小惑星探査機HeraのJAXA製カメラ、火星スイングバイで衛星ダイモスを撮影

2025年3月17日(月)21時0分 マイナビニュース


宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、欧州宇宙機関(ESA)が主導する二重小惑星探査計画の探査機「Hera」(ヘラ)が、日本時間3月12日21時50分に火星に最接近。ターゲットの小惑星「ディモルフォス」に向かう軌道に入るため、火星の重力を利用したスイングバイを実施し、無事所定軌道に投入されたことを確認したと3月14日に発表した。
また、その際にHeraに搭載された3台のカメラを用いて、火星の衛星ダイモスとフォボスの観測を実施したことも併せて発表された。このうちの1台が、JAXAが開発した「熱赤外カメラ(TIRI)」である。
Heraは、日本時間2024年10月7日に米国フロリダ州のケープカナベラル宇宙軍基地より、スペースX社のファルコン9ロケットによって打ち上げられた。その主な目的は、太陽を約770日かけて公転するS型(石質)の二重小惑星系、ディディモス(直径約780m)とその衛星であるディモルフォス(直径160〜170mほど)の詳細な探査であり、2026年12月に到着が予定されている。
特筆すべきは、ディディモスは地球近傍小惑星(NEO)に分類されるだけでなく、その軌道が地球の軌道と交差しているため、「潜在的に危険な小惑星」(PHA)としても位置づけられている点だ。そのため、Heraは単独の探査計画ではなく、世界初のプラネタリーディフェンス(小惑星の地球衝突回避)計画「AIDA」(Asteroid Impact & Deflection Assessment)に含まれ、先に実施されたNASAの「DART」計画と連携した国際共同ミッションとなっている。
DART計画では、小惑星に探査機を意図的に衝突させることで、その軌道を変更するという、世界初の本格的なプラネタリー・ディフェンスの実証が行われた。ディモルフォスへの衝突は日本時間2022年9月27日に実施され、DARTは秒速約6kmという高速で、ディモルフォスの公転方向前方から衝突。この衝突は、ディモルフォスの公転速度を低下させ、公転周期を短縮させることを目的としたものである。地上からの精密な観測の結果、衝突によってディモルフォスの公転周期は約32分短縮され、新たな公転周期は約11時間23分となったことが確認されている。
この結果を受け、ディディモス連星系の詳細な探査を行うことが、Heraの主要な役割だ。具体的には、DARTの衝突がディモルフォスの軌道や自転状態に与えた影響、そしてDARTによって形成された衝突クレーターの形状やサイズなどが詳しく調査される。加えて、ディディモス連星系の物性や物質構成に関する詳細な観測も、約半年の期間をかけて実施される予定だ。
そして今回の火星スイングバイにおいては、非冷却ボロメータ搭載の熱赤外カメラ(TIRI)に加え、可視カメラ(AFC)、可視近赤外分光カメラ(HyperScout-H)の3台による観測を実施。JAXA 宇宙科学研究所(ISAS)からは、熱赤外カメラ(TIRI)によって観測された火星とダイモスの画像および動画が公開された。
火星にはフォボスとダイモスという2つの衛星が存在することは広く知られているが、ダイモスは外側に位置する小型の衛星であり、その形状は長径約15km×短径約12km×厚さ約10kmの不規則な形をしており、火星から約2万3400kmの高度を公転している。
フォボスとダイモスはどちらも、JAXAが2026年の打ち上げを目指して開発中の火星衛星探査機「MMX」によって詳細な探査が行われる予定だ。MMX計画では、両衛星の観測に加え、フォボスからのサンプル採取も計画されており、その成果が両衛星の形成過程の解明に大きく貢献することが期待されている。
Heraは今後、2026年12月にディディモス連星系に到着する予定だが、搭載された熱赤外カメラ(TIRI)は、到着までの間も時折動作確認を行いながら観測の準備を進めることになる。そして到着後には、史上初となるS型小惑星の熱物性探査や、上述の通りにDARTによる衝突後の詳細状況を詳しく調べることになる。

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