『あんぱん』阿部サダヲが語るパン職人・屋村草吉。悲しみを救うあんぱん「みんなのことを思ってこっそり作っているんでしょうね」朝田家を出て行ったワケは…
2025年5月30日(金)8時15分 婦人公論.jp
(『あんぱん』/(c)NHK)
今田美桜さん主演・連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合/毎週月曜〜土曜8時ほか)。第9週「絶望の隣は希望」の第45回が5月30日に放送されました。
軍から乾パンを作るよう依頼された朝田パンでしたが、パン職人・屋村草吉が拒否。釜次に頭を下げられた草吉は、乾パンを焼きたくない理由を語りました。しかし、軍が小麦粉など乾パンの材料を朝田パンに運び込みます。釜次は断ろうとしますが、草吉は乾パンを作り始めました。羽多子たちに作り方を教え、無事に軍に乾パンを納めることができましたが、草吉は朝田パンを出て行ってしまったのでした。風来坊のパン職人・草吉を演じる阿部サダヲさんがコメントを発表しました。
———『こころ』(2003年度前期)以来の朝ドラ出演になりますね。阿部さんの思う草吉の人物像と、演じる上で意識していることを教えてください。
朝ドラは、お父さん役もできる年齢になってきたかなと思っていましたが、それとはまたちがう、風来坊のパン職人というおもしろい役をいただけて、やりがいがあるなと感じています。
愛情に餓えた人
僕の想像ではありますが、草吉は何かを諦めてきて、愛情に飢えている。だからこそ、人にすごく興味がある人物なのかなと。一見冷たそうに見えますが、結局は困っている人がいると助けたくなってしまうのだと思います。とはいえ、特に前半は、なんだかよく分からない人でいたほうがいいんだろうなと思って演じていました。
(『あんぱん』/(c)NHK)
草吉は言葉遣いが荒いので、ただの気が強い人に見えないよう、なるべくあたたかい印象に持っていけるようにしたいと思っています。
釜次さん(吉田鋼太郎)との掛け合いで、ユーモアのある感じに見えるといいなと。あとは、脚本の中園さんに「ヤムさん、おもしろくしてください」と言われたので(笑)。暗くなるような場面も、明るくしていければと思っています。
ただ、皆さんが方言に苦労されていて、僕が勝手なことをしてしまうと、急には方言が出てこなくて困らせてしまうので。そこはあまり乱すことはしないように気をつけています。
パンはこっそり作っている
——パン職人という役柄ですが、パン作りの練習はいかがでしたか?
実際にパンの工場に行って、パンをこねて、あんこを包んでという基礎から練習しました。撮影では、道具も作り方もその時代に合わせています。
パンがおいしそうに見えないから撮り直しということもありましたし、ツヤ感が重要みたいです。『あんぱん』を見て、朝ごはんがパン派になる人も多いんじゃないかな(笑)。
草吉があんぱんで悲しみに包まれた朝田家の人々を救ったり、のぶや嵩の受験のときに“合格あんぱん”をあげたり、元気になってほしいときにあんぱんを焼くっていうのは、いいですよね。いつの間に作っていたんだろうという場面も多いですが(笑)。みんなのことを思って、こっそり作っているんでしょうね。
嵩は気になって仕方ない
——草吉として、のぶと嵩のことは、どう見ていますか?
あの二人の関係性はすごくおもしろいなと思いながら見ています。
のぶのように、あれだけ明るくまっすぐに向かってきてくれる人ってなかなかいないと思いますし。だから、嵩はこの人がいいなと思ったんでしょうね。
(『あんぱん』/(c)NHK)
草吉からすると、嵩はどこか似ているところがあったんだろうなと。最初に川辺で、ひとりぼっちでいる嵩を見たときから、そのさみしげな姿に、何かシンパシーを感じたんだと思います。草吉からすると、嵩は気になって仕方ない存在なのかもしれません。
草吉は風来坊ですから
——最後に、視聴者の皆さんへメッセージをお願いします。
『あんぱん』は、愛があり、やさしい気持ちになれる作品だと思います。草吉はずっと朝田家にいましたが、やっぱり風来坊ですからね。どこかに行かなくてはなりません(笑)。
草吉の戦争への思いというのも、このあと明らかになると思いますので、ぜひ今後の展開も楽しみに見てもらえるとうれしいです。
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朝ドラ通算112作目となる『あんぱん』は、子どもたちの人気者〈アンパンマン〉を生み出したやなせたかしと、小松暢の夫婦をモデルとした物語。ヒロインの<朝田のぶ>を今田美桜さん、<柳瀬嵩>を北村匠海さんが演じる。2人があらゆる荒波を乗り越え、“逆転しない正義”を体現した『アンパンマン』にたどり着くまでを描く。
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