「まさか自分のチームでJSB1000クラスを戦うとは思っていなかった」BMW M1000RRで挑む関口太郎/全日本ロード

2022年2月6日(日)16時31分 AUTOSPORT web

 国内外で長年活躍してきた関口太郎が2022年シーズン、BMWの最新モデルM1000RRでJSB1000クラスに参戦する。46歳となり、レーシングライダーとしてのキャリアを締めくくるためにも、自分自身で納得いく形で終えたいのが理想だろう。手に入れた器を最大限に引き出して走る。SANMEI Team TARO PLUSONEの戦い方は、プライベーターの鏡とも言えるものだ。


 2019年のシーズン終えた関口は、2020年のシートを失った状態だった。この年の12月に初開催されたEWCセパン8耐にTeam PLUSONEからBMW S1000RRで出場。このS1000RRは、K46と、すでに型落ちながら高いポテンシャルを感じることができていた。「このマシンなら全日本を戦える」と……。しかし、Team TAROは、2018年をもって一度、解散していたため、スポンサーに相談し資金面の試算を行い、メカニックやスタッフに再び集合してもらえるように打診。それぞれ仕事を持っているため、以前と全く同じようにとは、いかなかったが何とか都合をつけてくれていた。


 2020年シーズンは、コロナ禍の影響で開幕が8月になったことも、関口にとっては、プラスに働いた。通常通りに開幕していたら、完全に間に合わなかったからだ。この年、関口は、ランキング9位となり、翌2021年もランキング11位。2シーズンとも全戦でポイントを獲得するステディなレースを見せ、プライベーターとしては重要なトップエントラント入りを果たしている。

BMW S1000RRを駆る関口太郎(SANMEI Team TARO PLUSONE)


「マシンはSTベースで欲をかかないようにしました。2台用意しましたが、同じように動かすのは難しく、Tカーはエンジンがかかって走ることができる程度の状態でした。ほぼスタンダードの状態にブリヂストンのスリックタイヤをつけただけの状態で、鈴鹿を2分07秒台で走ることができるのだからS1000RRのポテンシャルは高いと思います」


 このラップタイムは、関口の腕による部分も大きいが型落ちのマシンでも、ここまで戦えることを証明している。ただ、決して、その道は平坦ではなかった。中古のエンジンをだましだまし使いながら壊れたこともあったし、アタックラップに派手に転倒し負傷したこともあった。


「2021年は、速いエンジンを譲り受けて開幕戦のもてぎで1分49秒台を出すことができましたが、レース2で壊れてしまいました。その後の鈴鹿2&4からは、またノーマルエンジンで最終戦まで走りました」

関口太郎(SANMEI Team TARO PLUSONE)


 関口は、インストラクターの仕事をよくしているが、そうした走行会を走っている人のマシンの方が高価なパーツがついていると言う。「あるときに僕のJSB1000で使っているS1000RRを見て“本当にスタンダードで乗っているんですね”と言われたこともあります」とも語っていた。


 型落ちならではの苦労をしながらも、周りに助けられながらレースをこなしていった。そんなときにエボリューションモデルM1000RRが登場し、そのうわさを耳にすることが多くなり、日に日にM1000RRで走ってみたいという思いが強くなっていく。すると応援してくれているスポンサーがスポンサーを紹介してくれることになり、近所のA-big Motorradに2台のM1000RRを注文する。A-big MotorradもBMWを走らすようになってからスポンサーの紹介で付き合うようになり、今では応援してくれている。この辺も関口の人柄が成せるところでもある。


「“M1000RRを2台注文する人なんて初めてです”と言われました(笑)。まさか自分のチームでJSB1000クラスを戦うとは思っていなかったし、M1000RRを走らせることができるとは……。これも応援してくださっているスポンサーさんを始め、支えてくれているチームスタッフのおかげです。本当に仲間に恵まれていますね」

BMW M1000RRを2台購入した関口太郎(SANMEI Team TARO PLUSONE)


 レーシングパーツをドイツのアルファレーシングに注文。12月半ばには到着し、納車に合わせて、作業に取りかかれるはずだったが、運送会社のトラブルで一度日本に届いた荷物がドイツに送り返されてしまう。クリスマス休暇も重なり、予定を1カ月以上遅れて、1月下旬にようやく届いていた。


 これに先だって12月28日に2台のM1000RRが納車される。関口は、年末年始にかけてストリートで慣らし走行をナンバーを取得し公道で行った。メーカー推奨の距離が1000kmとなっており、9000回転以上回らないように制御されており、慣らしが終わったところで解除してもらえることになっている。とはいえ町乗りでは、9000回転で十分以上なスピードが出る。もてぎで走った際、6速9000回転で200km/hオーバーをスピードメーターは指していたそうだ。シャシーダイナモなどで慣らしを行うことも多いが、関口は実走にこだわった。

公道でBMW M1000RRの慣らしをする関口太郎(SANMEI Team TARO PLUSONE)


「エンジンだけではなく、クラッチやミッション、駆動系もしっかり慣らしができるので実走にしました。そもそも町乗りをするのが久しぶりだったので、始めは怖いくらいでしたし信号待ちでエンストもしました。後ろのクルマにごめんなさーいって(笑)。スーパースポーツですがポジションもよく、グリップヒーターもあるので快適でした」


 高速を走っているときに車線のど真ん中に角材が落ちていてヒヤッとした場面もあったそうだが無事に2台の慣らしを終え、これからレース仕様にする作業に入っていく。市販車の状態でのインプレッションはどうだったのだろうか。


「電子制御が、すごくよくできていて、ウイリーコントロールやトラクションコントロールの味付けが絶妙ですね。BMWは、日本車に比べてひとつひとつのパーツは高いですが、ランニングコストがいいですね。お金があれば、ワークスと同じものもネットショッピングで買うことができますし、スタッフも派遣してくれますから、すごいですよね」

ツインリンクもてぎでBMW M1000RRを走らせる関口太郎(SANMEI Team TARO PLUSONE)


 日本メーカーにはないBMWのすごさを感じ、その最新モデルでいよいよ走り出す。しかし、いいパーツを買っても、まとめるのに苦労してきた経験もあるだけに無理はしないと語る。


「確実に前のモデルより、バイクはよくなっていると思いますが、そう簡単には、いかないでしょう。開幕戦まで時間に追われる毎日ですが、以前、開幕までに間に合わせようと必死になりすぎて体調を崩したこともあったので、無理なモノは無理と割り切りながらやっていきます。ドイツからの荷物が遅れたのも“焦らないでやれよ”と神様に言われているんだろうと。レースでも“イケるぜ!”と思うときほど怪我をしますし、散々経験してきましたから。まずは1台をしっかりレース用に仕上げて地に足をつけて着実に走りますよ」


 M1000RRでのTeam TAROプロジェクトは、全日本ロードJSB1000クラスフル参戦、鈴鹿8耐へも参戦予定だと言う。開幕戦もてぎで、どんな走りを見せてくれるのか、今から楽しみなところだ。

ツインリンクもてぎでBMW M1000RRを走らせる関口太郎(SANMEI Team TARO PLUSONE)
ツインリンクもてぎでBMW M1000RRを走らせる関口太郎(SANMEI Team TARO PLUSONE)
ツインリンクもてぎでBMW M1000RRを走らせる関口太郎(SANMEI Team TARO PLUSONE)

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