2026年導入のエンジン規則を廃止する説に、F1参戦を控えるアウディが強く反対「参入を決定した重要な要素」

2025年3月28日(金)18時10分 AUTOSPORT web


 アウディは、ノスタルジックなV10エンジン復活に食指を動かしたF1を阻止し、2026年に導入されるパワーユニットの規則を廃止する動きに断固反対した。


 早ければ2028年か2029年に持続可能な燃料で動くV10エンジンを採用するために、FIAが新レギュレーションの廃止を模索するなか、アウディは、同ブランドのF1参入においてハイブリッドが果たした重要な役割を挙げ、ハイブリッドの方向性を擁護している。



 マニュファクチャラー間でくすぶっているこの論争は、意見が分かれている。アウディはメディアに送った声明のなかで、燃焼と電気エネルギーの50対50の動力分割を特徴とする2026年のターボハイブリッドルールは、同社のF1への取り組みにとって極めて重要だと強調した。


「2026年シーズン以降に導入される予定の新たなハイブリッドパワーユニット規則を含む今後のレギュレーション変更は、アウディがF1に参入することを決定した重要な要因だった」


「これらのパワーユニットレギュレーションは、アウディが市販車のイノベーションを推進するのと同じ技術的進歩を反映している」


 アウディにとって、ハイブリッド技術は単なるレーススペックではなく、市販車の未来への架け橋なのだ。



アウディのF1ショーカー(ローンチリバリー)

■ビジョンの衝突


 FIAがターボハイブリッドの見直しを推進しているのは、現在のエンジンが高価すぎるというコスト上の懸念に根ざしている。FIAは、2028年までにV10エンジンに移行するというアイデアを提案しているが、この動きにはFIA、フォーミュラワン・マネジメント、そしてF1の5社のマニュファクチャラーのうち4社からの支持が必要だ。


 メルセデスやホンダがフェラーリとレッドブルと連携すれば、アウディの反対だけで計画を阻止することはできないが、FIAのシングルシーター担当ディレクターを努めるニコラス・トンバジスは、公平性が多数決に勝ると主張している。


「何よりも公平であることが義務だ。人々は多額の資金を投資してきている」とトンバジスは語った。


「9人が賛成して、ひとりが反対し、そのひとりが不当に扱われているのであれば、我々は常にそのひとりを守ろうとするだろう。我々は多数派だからといって、『OK、やってみよう』と言うつもりはない」



レッドブル・パワートレインズのファクトリー

 V10推進派であるレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は、ロマンティックな魅力があることを認めながらも、そのタイミングについては疑問を呈した。


「我々のなかに眠るロマン、つまり、叫ぶようなV10エンジンは、それが責任とともに完全に持続可能な燃料を使って導入される限りは、非常に魅力的なものだ」


「大きな疑問は、それがいつなのかということだと思う。そして、今日からその後に至るまでのゲームプランはどうなるのだろうか?」


「なぜなら、2026年に向けて現在懸命に取り組んでいるものから離れることは、明らかに大きな転換となるからだ」


■事業計画の悪夢とコミットメント


 2026年のルールを完全に廃止するには、全会一致の同意が必要だが、アウディとレッドブル/フォードには現行仕様のパワーユニットがない。現在レッドブルとレーシングブルズにパワーユニットを供給しているホンダは、2026年からアストンマーティンにパワーユニットを供給することになっているため、これは難しい課題だ。


 アウディのような新規参入企業を誘致できるように設計された2026年の規則は、すでにマニュファクチャラーの戦略を形作っている。この技術へのアウディの投資は簡単に取り消せるものではなく、少しでも遅れれば新規参入者が取り残される恐れがある。


 一方で、メルセデスF1のチーム代表であるトト・ウォルフは中立の立場を取っている。


「我々メルセデスとしては、将来8気筒になるのか、それとも10気筒になるのか、自然吸気か、それともターボか、エネルギー回生か、どのようなサイズか、などといったことに常にオープンでいる」


「来年は、アウディのような新規参入チームに対応するためにFIAが導入したエキサイティングなレギュレーションの下でレースをすることになると思うし、我々はそれを達成できたと思う」



2025年F1第2戦中国GP クリスチャン・ホーナー代表(レッドブル)&トト・ウォルフ代表(メルセデス)

 FIAのトンバジスは、強制よりも合意することを強調した。


「我々はここで合意形成を図ろうとしているが、もしそれが失敗すれば、現状のままでいるだろう」とトンバジスは語った。


 アウディにとって現状維持とは、たとえ他社がV10へのノスタルジーに惹かれても、自社のブランド精神に合致するターボハイブリッドの未来を堅持するということだ。ホーナーは現行のルールの欠陥を嘆き、「おそらくは電動化と燃焼の分割による欠点の一部を、シャシーが大きく補わなければならない状況に陥っている」と述べたが、アウディはそれを負担ではなく基礎とみなしている。


 2026年に向けて時計の針が進むなか、アウディの公の立場は、F1の技術的な魂をめぐるより広範な戦いがあることを示唆している。このスポーツは持続可能なハイブリッドの進化を受け入れるのか、それとも過去のV10の鋭く甲高い雄叫びを追い求めるのか? 今のところ、アウディが前者を求めてることに変わりはない。

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