目指せラジコン出身GTドライバー。BRZをドライブした奥本隼士が突撃営業で掴んだチャンス
3月16〜17日、岡山国際サーキットで行われたスーパーGT公式テスト。GT300クラスでは多くのチームが第3ドライバーを起用していたが、エントリーリスト発表とともに新鮮な驚きともなったのが、SUBARU BRZ R&D SPORTの第3ドライバーに起用された奥本隼士だ。ラジコン出身というユニークなキャリアの持ち主だが、今回の起用に至るまでの経緯が非常にユニークなものだった。
奥本は1999年大阪府生まれ。現在のモータースポーツシーンでは多くのドライバーが幼少の頃からレーシングカートで育つことが一般的だが、奥本の場合はなんとラジコン出身。11歳の頃、ラジコンの世界大会で優勝した経験をもっているほか、陸上競技でも活躍。全国大会出場経験もある。
そんな奥本はレーシングドライバーを志し、Racing TEAM HERO’SからVITAに挑戦。2022年には同チームからFIA-F4に参戦を開始すると、2023年にはトヨタの育成プログラムであるTGR-DCにも抜擢された。この年はFIA-F4に加え、KTMSからスーパー耐久ST-2クラス、TGR GR86/BRZ Cupにも参戦。スーパー耐久では1勝も飾り、多くの経験を得てきた。
ただ2024年に向けてスーパー耐久はKTMS、TGR GR86/BRZ CupはK-One Racing Teamから継続参戦は決まったものの、奥本はTGR-DCプログラムからは外れることになってしまった。「昨年は本当に貴重な経験を積ませていただけたことに感謝しています」とTGR-DCには感謝を述べる奥本だが、レーシングドライバーとしてのキャリアの岐路でもある。
しかし奥本は「僕の年齢、そして2023年に結果を残せなかったというところもあったのですが、僕自身まだまだ諦めきれないところがありました」と、何かチャンスを得られないかと、自らアクションを起こした。奥本はTGR GR86/BRZ Cupで知り合った井口卓人を頼り、2月14〜15日に岡山国際サーキットで行われていたGT3特別スポーツ走行に“アポなし”で向かったのだ。
奥本は岡山でR&D SPORTに「突撃営業」を行い、澤田稔監督、小澤正弘総監督に自らを売り込んだ。そこで得られたのが今回の第3ドライバー起用というチャンスだ。現代のスーパーGTでは非常に珍しいパターンとも言える。しかも井口と山内英輝という揺るがぬコンビがいるチームへの売り込みなのだからなおさらだ。
一方、「今年からリザーブドライバー制度が導入されましたよね。我々も常々リザーブは必要だと思っていたので、昨年は佐々木孝太さんにお願いして、富士の公式テストでもドライブしていたんです。今年からちゃんとした制度になると聞いたので、今年はどうしましょうかと澤田監督とお話をしていたところなんです」というのは小澤総監督。
「こういうのは縁だと思っているんです。もともと、井口選手も第3ドライバーでいいから乗せてくれ……と売り込んできたのがスタートですし、こういう意気込みは大切だと思います。澤田さんとも相談して、一度乗せてみようかとなりました」とオーディションとして奥本の岡山公式テスト参加を決めたとという。
また、意気込みに加え起用のポイントとしたのは、「フィジカルが強いんですよね」ということ。「陸上競技で全国大会にも出ていると言いますし、真面目さとストイックさが、どちらかというとウチのチームカラーなのではないかと思っています」と小澤総監督は笑顔をみせた。
こうして実際に岡山公式テストに参加するチャンスを掴んだ奥本だが、初日からSUBARU BRZ R&D SPORTをドライブし、ルーキーテストも受けた。
「メチャクチャ速いです。語彙力がなくなるくらい衝撃でした」と奥本は初めてのGT300ドライブに興奮した様子だった。
「僕は小さい頃からレースファンでしたが、まさか本当にスーパーGTのマシンに乗れる日が来たんだ……と夢か現実か分からないような、すごく幸せな経験をさせていただきました」
とはいえ、幸せな気分を味わっているばかりでもいられない。今後も奥本はチーム、そしてスバルに対し、戦えるドライバーであることを示さなければならない。「もっと頑張って速くなれるようにしたいですし、僕のキャリアはラジコンから来ていて、レーシングカートで速かったドライバーたちとも一緒に戦える嬉しさはありながらも、ラジコン出身をもっとアピールして、僕自身がもっと速くなりたいと思っています」と奥本は語った。
異色のキャリアの持ち主が叩いたGTドライバーの扉。まずは今回のテスト、そして3月23〜24日に行われる富士公式テストで、そのポテンシャルをアピールしたいところだろう。
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