ヨーロッパ・ラリー選手権が開幕。初戦はシトロエン駆る王者が大クラッシュの波乱

2019年3月29日(金)16時51分 AUTOSPORT web

 ERCヨーロッパ・ラリー選手権の2019年シーズン開幕戦、アゾレス・ラリーが大西洋に浮かぶポルトガル領アゾレス諸島の風光明媚な全15ステージで争われ、2018年に自身初の欧州チャンピオンに輝いたアレクセイ・ルキヤナク(シトロエンC3 R5)がほぼラリーの全行程で主導権を握ったものの、レグ2でのパンクから無念のクラッシュ。ポーランド人の伏兵ウカシュ・ハバイ(シュコダ・ファビアR5)がERC初優勝を飾った。


“ロシアン・ロケット”の異名を持つ王者ルキヤナクは、このオフシーズンには各参戦チームからプライベートテストに招待され、昨季までの愛機フォード・フィエスタR5を筆頭にシュコダ・ファビアR5、シトロエンC3 R5と最新R5カーを立て続けにテスト。開幕前には最新モデルとなるフォルクスワーゲン・ポロGTI R5へのスイッチも匂わせる発言もあった。


 しかしディフェンディングチャンピオンが2019年のタイトル防衛に向け選んだのは、フランスの強豪セインテロック・レーシングへの加入で、新たに同チームが昨年よりテスト投入してきたシトロエンC3 R5のステアリングを握ることを決断した。


 3月21日木曜からレグ1として開幕した3つのループステージでは、シトロエンに乗る王者が全SSでベストタイムをマークし、今季からERC1へと改称したジュニア登録のピエール-ルイ・ルーベ(シュコダ・ファビアR5)に対し3.1秒のマージンを築き、幸先良くラリーリーダーに立ってみせる。


「やはり初めてドライブする新型マシンで速く走れるかどうか、スタートする前までの長い間、本当に不安でしょうがなかったよ」と心境を吐露したルキヤナク。


「実はダッシュボードの計器類や一部のファクションボタンが充分に機能していなくて、万全な状態ではなかったけれど、このループステージでは細心の注意を払ってドライブすることに集中した。なにせラリー前には40kmほどのマイレージしか稼げていなかったからね」


「でもそうした些細な問題以外、マシンはちゃんと機能してくれた。ミスもほとんど犯さなかったし、このまま続けていきたいね」と、王座防衛に向け初日から手応えを得たチャンピオン。


 こちらも今季からファビアをドライブする2番手ルーベに続き、2016年アゾレス勝者でもある地元のスター、リカルド・モーラ(シュコダ・ファビアR5)が3番手、ERC1登録のクリス・イングラム(シュコダ・ファビアR5)が続き、ダブルERCジュニアタイトルホルダーでこちらも今季からバウムシュラッガー・ラリー&レーシングに復帰しVWポロGTI R5に乗り換えたマリアン・グリーベルのトップ5でレグ1前半戦を折り返すことになった。

今季からセインテロック・レーシングへ移籍し、新たにシトロエンC3 R5をドライブする王者アレクセイ・ルキヤナク
古巣BRRに復帰加入したマリアン・グリーベルはVWポロGTI R5の初戦で6位完走
イギリス人のクリス・イングラムはERC1登録で参戦。Toksport WRTのシュコダでクラスウイン、総合3位を獲得
2C Competitionから参戦するコルシカ島出身のピエール-ルイ・ルーベはレグ1後半セクションで失速


 明けた22日金曜のレグ1後半戦でもルキヤナクの勢いは衰えず、この日は6ステージでベストタイムを記録。2番手に浮上してきたモーラに対し40.1秒という大差をつけて最終日を迎えることとなった。


 一方、この日オープニングステージでコーションを見落としスピンを喫したルーベに代わり、スポーツ・レーシング・テクノロジーズ(SRT)のファビアR5をドライブするポーランド人のウカシュ・ハバイが「ERCに参戦したキャリア史上、最良の1日」とコメントするほどの好走を見せ、モーラの背後3番手のポジションにまで浮上してきた。


 迎えた23日土曜の最終レグ2は、天候が急変し雨交じりの難コンディションと化すなか、アゾレス2勝目に向けスタートを切ったルキヤナクを不運が襲う。


 フィニッシュまで残り2ステージとなったSS14でパンクチャーに見舞われたルキヤナクはこのステージ終了時点でハバイ、モーラに次ぐ3番手にまでドロップ。


 なんとかポジション回復に向けリエゾンでスペアタイヤに交換し最終ステージに臨んだルキヤナクだったが、彼のシトロエンC3 R5はカットされたタイヤの構造体によってブレーキラインにダメージを与えており、最終SS最初のコーナーで大クラッシュ。チャンピオンとの初戦だったセインテロック・レーシングのC3は大破し、クルー双方は無事だったもののマシンは深刻なダメージを受けることとなった。


 これにより最後の最後に大逆転でラリーリーダーの座に着いたハバイが、3連覇王者カエタン・カエタノヴィッチ、そしてロバート・クビカに並ぶポーランド人ERCウイナーの称号を手にするシリーズ初優勝を飾ることになった。


「最終ステージはクレイジーな上に、感じたことのない重圧でこれまでで最も困難なSSだったよ」と、勝利の余韻を噛みしめたハバイ。


「勝利の鍵は昨日のレグ1セカンドステージのペースにある。終始僕らより速かったアレクセイ(・ルキヤナク)には申し訳ないが、これもラリーだ。この勝利には運だけでなく、ここへたどり着くまでの大きな努力があったんだと言いたいね」


 ハバイの後方8.4秒差に地元表彰台を決めたモーラが入り、ERC1ジュニア優勝のイングラムが総合3位。そして昨季もタイトル争いを展開し、今季からチーム・ヒュンダイ・ポルトガルに移籍したブルーノ・マガラエスが初日のセットアップ不振から4位にまでカムバックしている。


 続く5月2〜4日開催の2019年ERCシーズン第2戦もシリーズの名物イベント、ラリー・イソラス・カナリアスとなり、火山性岩石を含む舗装ステージは雨が降ってもグリップレベルが高く、ライントレースと正確なスピードコントロールが試される。

リカルド・モーラと並ぶ地元のスター、ブルーノ・マガラエスもヒュンダイでの初戦で総合4位フィニッシュ
フォード・フィエスタR5からスイッチのリカルド・モーラは総合2位で地元に凱旋
2015年ポーランド王者のウカシュ・ハバイが難コンディションを制してERC初優勝を飾った



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