川柳と小説で老い笑い飛ばす 三浦明博さんが短編集『シルバーの自覚ないまま年は増え』

2025年5月29日(木)15時30分 読売新聞

「1冊目があるあるなら、新作は『こういう高齢者いるいる』です」と笑う

 作家の三浦明博さん(65)が、シルバー川柳を織り込んだユーモア短編集『シルバーの自覚ないまま年は増え』(講談社)を刊行した。「年をとって落ち込んでいるだけではもったいない。老いを笑い飛ばす元気のもとになってくれれば」との願いを込める。

 きっかけは、高齢世代が「加齢あるある」を詠んだシルバー川柳の作品集を手にしたこと。「暗いのかと思ったら笑える句が多く、投稿した人の生活背景が頭に浮かんだ。川柳と小説を組み合わせたら面白い」と、2023年に『きたいなピンピンコロリで明日以降』(同)を刊行。今年、2冊目の『シルバー——』を出した。

 巻頭の「料理定年」では「定年後あなたも主夫と言い聞かせ」などストーリーの前後に川柳を置き、65歳になる妻からもう料理は作らないと宣言された68歳の太吉の悲哀が語られる。他にも、本来、最高時速6キロのシニアカーを高速に改造する元カミナリ族の95歳の錦之介、長谷川町子の漫画「いじわるばあさん」をほうふつとさせる74歳のヒサなどが登場。人生模様を浮き彫りにしながら、老化をたのしみ、年をとることを強みにしてはとエールを送る。

 団塊の世代も既に70代後半。「今の時代の老人像は、ネットやSNSを使ったり洋楽に詳しかったりもして一昔前と違う」との思いも込めた。各編の川柳は前作では自作したが、「小説を書く以上に時間がかかって苦しんだ」結果、今回は、居住する宮城県のシニア情報紙への投稿句も一部引用した。

 02年に『滅びのモノクローム』で江戸川乱歩賞を受賞してデビュー以来、釣りなどをテーマに主にミステリーを手がけてきた中での新境地だ。「乱歩賞デビューなので、今後、ミステリーのシルバー小説も書いてみたい」(佐藤憲一)

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