捏造事件で見直し迫られた旧石器時代の「日本人」、廿日市市の冠遺跡で「確かな定点」出土

2025年5月29日(木)19時36分 読売新聞

冠遺跡から出土した中期旧石器時代の「尖頭器」(奈良市で)

 広島県廿日市はつかいち市のかんむり遺跡で出土した石器が、約4万2300年前の中期旧石器時代(約13万年〜約3万8000年前)のものだったことが奈良文化財研究所(奈良市)の国武貞克・主任研究員の調査で判明した。この時代の日本に人類がいた痕跡は遺跡や遺物の研究で確実にはなっておらず、今回の発見は人類が日本列島にたどり着いた時期を知る新たな手がかりとして注目される。(橿原支局 関口和哉)

 冠遺跡は1980年以降、広島大などが発掘調査を続けている。今回、国武研究員らが2023〜24年、計約100平方メートルを掘って調べた結果、5層の石器含有層を確認。各層で見つかった木炭を放射性炭素(C14)年代測定で検査し、最上層部は2万8200年前、最下層部は4万2300年前のものだとわかった。

 最下層部から出土した石器は376点。先端をとがらせた尖頭せんとう器(長さ9・2センチ)や幅の広い直線的な刃を持つクリーバー(同12・2センチ)と呼ばれる石器は、中国など東アジアの中期旧石器時代の遺跡からも出土例があるという。

 旧石器時代の研究は、2000年に民間調査機関の担当者が自ら埋めた石器を前・中期旧石器時代のものだと偽っていたことが発覚した「旧石器捏造ねつぞう事件」の影響で、大きな見直しを迫られた。日本では約3万8000年〜約1万6000年前の後期旧石器時代の遺跡が広く知られており、それより前にさかのぼるとされる岩手県遠野市の金取遺跡や島根県出雲市の砂原遺跡の発掘例については、多くの研究者が年代の確定に慎重な姿勢を示している。

 岩手などの例に比べ、冠遺跡は連続する地層で異なる時期の石器が出ており、年代の確実性が高いとみられる。稲田孝司・岡山大名誉教授(考古学)は「調査が積み重ねられてきた場所で今回の成果があり、学術的な重みがこれまでの遺跡とは違う。旧石器捏造事件以降、初めて旧石器時代研究の確かな定点といえるものが出てきた」と評価する。

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