国連の活動制限し米国主導でガザ配給、住民「飢餓の危機に対応できない」…210万人に対し46万食
2025年5月28日(水)22時53分 読売新聞
27日、ガザ最南部ラファで、食料や支援物資の入った箱を運ぶパレスチナの人々=AP
【エルサレム=福島利之】パレスチナ自治区ガザの最南部ラファで27日、イスラエルと米国が主導する支援物資の配布が始まった。現場には群衆が殺到し、中東の衛星テレビ局アル・ジャジーラによると、イスラエル軍の発砲で少なくとも3人が死亡、46人が負傷した。国連主導の支援は制限され、ガザの住民は「この配給では飢餓の危機に対応できない」と憤りの声を上げた。
南部ハンユニスのマワシ地区に避難するファーティン・ダウードさん(42)は27日朝、「米国の団体が物資を配っている」と聞き、9キロ・メートル離れたラファの配布場所に歩いて向かった。現場に到着すると、群衆は殺気立ち、フェンスが倒された。物資を配っていた米国人は現場を離れ、イスラエル軍の陣地に退却した。
子供3人を育てる母親のダウードさんが最後に配布場所で食事を受け取ったのは2日前。ダウードさんは「この物資の配布は解決策でなく、イスラエルの他の目的を達成させるものだ」と本紙通信員に語った。
イスラエルは、国連の支援物資配布について「(イスラム主義組織)ハマスが物資を横取りし、利益を上げている」として搬入を制限した。配布を担う団体として「ガザ人道財団」(GHF)が発足したが、事実上イスラエルと米国が設立した団体だった。戦闘当事者による配布を国際社会は疑問視している。国連の事業で約400か所あった配布場所は4か所に集約され、住民は戦闘が続く中でも長い距離を歩く必要がある。
GHFは27日、約46万2000食分を配ったと説明したが、約210万人とされる全てのガザ住民には不十分だ。8人家族のアハマド・ターハさん(51)が10キロ・メートル歩いて物資を取りに来ると、イスラエル軍が群衆に発砲した。目の前で1人が死亡し、数十人が負傷した。軍は27日、「警告射撃を行った」と発表した。
小麦粉や食用油、缶詰の食料が入った段ボールを受け取ったターハさんは「物資を受け取るのは危険だし、物資を持って長距離を歩くのは無理だ」と険しい表情を見せた。国連事務総長の報道官は27日、「我々には健全な計画がある」と述べ、国連の支援拡大をイスラエルに求めた。