箱根駅伝2区で日本人最高記録の吉田響がサンベルクスとプロ契約正式発表 入社式にも参加
2025年3月31日(月)18時0分 スポーツ報知
プロランナーとしてサンベルクスと所属契約を結んだ吉田響(左から2人目)。入社式に出席し、陸上とトレイルランの二刀流選手として活躍することを誓った(左から鈴木優喜朗専務、吉田響、鈴木秀夫社長、田中正直総監督)
第101回箱根駅伝(1月2、3日)で、各校のエースが集う「花の2区」(23・1キロ)で、日本人最高記録の1時間5分43秒で区間2位となった創価大の吉田響(4年)が実業団のサンベルクスとプロランナーとして所属契約を結んだことが31日、分かった。1日午前0時にサンベルクスのホームページで正式発表された。2日に会見が行われる。吉田響は31日昼に東京・足立区の本社で行われた入社式に「サプライズ参加」。新しい仲間と昼食会などで交流し、お互いを激励した。
吉田響は箱根駅伝終了後、従来の陸上と不整地を走るトレイルランの「二刀流」のプロランナーとなることを宣言。複数の実業団チームからオファーを受けた中で、近年、急成長中のサンベルクスと所属契約を結んだ。25年度から「サンベルクスの吉田響」として活動する。「サンベルクスさんは僕が競技に打ち込める環境を用意してくれました。とても、ありがたいことです。入社式にも出席させていただき、とても活気あふれる会社と感じました。サンベルクスの一員として頑張ります」と感謝を込めて所信表明した。
サンベルクスは企業としてもチームとしても成長を続けている。スーパーマーケットのベルクスを東京、千葉、埼玉に48店舗を展開。陸上部は2012年に創部し、15年に全日本実業団駅伝(ニューイヤー駅伝)に初出場。昨年11月の東日本実業団駅伝では3位と健闘した。今年1月1日のニューイヤー駅伝は17位だった。昨年のパリ五輪では浜西諒が男子20キロ競歩に出場(18位)。今年3月の東京マラソンでは市山翼が日本人トップの10位となった。
サンベルクスの田中正直総監督は「今年度のチーム目標は来年1月1日のニューイヤー駅伝で8位入賞です。吉田選手は(ニューイヤー駅伝予選を兼ねる)東日本実業団駅伝(11月)とニューイヤー駅伝に出場してチームに貢献することを期待しています。その2大会以外はトレイルランを含めて自由に活動して活躍してほしい」と期待を込めて話した。
サンベルクスの万全のバックアップ体制について、吉田響は「会社とチームに恩返しをします。ニューイヤー駅伝ではエース区間の2区でチームに貢献する走りをしたい」と、箱根駅伝に続いてニューイヤー駅伝でも「花の2区」で快走することを誓った。
将来の目標としては「2028年ロス五輪マラソンでメダル獲得を目指します」と意欲的に話す。そのための第一歩として「今年度中に初マラソンを予定しています」と明かした。
二刀流ランナーとしてトレイルの世界にも積極的に挑む。7月には富士登山競走に出場する予定だ。「2029年のトレイルランの世界選手権出場を目指しています」と前向きに話した。
吉田響は唯一無二のランナーだ。
21年に静岡・東海大静岡翔洋高から東海大に入学。22年の箱根駅伝では1年生ながら山上りの5区で区間2位と好走した。東海大2年時も箱根駅伝予選会でチームトップとなるなど活躍したが、その後、チームを離脱。心機一転、競技環境を変えるために23年春創価大3年に編入学した。3年時は出雲駅伝5区で区間賞相当。全日本大学駅伝では5区で区間新記録の区間賞を獲得した。2年ぶりの箱根駅伝5区では区間9位にとどまったが、学生ラストシーズンにはさらに飛躍した。出雲駅伝2区で9人をごぼう抜きして首位に浮上。圧巻の区間賞だった。全日本大学駅伝では2区で青学大の鶴川正也(4年)と壮絶なデッドヒートを展開。区間賞は1秒差で鶴川に譲ったが、積極的にレースを引っ張る姿は区間2位という結果以上のインパクトを残した。
最後の箱根駅伝では初めてエース区間の2区に挑戦。首位の中大と1分55秒差の17位でタスキを受けた吉田響は、13人をごぼう抜きして4位に浮上。区間賞と区間記録(1時間5分31秒)は東京国際大のリチャード・エティーリ(2年)に譲ったが、前回2区区間賞の青学大・黒田朝日(3年)、国学院大・平林清澄(4年)、駒大・篠原倖太朗(4年)ら各校のエースに競り勝ち、日本人トップの区間2位。しかも、従来の区間記録(1時間5分49秒、21年東京国際大・イェゴン・ヴィンセント)と日本人最高記録(1時間5分57秒、20年東洋大・相沢晃)を超えた。
全身全霊で走り、驚異的な粘り強さを持つ。その潜在能力は未知数だ。
「これからも吉田響にしかできない走りをしていきたいです」と話す。サンベルクスのプロランナー吉田響はロード、山道も突っ走っていく。
◆吉田 響(よしだ・ひびき)2002年8月20日、静岡・御殿場市生まれ。22歳。御殿場市立原里中3年時に全国都道府県男子駅伝6区で2位。東海大静岡翔洋高2年時の同駅伝5区で22位。21年、東海大入学。1年時は箱根駅伝5区2位。23年、創価大3年に編入学した。3年時は出雲駅伝5区区間賞相当、全日本大学駅伝5区区間賞、箱根駅伝5区9位。4年時は出雲駅伝2区区間賞、全日本大学駅伝2区2位、箱根駅伝2区2位。自己ベスト記録は5000メートル13分39秒94、1万メートル28分12秒01、ハーフマラソン1時間1分45秒。161センチ、46キロ。
◆サンベルクス 1968年、東京・足立区に前身となる青果専門店を開業。85年にスーパーマーケット1号店を埼玉・三郷市にオープン。95年、社名を「サンベルクス」、店名を「スーパーベルクス」に変更。現在は東京、千葉、埼玉に48店舗を持つ。陸上部は2012年に創部。15年にニューイヤー駅伝初出場。ニューイヤー駅伝の最高成績は15位(23年)、東日本実業団駅伝の最高成績は3位(24年)。24年、パリ五輪男子20キロ競歩に浜西諒が出場(18位)。練習拠点は足立区。