米国第一主義と足並みそろわず、「シグナルゲート」が決定打に…ウォルツ補佐官を「事実上の更迭」
2025年5月2日(金)12時1分 読売新聞
米ホワイトハウスで、トランプ大統領(右)の脇に立つウォルツ氏(3月7日)=ロイター
【ワシントン=淵上隆悠】米国のトランプ大統領が国連大使への起用を発表したマイク・ウォルツ国家安全保障担当大統領補佐官を巡っては、交代は不可避との見方が広がっていた。国際秩序を重視する伝統的な共和党の価値観を持つウォルツ氏は、トランプ氏が掲げる「米国第一」主義とは足並みがそろわない場面が目立っていたためだ。
「トランプ大統領と我々の偉大な国への奉仕を続けられることを光栄に思う」
ウォルツ氏は1日、トランプ氏が自身を国連大使に起用する人事を打ち出したことを受け、X(旧ツイッター)でこう強調した。国連大使は重要ポストではあるが、ホワイトハウスの外交・安全保障の要でもあるこれまでの役職に比べれば、見劣り感は否めない。
異例の人事の決定打になったとされるのが、3月中旬に起きた民間の通信アプリ「シグナル」に絡む情報漏えい問題だ。ずさんな情報管理は、かつてニクソン大統領が辞任に追い込まれた「ウォーターゲート事件」にちなみ、アプリ名をもじって「シグナルゲート」と呼ばれて波紋を広げた。
一方、複数の米メディアは、この問題が起きる前から、既にウォルツ氏の立場は危うかったと指摘していた。同氏はホワイトハウスを統括するスーザン・ワイルズ大統領首席補佐官とも衝突していたとされる。
ウォルツ氏は「グローバルホーク派」と呼ばれ、中国やイランに対して厳しい姿勢で知られる。ロシアのウクライナ侵略を巡り、和平交渉に後ろ向きな姿勢を崩さないロシアに対し、制裁強化の必要性をトランプ氏に訴える数少ない人物でもあった。
メディアに追及材料を与えたくなかったトランプ氏は、表向きはウォルツ氏をかばう姿勢を示していたが、政権発足から100日が経過したこのタイミングで、先延ばしにしていたウォルツ氏の更迭を判断したとみられる。