「空間」は「時間」から生成された? “時空”への新たな考え 中国と英国チームがプレプリント発表
2025年4月16日(水)8時5分 ITmedia NEWS
この研究の核心は、1つの量子ビットに対して特定の測定を時間差で連続して行うと、その測定結果の関連性(相関)から、私たちが住む3次元空間の幾何学的構造が浮かび上がることだ。
重要なのは、この幾何学的構造が量子ビットの初期状態に全く依存しないという発見。これは、最初の状態を知らなくても、測定を続けるだけで空間の幾何学を抽出できることを意味している。
研究者たちはパウリ行列と呼ばれる量子力学の基本的ツールを用いた測定の時間的相関を分析した結果、これらの相関がユークリッド幾何学と完全に一致することを証明した。さらに重要なことに、この特性を持つのは3次元のパウリ空間のみであることも証明できた。
この発見に基づき、研究者らは空間そのものが量子的な相関から生じるという仮説モデルを提案している。このモデルでは、あらかじめ空間が存在しない宇宙で、観測者が量子ビットを繰り返し測定するだけで、その測定の相関関係から3次元空間の構造を観測者の中に形成するという可能性を示している。
現代物理学では空間と時間は「時空」という4次元連続体の構成要素と考えられているが、この研究は空間の幾何学的構造が量子時間相関から創発する可能性を示唆している。空間と時間が単に同一実体の異なる表れではなく、時間がより根源的で空間がそこから生成される二次的な現象を持つかもしれないという視点を提供している。
Source and Image Credits: Fullwood, James, and Vlatko Vedral. “Geometry from quantum temporal correlations.” arXiv preprint arXiv:2502.13293(2025).
※Innovative Tech:このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。X: @shiropen2