安田祐香が熊本でマキロイになる? 飛躍支える大西翔太コーチがかけた“魔法の言葉”
2025年4月18日(金)9時0分 ALBA Net
安田祐香と、その活躍を支える大西翔太コーチ。技はもちろん、心の成長が飛躍につながっている。(撮影:佐々木啓)
<KKT杯バンテリンレディス 事前情報◇17日◇熊本空港カントリークラブ(熊本県)◇6565ヤード・パー72>
前週の「富士フイルム・スタジオアリス女子オープン」で4ホールに及ぶ雨中のプレーオフを制し、2勝目を挙げて熊本に乗り込んで来た安田祐香が、いたずらっぽく笑った。「今度勝てたらパターを放り投げてみようかな」。昨年の初優勝時も、2勝目も派手なガッツポーズなどは一切なし。感情をほとんど表に出さないプレースタイルそのままの静かな優勝だったが、その理由は「タイミングがわからないんです」と苦笑した。
その翌日に映像で見たのが、男子メジャー「マスターズ」でキャリアグランドスラムを達成したローリー・マキロイ(北アイルランド)の歓喜の爆発だった。ウイニングパットを決めると、両手を挙げ、パターを放り投げる。そして18番グリーンに両ひざをつき、両こぶしを握り締めて涙の雄たけび。感動的なシーンに刺激を受けて、口にしたのが前述のコメント。生真面目な24歳には高難度なパフォーマンスだが、そんな軽口がたたけるのも、揺るぎない強さと自信を身に着けたからだろう。
2019年のプロテストに合格し、初優勝まで133試合を要した。それからわずか12試合目での2勝目。初Vは27ホールの短縮競技だったが、3日間大会だった前週は54+4=58ホールの長丁場。「やっぱり(1勝目は)たまたまとか思われるので、そういうのを含めて3日間を戦って優勝したいと思っていた」。短期決戦ゆえの難しさもあった初優勝の価値は下がるはずもないが、心のどこかに引っかかっていたつかえは先週で取れた。
プロ5年目の初優勝で殻を破り、さらに勝ち星を積み上げた。その過程を間近で見ていた青木瀬令奈のコーチ兼キャディを務める大西翔太氏は「一番変わったのはメンタル。本当にハートが強くなった」と精神面の成長が優勝への最大の原動力と断言した。「ゴルフの波長、考え方が合っていた」(大西氏)とトーナメント会場で青木を交えた交流が自然とスタート。2023年のシーズン前には沖縄で合宿を行うなど安田にとって大西氏は“第二のコーチ”となり、パットの名手であるツアー通算5勝の青木は尊敬すべき“姉弟子”となった。
大西氏が授けた言葉はある意味、しごくシンプルだった。「自分のゴルフをどれだけ貫き通せるか。周りに惑わされることなく、それができれば必ず結果はついてくる」。自分対コースだけならできることも、そこに人が介在するとゴルフは途端に難しくなる。
2017年に「日本女子アマ」を制し、19年には「アジア太平洋女子アマ」のタイトルを獲得。海外メジャーの「エビアン選手権」、「AIG女子オープン」(全英女子)にも出場した。アマ時代の実績はピカイチ。プロ入り後は逸材ゆえに悩める日々が続いたが、「安田さんは小技もうまいし、引き出しがたくさんある選手。自分のゴルフを信じ切ることができれば、間違いなくワンステップ上に行けると思っていました」という大西氏の魔法の言葉が「自分を信じる」だった。
その見立て通りに初Vを果たし、心技体の3つが整った今季は、さらにパフォーマンス力がアップ。「安田祐香の時代がやってきますよ」という“第二のコーチ”の予想も現実味を帯びてきた。
今週は4年連続出場で過去に予選落ちがなく、23年には5位に入った大会。「割と好きなコース。来週は試合がないので、いい成績を残して休みに入りたいなと思います」。パター投げはともかく、人生最大のガッツポーズが飛び出す可能性は十分にある。(文・臼杵孝志)
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