時代じゃないでしょ」と苦笑い。
また、「昔はすぐ『この、アホウ』とか『お前、顔おもろいな』とか普通に言っていたけれど、全部ダメ。すぐ『パワハラや!』って言われる時代でしょ。会社からも『絶対にやめてください』って釘を刺されているんです」と語り、「でも優しく言っても分からんこともあるし、容姿をイジって笑いにすることもある。それでも今はとにかく褒めながら、傷つけないように芸を教えていかなければいけない。なんとかやっていますが、ほんまそこは悩みどころです」と胸の内を明かす。
●舞台上ではプレイヤーとして大暴れ「まだまだむちゃくちゃやるで!」
「とにかく吉本新喜劇を良くするために」という使命に溢れているという寛平。そのために自ら舞台に立って座員を鼓舞するが、プレイヤーとしては、昔から何一つ変わらないという。
「舞台に上がったらGMとか関係ない。大暴れしてむちゃくちゃやる。アドリブも多い。台本通りなんてほとんどやらん(笑)。その場の感覚でどうやったら面白くなるのか……ただそれだけ」。
寛平に引っ張られるように座員たちが躍動する。その勢いは確実に関西だけではなく、全国に広がりを見せている。企画もどんどんあげて、何でもチャレンジする。そんななか、5月30日にはピン芸人の濱田祐太郎主演の舞台『盲目のお蕎麦剣士が巻き起こす新喜劇』が、なんばグランド花月で開催される。
「濱田くんはR-1グランプリで優勝したときから、うちの嫁が『あの子は頭ええで』と注目していたんです。そうしたらたまたま大阪マラソンで一緒になって。話をしていたら、うち(新喜劇)のレイチェルと仲がええっていうので『飯でもいこう』となって。そのとき嫁が『あんたみたいに頭のええ子、会社は何してんねん。このまま放っておいたらあかん!』って言い出して(笑)。そこで濱田くんと殺陣をやろうということになったんです」。
そこから話が進み、盲目でありながら派手なアクションを行う舞台構成になった。寛平は「目が見えへんということは、セリフを覚えるのも大変。しかも殺陣をやる。映像ではなく舞台なので、カットを割るわけではないので、下手なことをしたら舞台から落ちて怪我をしてしまう。とんでもない努力をしたんです」と濱田の頑張りを称賛し、「舞台で目が見えへんのに殺陣をやるなんて、世界でただ一人ちゃうか?」と奇想天外な舞台になることを強調した。
「吉本新喜劇は大阪、関西の宝や」と語った寛平。だからこそ「もっと全国の人に知ってほしい。子供からおじいちゃん、おばあちゃんまでみんなが笑える新喜劇を作っていきたい」と意気込み、「どんどん若手が出てきて、僕らみたいな古い人間を脅かす存在にならんとあかん。新しい風をどんどん吹かせて、もっと面白いものを作っていきます。まだまだ舞台の上でむちゃくちゃやるで! だから皆さんもぜひ劇場に足を運んで、生の笑いを体験してほしい。絶対に損はさせへんから!」と熱いメッセージを送ってくれた。
■間寛平
1949年7月20日生まれ、高知県宿毛市出身。1970年に吉本新喜劇に入団し研究生となる。1974に吉本新喜劇の座長に昇格。「アヘアヘ」「ア〜メ〜マ〜」「かい〜の」などヒットギャグを続々と放ち、関西で絶大な人気を獲得する。1989年に退団し、東京進出。2008年12月〜2011年1月、ヨットとマラソンによる地球一周「アースマラソン」を完走。2013年より「淀川寛平マラソン」を開催。2022年2月に吉本新喜劇GMに就任。