F1 Topic:“レースの一部”だったハースの戦略に見える入賞までの現実。煽りを食ったライバルも白旗
2024年3月11日(月)18時0分 AUTOSPORT web
今回のF1第2戦サウジアラビアGP決勝レースでは、ハースのレース戦略が脚光を浴びることになった。7周目にセーフティカーが導入されたタイミングでステイアウトしたニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)のポイント獲得をサポートするために、チームメイトのケビン・マグヌッセンが、ポイント争いの最大のライバルとなっていた角田裕毅(RB)を押さえ込んだのだ。
角田がマグヌッセンとバトルしている間に、ヒュルケンベルグはマグヌッセンとのギャップを20秒以上に開いた後にピットイン。角田に逆転されることなく、マグヌッセンの前でコースに復帰。このマグヌッセンのサポートによって、ヒュルケンベルグは10位に入賞した。
マグヌッセンはこう振り返る。
「僕はチャンピオンシップを争っているわけではないので、本当の戦いはコンストラクターズ選手権にある。2戦連続でペースがいいことを証明することができた」
小松礼雄代表も、献身的なマグヌッセンの走りを次のように讃えた。
「今日は素晴らしいチームワークでした。10位(1ポイント)を争っていましたが、相手は8人のドライバーだったから、チャンスをつかむためにはすべてが完璧でなければなりませんでした。今日はケビンがふたつのペナルティを受けた後、彼が素晴らしい判断を下し、目標となるラップタイムを刻みながら、後続を見事に押さえる素晴らしい走りをしてくれました」
ただし、ポイント獲得の可能性を潰された形となったRB陣営にとっては、マグヌッセンのドライビングには納得がいかない様子だった。角田はこう言う。
「ルール上、問題はありませんが、フェアじゃないとは思います」
さらに「コースオフしてでもオーバーテイクしたことは、汚いと思いますか?」という質問に対しては、「汚いですけど、彼の視点から考えれば、チームメイトがポイントを獲ったので、よかったんじゃないかと思います」と語った。
RB陣営が問題視するのは、マグヌッセンがコース外から角田を抜いた行為だ。ローレン・メキース代表はこう指摘する。
「マグヌッセンはチームメイトを助けるためにコースをカットし、ユウキの前に出てチームメイトとのギャップを開けるために全体のペースを落とした。これでマグヌッセンに科せられた10秒のタイムペナルティは意味をなさなくなり、ユウキのレースが台無しになってしまった」
レーシングディレクターのアラン・パーメインは、さらに語気を強める。
「あの行為はちょっと受け入れがたいものだった。マグヌッセンがコースを外れてわざとユウキの前に出て、1周に最大2秒もペースを落とした。これはスポーツマンシップに反する行為だ。我々は他のチームともに、今後のレースについてFIAと話し合うことになるだろう」
ルールの範囲でチームメイトを有利にするために、もうひとりがペースをコントロールするという作戦はこれまでも行われてきた。もちろん、それらのいくつか(たとえばセーフティカー導入時に故意に遅く走行して、前を走るチームメイトを大きく先行させるような行為)については、その後ルールが見直されてきた。ただし、今回のマグヌッセンのようにコース外走行によってアドバンテージを得たものに対するペナルティはタイムペナルティしか想定されておらず、その範囲内で行ったマグヌッセンの行為はルール違反ではない。
マグヌッセンのスロー走行のあおりを食ったもう1チーム、ウイリアムズのアレクサンダー・アルボンは、ハースの戦略をこう称賛した。
「ハースはケビンを使って集団を引き止める戦略を採り、ケビンはとても賢い仕事をした」
さらに車両パフォーマンス責任者のデイブ・ロブソンもハースに白旗を挙げている。
「ハースの賢明なチームプレーによって、最終的にポイントを獲得することはできなかった」
何より、RBがレース中に抗議せず、レースコントロールも問題視していなかったことを見ても、今回の一件は『レースの一部』なのである。
「あそこまでしなくとも」という意見があることも理解できるが、今年のF1でトップ5チーム以外がポイントを獲得するには「あそこまでしないと獲れない」のも現実だということを今回のサウジアラビアGPは教えてくれたような気がする。
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