世界6階級を知るドネアが語った井上尚弥の“近未来” フェザーでの可能性は?「困難に直面すると思う。でもパワーを発揮する」
2025年4月29日(火)7時0分 ココカラネクスト

井上の強さを知るドネアが、その可能性を論じた。(C)Getty Images、(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext
日本とは異なる「ラスベガスの難しさ」
ボクシング大国のレジェンドが、「世界最強」と称される“モンスター”のさらなる快進撃を予測した。
ボクシングの元5階級制覇王者ノニト・ドネア(フィリピン)が、4月27日に米興行大手『Top Rank』の公式YouTubeチャンネルで公開された動画に出演。5月4日に米ラスベガスで防衛戦を控えるスーパーバンタム級の4団体統一王者である井上尚弥(大橋)の近未来を見通した。
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井上にとって次戦は世界的な声価を確固たるものとする上で重要な一戦となる。WBA世界同級1位ラモン・カルデナス(米国)を相手にした戦いの舞台は、業界屈指のビッグマッチが組まれるメキシコの記念日「シンコ・デ・マヨ」の一週間にあたる日付のラスベガス。すでに米スポーツ専門局『ESPN』での生中継も決定するなど否が応でも関心が高まる中で、日本からやってくる怪物には単なる勝利ではなく、圧倒して勝つことが求められる。
そんな井上の挑戦に「彼はずっとラスベガスで戦うことを望んでいた」と言葉を寄せたドネアは、自身も5度戦った経験がある檜舞台での“戦い方”を指南する。
「ラスベガスはすべてが壮大でそこでの戦いにはエネルギーがいる。雰囲気も違うし、ファンは時に残酷にもなる。相手を倒しにいく努力を十分にしていないとブーイングされるからね」
井上にもラスベガスでの戦闘経験がないわけではない。しかし、4年前に実施した2試合はいずれも新型コロナ禍での無観客試合。本人も「ラスベガスで試合をするには精神的な部分も大事になる」と語るように、まさに心身の強さが問われる舞台である。
ボクシング界で強い関心が集まる舞台での試合について「ラスベガスではみんなに期待されることでさらにプレッシャーがかかる。他の都市とはわけが違う」と論じるドネア。だが、過去2度も井上と拳を交わし、その力を知る42歳は、こう続けている。
「イノウエは私と似ていて困難に直面しても立ち向かう姿勢を持っている。彼はここで相手を破滅させるために全力を尽くすつもりだよ。彼には、どの瞬間であろうとノックアウトを狙うメンタルがある」
井上の可能性に投げかけた持論
井上はこのラスベガス決戦を皮切りに、異例の連戦が有力視されている。来春までにWBA暫定王者のムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)、WBAフェザー級王者ニック・ボール(英国)、そして、自ら対戦を宣言したWBC世界バンタム級王者・中谷潤人(M.T)との東京ドームでのメガマッチだ。
無論、カルデナス戦でのタイトル防衛が大前提なのだが、階級を上げ下げする挑戦は、無敗街道を突き進む井上にとっても未知ではある。
では、過去に5階級を制してきたドネアはどう考えるのか。「イノウエの将来がどうなるかわからないが今のところ彼にとってすべてが可能であると信じている」と論じるベテランは、フェザー級での戦いに持論を投げかけている。
「フェザー級にもなると、イノウエでも多くの困難に直面すると思う。でも、それが我々ファンの見たいものだとも考える。イノウエは、筋肉も体格も男として成長してきた。だから、彼の方が、私よりも苦もなくフェザー級に移行できると思う。彼はそのパワーを新しい階級でも発揮するだろうね」
過去に井上は「『敵がいないから階級を上げろ』って簡単に言うけど、上げるのは簡単なことではない。パフォーマンスを潰されるようならあげることはしない」と階級制スポーツであるボクシングへのこだわりを語ったことがある。その言葉が示すように、誰よりも「自分の強さを発揮できる場」にこだわってきた偉才が、新たなる挑戦でどのようなパフォーマンスを見せるかは興味深いところではある。
世間の風潮に流されず、冷静に己の強さを磨きぬいてきた。そんな井上が挑まんとする簡単ではない挑戦の重みを知るからこそ、ドネアの太鼓判は説得力があると言えよう。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]