【インタビュー】小栗旬×成田凌 未知の顔を見せた初共演、固い信頼関係で結ばれて

2019年9月9日(月)8時0分 シネマカフェ

成田凌×小栗旬『人間失格 太宰治と3人の女たち』/photo:You Ishii

写真を拡大

小栗旬成田凌。映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』での共演を経て、近しい仲になったそうだ。取材前、成田さんが小栗さんに礼儀正しく「おはようございます!」と挨拶をすれば、小栗さんが屈託のない笑みを向け、一言、二言添えて成田さんに返した。朗らかに会話をする様子はインタビューでも顕在だったが、親しいけれど、決して“ゆるく”はない空気が心地いい、そんな信頼関係を思わせる先輩、後輩の間柄が、ほの見えた。

ふたりが初共演を果たし、蜷川実花が監督を務めた『人間失格 太宰治と3人の女たち』は、日本を代表する作家のひとり・太宰治の遺作となった「人間失格」の誕生秘話を、彼を取り巻く女性の視点を交えて事実をもとにしたフィクションとして描いたオリジナルストーリー。1946年、人気作家の太宰(小栗旬)は、彼の支持者である静子(沢尻エリカ)と「芸術のための恋」の名目で逢瀬を重ねる。そんな太宰の不貞を見て見ぬふりをしながら、支え続ける妻・美知子(宮沢りえ)だったが、ついには第三の女・富栄(二階堂ふみ)も現れ…。


道ならぬ恋のうわさが絶えず、自殺未遂を繰り返しながらも、憎めない、惹かれずにはいられない魅力あふれる太宰を小栗さんが、そして、成田さんが太宰の行動に戸惑いながらも、才能にほれ込む編集者・佐倉を担当した。関係そのままとは言わないまでも、先輩俳優である小栗さんの魅力や立ち居振る舞いに、成田さんが心を寄せていることに違いはなく、インタビューでも嬉々として語られた。そして、現在俳優としても伸び盛り、本作でも未知の顔を見せ、さらには「MEN'S NON-NO」の専属モデルとしても活躍する成田さんの才能を、小栗さんも「作品への溶け込み方が優れている」という最上の表現で、さらりと語ったのだ。


「ああ、ここに飛び込めばいいんだな」という安心感を持って臨んだ撮影

——すごく仲睦まじいおふたりの雰囲気なのですが、本作の共演を機に、ですか?

成田:はい、そうです!
小栗:『人間失格』を撮ったのが去年の12月で…それからいま8か月くらい経ったのかな? 成田とは結構会っているんですよ。連絡をくれますし、パッと呼び出しても、すぐ来てくれるから(笑)。
成田:フットワーク、もちろん軽いです(笑)。旬さんに呼ばれたら、海外でも、どこへでもすぐ行きますよ!
小栗:本当?
成田:もともと学生のときから視聴者として観ていましたし、こうしてお話をしていても、「ずっと聞いていたい」と思うくらい、尊敬しています。旬さんは、甘えさせる隙を見せてくれる方でもあるんです。


——小栗さんから見た成田さんの第一印象は、いかがでしたか?

小栗:僕から見た成田は…。
成田:「ゴールデンレトリバーだと思っている」って前、言われました。
小栗:そうそう、ちょっと似ていませんか(笑)?

——僭越ながら、はい(笑)。

小栗:ね、ちょっと犬っぽい顔してるでしょ?
成田:自分でも腑に落ちます…。
小栗:キャラクターも、ちょっと犬っぽいかもしれないですね。明るく元気な、気持ちのいい青年です。


——本作ではご一緒するシーンも多かったと思います。お芝居をしてみての感想も教えてください。

成田:目と鼻くらいの距離、くっつくんじゃないかと思うくらいの距離でお芝居をさせてもらいました。旬さんの目を見ていると、「ああ、ここに飛び込めばいいんだな」というくらいの信頼や、「何をしても絶対に返してくれる、大丈夫」という安心感があったので、僕はとにかくやればいいと思っていました。
小栗:成田は…何だろうなあ。不安定な感じがいいんじゃないかな。決まっていないところが、素敵なところじゃないかなと思います。成田が出ているほかの作品を観ても、作品への溶け込み方が優れているのかな、と感じますね。いろいろな顔を持っているんだろうな。

太宰と佐倉、印象的なそれぞれのセリフは…

——太宰は女性に対して懐の深い役ですが、こうした役は演じていて楽しいものでしたか?

