モデルハードラー・田中佑美 9月東京世界陸上へ「ベストなパフォーマンスを国立競技場で」…29日国内初戦

2025年4月24日(木)5時0分 スポーツ報知

世界陸上へ向け、単独インタビューに応じた田中佑美(カメラ・小泉 洋樹)

 東京世界陸上(9月13〜21日、東京・国立競技場)のシーズンが、本格始動する。女子100メートル障害で昨年のパリ五輪代表・田中佑美(26)=富士通=は29日の織田記念で国内初戦を迎える。今季は2月に60メートル障害で8秒00の日本新記録をマークするなど、成長著しい。モデル活動など陸上界を超えて活躍を続けるハードラーが、好調の要因や冬季の取り組み、自身2度目となる世陸への思いを熱く語った。(取材・構成=手島 莉子)

 熱狂に包まれた国立競技場を思い浮かべ、田中の瞳は輝いた。いよいよ始まる自国開催の世界陸上シーズン。23年世界陸上、昨年のパリ五輪を経験した田中は「五輪があってスポーツ自体に注目していただいている中で、翌年に自国で世界陸上。すごくラッキーなことだと思うし、頑張りたい」と意気込む。今季は昨年同様、室内競技会からシーズンに入った。2月は60メートル障害で日本新記録(8秒00)を樹立し、3月にオーストラリアで出場した100メートル障害初戦は13秒11の好タイム。それでも「(60メートル障害で)7秒台を出したかった。課題は残る」と満足はしていない。

 年々、成長を遂げてきた。23年4月に自身初の12秒台となる12秒97を記録。その後は12秒台を連発し、今や日本歴代2位の12秒83を自己ベストに持つ日本トップハードラーだ。4歳から約10年間習っていたクラシックバレエで培った柔軟性と172センチの高身長で、しなやかに障害を越えていく。強い足首を生かしたバネのある走りも特徴だが、冬場はさらなるベースアップとして「全身を使って走れるように」と坂ダッシュやバウンディング(着地した足の反動を利用して弾みながら大股で前方へ進む動作)に着手。「1台目までの加速が安定している」と走り方はよりスムーズになった。「あえて『絶好調です』みたいな発言はしません」と慎重な田中だが、結果は確かな自信に変わっている。

 陸上以外にも活躍の場を広げてきた。昨年2回、女性ファッション誌「BAILA」の企画でモデルを経験し、今年の冬はマラソンイベントでランウェーにも登場。「陸上を見たことがない人にも興味を持ってもらえる機会」と“広報”活動には前向きで「違う分野で活躍されている方のお話も聞けるし、リフレッシュ」と、競技にも好影響を与えている。

 昨年のパリ五輪は敗者復活戦を経て、福部真子とともに日本勢歴代最高に並ぶ準決勝に進出。「(空気に)のまれることなく大舞台で力を発揮できた。今後も良い風に働く」と貴重な経験を積み、今季はさらなる飛躍へ。「参加標準記録(12秒73)は一つの指標。(12秒)7台を出せないと戦っていけない。出場できたら、ベストなパフォーマンスを国立競技場で発揮できるように頑張りたい」。世界大会の同種目で、決勝進出なら日本女子では初の快挙になる。国内初戦から波に乗り、世界陸上の大舞台で観客を魅了する走りを見せる。

 ◆日本女子の100メートル障害 持ちタイム12秒台の選手が7人もそろう大混戦。今季限りで第一線を退く意向を示している“ママさんハードラー”の寺田明日香(35)や日本記録保持者の福部真子(29)、スプリント能力にたける青木益未(31)、田中らがいる。世界陸上代表には、参加標準記録を突破した上で日本選手権(7月4〜6日、東京・国立競技場)3位以内で内定する。

 ◆田中 佑美(たなか・ゆみ)

 ▽生まれ 1998年12月15日、大阪市。26歳。

 ▽身長 172センチ

 ▽競技歴 関大第一中から陸上を始め、関大第一高では15、16年に全国高校総体2連覇。立命大に進み、19年日本インカレ優勝。21年富士通入社。23年4月に12秒97をマークし、同年夏のブダペスト世界陸上は予選敗退。同10月のアジア大会銅メダル。24年パリ五輪は敗者復活戦の末に準決勝に進んだ

 ▽趣味 編み物にはまり中。「海外遠征で移動の時間が長い。最初はヘアゴムとかを作っていましたが、途中から大作が作りたくなって…」とヨーロッパのスーパーを駆け回って毛糸を集め、長いマフラーを作成。「その後は、全部ほどいて糸玉に戻しました。作ることが楽しいんです」

 ▽自慢の黒髪 今年は化粧品メーカー柳屋本店の「黒髪大賞」特別賞を受賞。大学時代は様々な髪色にしていたが「染める前のツルンとした手触りや枝毛のない髪が欲しくなった」と今は地毛を楽しんでいる

 ▽インスタグラム フォロワーは昨年のパリ五輪後に約6万人増。現在は約9万人で、海外遠征の様子や私生活の写真を日々アップしている

宝塚音楽学校の受験届入手も

 幼少期からクラシックバレエを習い、「人前に立って踊ったり、舞台に立つことは昔から好き」。田中の憧れは宝塚歌劇団だった。高い柔軟性などを理由に関大第一中で陸上部のハードル種目を始めると、関大第一高では高校総体2連覇など競技力がメキメキ向上した。

 3年時、宝塚音楽学校の受験届を入手したが「そこから足が重く、両親が『そんな程度の気持ちならやめておきなさい』って」と目標を陸上に一本化し、立命大へ進んだ。人生の分岐点を経て、今や日本女子トップハードラーに成長。9月には、東京・国立競技場の“ステージ”で輝く田中の姿を、多くのファンが心待ちにしている。(莉)

 ◆織田記念(29日、広島広域公園競技場) 男子100メートルは昨年のパリ五輪代表の坂井隆一郎(27)=大阪ガス=、桐生祥秀(29)=日本生命=、日本記録保持者の山縣亮太(32)=セイコー=ら日本のトップ選手がそろって出場登録。女子100メートル障害は田中、福部ら。女子1500メートルには後藤夢(25)=ユニクロ=、ドルーリー朱瑛里(17)=津山高=。女子5000メートルには今月の日本選手権1万メートルを制した広中璃梨佳(24)=日本郵政グループ=、パリ五輪代表の山本有真(24)=積水化学=らが名を連ねている。

スポーツ報知

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