売上“未達”も失敗じゃない 倉本昌弘が語る前澤杯の手応え「この時点で大成功」

2025年4月24日(木)7時30分 ALBA Net

倉本昌弘が語る、前澤杯の大きな価値とは(撮影:鈴木祥)

<前澤杯 事前◇23日◇MZ GOLF CLUB(千葉県)◇6652ヤード・パー70>

実業家・前澤友作氏が発案・企画し、自身の名前を冠した新たなトーナメントがスタートした。革新的なこの大会に選手としても出場する日本ゴルフツアー機構(JGTO)副会長・倉本昌弘は、この新大会をどう見ているのか。


プロアマ最終日となった23日はあいにくの雨。ラウンド後、報道陣の取材に応じた倉本は「疲れました…」と、疲労困憊の様子だった。異例の10日間にわたって開催された、これまでにないスケールのプロアマ戦。69歳の倉本にとって、3日間の参加でも体力的な負担は大きかった。

選手としては厳しさもあったが、大会運営の立場としては“うれしい悲鳴”でもあった。「他の選手たちは最大で7日間ラウンドしていました。もちろん疲労はあったと思いますが、『こんな機会はなかなかない』『試合として成立して良かった』といった前向きな声を多く聞きました」。

舞台裏についても明かされる。「昨年12月、前澤さんが我々選手の前に立ち、今回の大会に対する想いを直々に語りました。『あなたたちは、この大会に協力してくれますか?』と聞かれて、選手たちも『ぜひやらせてください』と即答しました。あの時の空気は今でも覚えていますし、その想いがあったからこそ、この10日間のプロアマ戦が成り立ったのだと思っています」。選手たちも前澤氏の熱意に応える形で、一丸となって大会を盛り上げている。

大会開催のきっかけは、昨年の「BMW日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ」のプロアマまでさかのぼる。石川遼と前澤氏が同組でプレーし、「試合数をどう増やすか」について話し合いが行われた。それならばと、前澤氏が石川と倉本を自宅に招き、本格的な構想が始まったという。

当初、前澤氏は大会開催には消極的だったというが、「不特定多数のファンからお金を集めるべきではないか」というアイデアが、新たなスキームの誕生につながった。もちろん、前澤氏が自身の資金で賄うことも可能だったはずだが、「経済を回すこと」を重視し、チケット販売による売り上げを賞金に充てるという、前例のない形を取り入れた。

1組最大3人、1枚100万円のチケットに加え、好きなプロと回れる権利はオークション形式で販売。3月には、石川と最終日にプレーできるチケットが即決500万円で落札され、“夢を買う”体験が実現された。

当初の賞金総額は4億円を予定していたが、プロアマ戦の売り上げは想定を下回る3億3000万円で、賞金総額は2億円で確定。優勝賞金は4000万円となり、残りの1億3000万円は大会運営費に充てられた。

結果的には“売り上げ未達”だったが、倉本は新たなファン層の獲得を大きな成果と捉える。「観戦だけではなく『一緒にプレーできる』という体験は、これまでのゴルフ界にはなかった新しい価値です。『夢のような時間だった』という声をいただいて、この時点で大会は大成功だったと感じています」。

成功とする一方で、改善点も見えてきた。「販売の打ち出し方には改善の余地がありました。『最大4億円!』ではなく、『まずは2億円を保証し、皆さんの参加で最大4億円に』と伝えれば、より納得感があったのではないか。賞金の仕組みも、もっと分かりやすく伝える必要があります」。販売面の反省が、来年への改善へとつながると前向きだ。

さらに、こう続けた。「これは単なる『代表的な大会の一つ』ではなく、日本ゴルフ界における“新たなスキーム”を提示した大会。男子、女子、シニア問わず、従来にない仕組みが導入されました。50年以上続いてきた現行の枠組みを打ち破ったという意味で、大きな意義があります」。

倉本によれば、前澤氏は「来年に向けてやる意欲がある」と語っているという。本戦はまだこれからだが、新たな価値観を提示した前澤杯は、今後、日本ゴルフ界の未来を切り拓く試金石となるか。大きな期待が寄せられている。(文・齊藤啓介)


<ゴルフ情報ALBA Net>

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