【スポニチスカウト部(6)】仙台育英・高田庵冬内野手 確実性増す“みちのくの飛ばし屋”
2025年3月11日(火)6時0分 スポーツニッポン
今秋のドラフト候補となる選手にスポットを当てる「スポニチスカウト部」。アマチュア担当記者の独自目線による能力分析とともに、選手の素顔を紹介する。第6回は仙台育英(宮城)の高田庵冬内野手(3年)。22年夏は東北勢初の甲子園優勝を果たすも、3季連続で甲子園を逃している名門にメジャー級のスケールを持つ原石が眠っていた。
1メートル82、90キロのダイナミックボディーは漫画「ドカベン」に登場する岩鬼正美をほうふつさせるド迫力。守備では三塁線の打球に飛びつき、一塁へ矢のような送球。打撃練習では左翼ネットを破らんばかりの痛烈な打球を連発。名将・須江航監督も才能を認めている。
「飛ばすことにかけては過去を含めて一番です。いろいろな強豪校と試合をしてきましたが、高田より飛ばす子に会ったことがありません。それに足と肩もある。猛練習をしてくれたので、サードで使いたいですね」
春季大会では明訓高校・岩鬼と同じ「1番・三塁」で起用濃厚だ。規格外のスケールを備える高田だが、本人も認める唯一の欠点は「打撃の確実性」。昨秋の東北大会は準々決勝で聖光学院(福島)に2—3で惜敗。高田はソロを放つなど3打数1安打で2打点も、勝てば翌春の選抜当確ラインを突破する大一番を落とし、「野手が投手に頼りっぱなしだった」と打てなかった2打席を悔やんだ。
確実性向上に取り組んだ冬。ティー打撃では同じコースを同じ方向に飛ばすことでスイングの再現性を高めた。テーマは「百発百中」。着弾点が目標からズレた際にはスイングを細かく修正。既にスタートしている紅白戦では「コンタクト率が上がり、甘い球をファウルにする機会が減ってきた」と実感した。
高校通算本塁打24。伝説級の一発を刻んできた。小学生の時は「ヒットエンドランで柵越えを打ってしまった…」と早くも飛ばし屋っぷりを発揮。滋賀から越境入学した仙台育英の1年春の紅白戦ではグラウンドの左翼防球ネットを軽々と越える推定飛距離140メートルの場外弾。昨秋の宮城県大会でも仙台市民球場で左翼に場外弾をマークした。立派な体に有り余るパワーでバットをしならせるようにフルスイング。芯に当たれば球場の大きさは関係ない。
滋賀野洲ボーイズでは今春選抜で優勝候補に挙がる横浜のエース左腕・奥村頼人と同学年のチームメート。昨秋の東北大会準々決勝で敗戦した際にはLINEが来た仲だ。昨秋は明治神宮大会で日本一に立った友の存在。「自分も負けたくないと思っている。選抜も横浜高校は勝ち抜くと思うんですけど、思う存分活躍していただいて、夏の甲子園で自分たちのためてきた努力を奥村に対して発揮したい」と聖地での激突を熱望している。
昨冬までは大学進学を基本線としていたが、ここに来て複数球団が将来性あふれるスラッガーに熱視線を送る。「野球を始めた小1の時からいつかプロ野球に入って親に恩返しをしたいという思いがあります」と高田。課題を克服して完全体となった時、ドラフト戦線に大器が急浮上する。 (柳内 遼平)
☆球歴 城南小1年から多賀少年野球クラブで野球を始め、彦根南中では滋賀野洲ボーイズに所属。仙台育英では1年春、秋、2年夏、秋にベンチ入り。憧れの選手は巨人・岡本。