小栗:うん、楽しくはやっていたけど、楽しい半分、しんどい半分みたいな感じでした。太宰はいろいろな人をある意味、裏切っている生活だけど、それを感じていない人物ではないので、どんどん彼の中に蓄積していくんですよね。役を通してやりながら生活しているのは、なかなかしんどいところだったりします。

——セリフでもまさに、太宰が佐倉に「何も感じていないと思っているのか」と詰め寄るシーンがありましたよね。

小栗:ありましたね!
成田:ああ、いいセリフですよね!


——印象に残るセリフがほかにも数多く出てきますが、おふたりが好きなセリフは何でしたか?

成田:好きとはちょっと違うけど、僕は「心の底から軽蔑します」というセリフです!
小栗:「心の底から軽蔑する」って…なかなかだよね!? いいセリフだよね。
成田:佐倉は太宰のことを本当に尊敬しているのに、そんな人に向かって言って、でもまだ愛し続けているんですよ。そんなこと、なかなかないし、いいですよね。結果、才能がすべてを上回ってしまっている、という。
小栗:そうだね。僕は太宰の衝撃的なセリフで言うと、予告でも流れている「大丈夫、君は僕が好きだよ」かな。
成田:タバコを吸いながら、キスして言うセリフですからね(笑)!


——小栗さんが演じる太宰だから、色気に翻弄されて、説得力のある言葉になりました。

小栗:いえいえ(笑)。なかなか言えるセリフじゃないですよね。結構乱暴な言葉だなと思いますけど、それが言えるあの人は、すごいですよね。
成田:すごいと思います。結構なことをかなり言っていますよ!

小栗旬「藤原竜也と自分が同じ年に実花さんの映画の主演をやることは、何だか運命的」

——セリフ以外でも、演じる上で太宰の表情やしぐさなど、意識したことも多々ありましたか?

小栗:例えば、富栄とのキスを妻の美知子と子どもに見られてしまうところ。あのシーンでの表情なんかは…自分が生きてきた中で振り返ると、人に見られたくないものを見られたとき、喧嘩をするときとかは、滑稽な顔をしていることが多いと思うんです。本当にきつい瞬間に出る顔は、うそのような顔を意外と本当にするんだよね、と思っていたりもして。太宰のキャラクターに出したところもあるので、そういう意味では意識したのかもしれないです。


——太宰のおろかさや必死さには、試写室では笑いも沸き起こっていました。

小栗:笑えますよね。これだけ一生懸命みんなが生きているから、逆に笑えてきちゃう、という。すごく喜劇だと思いますし。彼は自分のことを道化みたいな言い方をしていますけど、そういう部分がある人だなと思います。実際、いろいろ残っている資料からも、太宰は決して暗い人ではなく、明るくユーモアのある人なんだ、ということが見えてくるので、そう映ったらいいなと思ってやっていました。


——蜷川監督との取り組みについてもお聞かせいただきたく。成田さん、今回初めての蜷川組でしたが、いかがでしたか?

成田:写真の現場でお会いすることがあって、そのご縁で、映像で今回初めてご一緒しました。写真のときと変わらず、実花さんは現場を華やかにしてくださる印象です。すごくいい雰囲気でできたのは、とてもありがたいことでした。演出も、心にスッと入ってきてくださるというか、さらっと世間話風にしながらも「このシーンは…」というお話があったりして演出をされるんです。すごく聞きやすく、わかりやすく、本当に人の気持ちがわかる方なんだな、と思いました。


——小栗さんは、蜷川監督のお父様である故・幸雄さんと非常にゆかりがあると思います。監督とは『Diner ダイナー』でもご一緒されていましたが、主演俳優として長い時間仕事をすることは、どのような経験になりましたか?

小栗:そうだなあ…まだちょっとわからないんです。結局、作品というものは、作った後はお客さんたちに育ててもらうので、自分の作った太宰がどういうところに向かっていくのかには興味がありますけど、いまやり切った時点では、「やる前」「やった後」に大きな何かがあるわけではないです。ただ、蜷川(幸雄)さんに育ててもらった藤原竜也と自分が、同じ年に実花さんの映画の主演をお互いやることは、何だか運命的なものを非常に感じています。実花さんと仕事ができるのは、改めてすごく光栄なことだと思ってやっていました。全然違うんですけど、…それでもやっぱり場の作り方の部分では、(蜷川)イズムは感じましたし、僕にとっては物腰のやわらかい蜷川さん、という感じです(笑)。

シネマカフェ

「成田」をもっと詳しく

「成田」のニュース

「成田」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