未婚だからと「陸の孤島」に島流しになる北朝鮮の若い教師たち

2025年4月12日(土)4時53分 デイリーNKジャパン

北朝鮮は近年、深刻な労働力の減少に見舞われている。統計が公表されていないので正確な数字は不明だが、各地で「嘆願事業」と称して、炭鉱や農村などの「困難で骨の折れる」部門に都市部の若者を志願させることが頻繁に行われていることからも、その深刻さが垣間見える。自分の意志で向かったことになっているが、上から強いられたものであることは言うまでもない。


人手不足は労働現場のみならず、教育現場でも起きているようだ。咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。


朝鮮労働党金策(キムチェク)市委員会(市党)は、師範大学、教員大学を卒業しても、教員として働いていないか、教員として働き方が誠実ではない男女をリストアップするように指示を下した。誠実ではない」とは、授業をまともに行わない、欠勤が日常茶飯事であることを指す。


北朝鮮で、小中高の教員の社会的地位は決して高くない。給料は少なく、児童、生徒の親からの付け届けなどで生活を維持している者が大半だ。そんな生活に見切りをつけ、仮病を使って頻繁に欠勤したり、結婚する予定だとして辞職したりする者もいる。



このような現象に対して市党は、「道徳性と社会的責任が欠如した者で、革命家としての資格がない」「個人の事情ではない、単なるエゴイズム」だと批判した。そして、このような教員を、人員不足が著しい炭鉱や農村の分校に強制的に送り込むとした。


市党は、4月の第1週を「自発的志願期間」と定め、炭鉱や農村の分校の教員に行くならば志願せよと呼びかけた。問題があるのに志願しなかった者は、市党が強制的に送り込む。


市党は、指摘されるような行為を行っていた未婚の教員への面談を行っているが、これに3回以上応じなかった場合、師範大学、教員大学の卒業資格を剥奪すると半ば脅迫し、彼らの属する党組織や青年同盟に問題を提起させるとして、プレッシャーを掛けた。


ターゲットを未婚者に絞ったのは、既婚者の場合は、異動が順調に進まないからだ。また、現地で結婚して出産してくれるのなら、党にとってこれ以上のことはない。


情報筋は、市党のこのような方針について、「師範大学や教員大学を卒業した若者が、経済的利益を追及して、教壇を無断で離脱して、商売を行っている現象に対応するもの」だと説明した。


また、教員にはなったものの教育現場や生活の現実に虚しさを感じて、教員をやめようとする事例が多発したことを社会的問題と見なし、教員生活を無理やり続けさせるためでもあるとした。


このように言いがかりをつけ、誰も行きたがらない地域へと向かわせるやり方は、志願者を待つよりは効率的だとして、各地で行われている。


だが、送り込まれた先を抜け出して、よりビジネスチャンスの多い都会に向かったり、すっかり腐ってしまってまともに働こうとしなかったり、トラブルばかり起こしたりするなど、嘆願事業の副作用も小さなものではない。


また、結婚、出産も当局が思ったように進むかは不明だ。自分一人食べていくのがやっとなのに、家族を増やしたところで未来が明るくなるわけではない。

デイリーNKジャパン

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