ミニPCを中心に見どころたくさん! 「Japan IT Week 春 2025」ブースレポート
2025年5月2日(金)17時10分 ITmedia PC USER
ASUS JAPANブースは、NVIDIAとのコラボレーションを行っていた
この記事では、ミニPCやエッジAI関連の展示に絞ってブースの模様をお伝えする。
●ASUS JAPAN:NUCや産業向けサーバ/エッジコンピュータ類を展示
ASUS JAPANブースでは、「NUC」を始めとするミニPCや産業用サーバ、エッジAIコンピュータなどを展示していた。
ミニPCの目玉は「ASUS NUC 15 Pro」シリーズだ。本シリーズはグローバル発表済みで、日本でも6月末をめどに販売を開始する予定だという。
本製品は2.5インチドライブベイの有無で2種類のボディーを用意しており、CPUはRaptor Lake(開発コード名)ベースの「Core 100Uプロセッサ」「Core 200Hプロセッサ」、またはArrow Lake(開発コード名)ベースの「Core Ulta 200Hプロセッサ」から選べるようになっている。
Core Ulta 200Hプロセッサ搭載モデルの最上位構成では、CPU/内蔵GPU/内蔵NPUの合計で最大99TOPS(毎秒99兆回)のAI処理を行えるという。またAI処理に欠かせないメモリは最大で96GB(48GB×2)まで搭載できる。Wi-Fi 7やBluetooth 5.4といった最新ワイヤレス接続規格にも対応している。
手のひらサイズの小型ボディーながらも、Thunderbolt 4(USB4)ポートやUSB 3.2 Gen 2 x2(USB 20Gbps) Type-Cポートを備えており、2.5インチドライブ非対応モデルでも十分な拡張性を備えている。
会場にはCopilot+ PCに準拠する「ASUS NUC 14 Pro AI」シリーズや、Ryzen AI 7 350を搭載するCopilot+ PC「ExpertCenter PN54」も展示され、多様なAI対応ミニPCを取りそろえていることをアピールしていた。
ASUS JAPANの担当者によると、ミニPC製品は法人需要が90%を占めており、デジタルサイネージはもちろん、情報の持ち出し防止の観点から固定設置型のオフィスPCとしても人気があるという。「一部モデルではノートPCより性能が高く、(一般的な)デスクトップPCよりも省スペースという特性が評価されている」とのことだ。
ブースではミニPCを使ったデジタルサイネージのデモも行われていた。1台のミニPCに2台のディスプレイを接続し、片方のディスプレイにサイネージ管理画面、もう片方のディスプレイにサイネージを表示するという運用だ。HDMIケーブルを抜いた場合は、サイネージ表示を維持する(=管理画面側を非表示にする)という機能もあるという。
IoT(モノのインターネット)用を始めとする産業用デバイスを展開する「ASUS IoT」ブランドからは、「NVIDIA Jetson」を搭載するエッジAIコンピュータや、産業用サーバ製品が展示されていた。振動計測センサーなど特殊用途機器も含め、産業向けソリューションの充実している。
●Minisforum:NASやPS5にそっくりなゲーミングミニPCを展示
ミニPCで知られるMinisforumブースでは、高性能ミニPCの新製品の他、今後投入予定のハイエンドNASなどが展示されていた。
際立っていたのは、Ryzen 9 7945HX/9955HXプロセッサを搭載する本格ワークステーション級ミニPC「MS-A2」だ。本製品は10GBASE-Tに対応する有線LANポートの他、PCI Express 4.0 x16スロットやM.2スロットを3基も備えるなど、小型ボディーとは思えない拡張性の高さが魅力だ。
メモリはDDR5規格のSO-DIMMで、最大96GBまで搭載可能だ。冷却にこだわった内部構造で、担当者は「これが一番強い(ミニPCだ)」と胸を張る。間もなく販売を開始する予定で、メーカーのWebサイトでは5月20日から出荷を開始するとのことだ。
世界初公開となったゲーミングミニPC「G1」「G1 Pro」も存在感を放っていた。ボディーはPlayStation 5とそっくりで、APUはRyzen 9 8945HX(16コア32スレッド)、外部GPUはNVIDIAの「GeForce RTX 4060」(G1)または「GeForce RTX 5060」(G1 Pro)を搭載することでゲーミング性能もしっかり確保している。
ボディーサイズは縦置き時で約57.2(幅)×216(高さ)×315(奥行き)mmとミニPCとしては大型だが、高性能なゲーミングデスクトップPCと比べれば十分にコンパクトだ。
発売は近日中を予定しており、「最終デザインはさらに洗練される」とのこと。想定価格は18〜19万円程度だ。
さらに、同社初のNASキット「N5 PRO」も展示されていた。APUは最新の「Ryzen AI 9 HX PRO 370」(12コア24スレッド)で、5基のHDDベイを備える。マザーボードは着脱が容易で、M.2スロットを3基搭載している。PCI Expressスロットにはグラフィックスカードも搭載可能とのことで、一般的なNASからすれば明らかに“オーバースペック”かつ汎用(はんよう)性が高いことがウリとなる。
5〜6月発売を予定しており、想定価格は20万円強となるそうだ。
また、デスクトップPCとしては珍しくCopilot+ PC(新しいPC)の要件を満たす「AI X1 PRO」も印象的だった。
