国際政治学者のジョセフ・ナイ氏死去、88歳…知日派の論客で「ソフト・パワー」を提唱
2025年5月8日(木)6時7分 読売新聞
国際政治学者のジョセフ・ナイ氏(2022年10月24日、東京都港区で)
【ワシントン=阿部真司】米国の国際政治学者のジョセフ・ナイ氏が6日、死去した。88歳だった。自身が学長を務めた米ハーバード大ケネディスクールが7日、発表した。知日派の論客で、文化や価値観を通して他国に影響を与える「ソフトパワー」を提唱したことで知られる。
民主党のクリントン政権下の1994〜95年に国防次官補を務めた。軍事や経済力といった「ハードパワー」だけでなく、「ソフトパワー」で他国の共感を得る重要性を訴え、多くの国の外交政策に影響を与えた。
2000年以降は、今年4月に死去した共和党系のリチャード・アーミテージ元国務副長官らと共同で、日米同盟に関する提言「アーミテージ・ナイ報告書」を6回にわたり公表し、同盟強化を訴えた。ハーバード大は7日の声明で、「ナイ氏は、冷戦後の複雑な安全保障問題への対処や、中国と日本に対する新たなアプローチを考案した」と功績をたたえた。
12年からは、読売新聞朝刊のコラム「地球を読む」に寄稿していた。14年には旭日重光章を受章した。著書に「ソフト・パワー」「アメリカの世紀は終わらない」などがある。