本製品はRyzen AI 9 HX 370を搭載しており、CPUコア/GPUコア/NPUコアで合計最大80TOPS(毎秒80兆回)のAI処理性能を備え、最大4画面を同時出力できる。コンパクトながら電源を内蔵し、価格は14万9000円から18万9000円と「NPU搭載ミニPCとしては市場最安値」という設定だ。
●アスク:NVIDIAの産業向けソリューションを多数展示
PCパーツの大手代理店として知られるアスクのブースでは、エッジAIからシミュレーション環境までを統合的に提案する「フィジカルAI」ソリューションが展示されていた。
同社はNVIDIAの代理店でもあり、展示面積の半分以上はNVIDIA関連製品が占めていた。
アスクブースの目玉は、NVIDIAの「Ominiverse」プラットフォームだ。3Dシミュレーション環境でロボットの強化学習やデジタルツインの実現、自動車の塗装テストなど、多様なユースケースを提案していた。
「実地に行かなくても仮想空間に同じ環境を再現できる」と担当者は説明する。
アスクはロボットも扱っており、ブースではUnitree製の犬型ロボットも展示されていた。「強化学習」による動作改善を検証しているという。
さらにLiDARやステレオカメラなどのセンサー技術も展示され、AIシステムへのデータ入力方法の違いを説明していた。
新製品としては、NECプラットフォームズが開発するRyzen EmbeddedプロセッサとAMDの組み込み機器向けSoC「AMD Versal」を併載するマザーボードも展示していた。「(NVIDIAの)Jetsonに依存せずに、Windows環境で開発できる選択肢」だという。
このマザーボードは現在開発途上だが、製品化は決まっているという。
また、アスクが代理店を務めるAetina(エティナ)のエッジAIアクセラレーターも展示され、運転手の居眠り検知や工場での品質管理など、実用的なユースケースを想定したデモが行われていた。
現場での導入イメージも分かりやすく示されていたことが印象的だった。
●アドバネット:GIGABYTEとのコラボレーションによるソリューションを展示
アドバネットブースでは、日本ギガバイト(GIGABYTE)とのコラボレーション展示が行われていた。
展示エリアには最新のGIGABYTE製GPUサーバやAIサーバが並び、データセンターやエッジコンピューティング向けのソリューションを提案していた。
GIGABYTEのサーバにアドバネットの産業用拡張ボードを組み合わせた展示もあった。
担当者によると、GIGABYTEのGPUサーバやAIサーバは約1年前から取り扱いを開始し、半導体製造装置の他、医療機器、火力発電所などさまざまな産業で採用されているという。今回は、AMD EPYC 8004シリーズ搭載エッジサーバーや第4/5世代Xeonスケーラブルプロセッサ搭載サーバなどが展示されていた。
一方、アドバネット自身の製品として「Leyline(レイライン)」というLoRaWAN採用のIoT通信システムも動態展示された。
この製品は、工場設備の振動センサーによる異常検知や省電力長距離通信などの特徴を備え、実際の導入事例として鹿児島県大崎町での堆肥化プラントの温度センシングなどが紹介されていた。
●ワイセキュア:HTCとのコラボレーションによるエッジAIサーバを展示
ワイセキュア:HTCとのコラボレーションによるエッジAIサーバを展示
ワイセキュアブースでは、HTC製のエッジAIサーバ「HTC Edge AI」を使ったソリューションを展示していた。
HTC Edge AIは、監視カメラ映像から人の顔を検知してモザイク処理を行ったり、立入禁止区域への侵入を検知して警報を発したりといった機能を持つ。
ワイセキュアのソリューションの主軸は、「FDO(FIDO Device Onboard)」と呼ばれるIoTデバイス向け認証システムにある。これは、製造段階から顧客の利用開始まで一貫したセキュリティを提供するもので、デバイスが初めて起動する際に正規所有者の認証が自動的に行われる。
HTCのエッジAIサーバーとワイセキュアのセキュリティ技術を組み合わせることで、プライバシーとセキュリティを担保したAIシステムの構築が可能になるという。
なお、HTCのエッジAIサーバーに担当者は「デモとしての展示であり、(自社単独で)日本での展開予定はない」と説明していた。
この他、ワイセキュアは暗号化USB機能付きストレージや権限管理デバイスなど、ハードウェアセキュリティ製品も展示していた。
●トランセンドジャパン:産業用ストレージやボディーカメラを展示
ストレージ製品で有名なトランセンドジャパンのブースでは、同社の主力製品であるストレージ製品に加えて、業務用ボディーカメラを展示していた。
注目は、最近発表されたばかりのエンタープライズSSDシリーズだ。高い耐久性を備える特徴で、Serial ATAモデル(ETD210T)については、同社製の同一容量の通常モデルと比べると耐久性が約2.33倍(3000TBW→7000TBW)に引き上げられている。
担当者によると「より高性能なコントローラーを採用し、内部エラーへの耐性が向上している」という。さらに、不意の電源断が生じた場合にもデータを保護する「電断保護(PLP)機能」を搭載することで信頼性を向上している。
U.2フォームファクター(PCI Express接続)の「ETD410T」はヒートシンク付きで、厚みは9〜15mmほどある。実物を見ると、結構な存在感を放っている。
業務用ボディーカメラについては、担当者いわく「副業」だという。最長8時間程度の連続稼働が可能で、建築現場や線路点検、刑務所/拘置所といった過酷な環境での利用に対応している。
トランセンドの収益の大部分はストレージ製品だが、このようなニッチな業務用途向け製品も手がけている。