京都の旋風は「23年神戸」をほうふつ 共通点は「ベースの確立」「ベースの向上」「補強による上積み」
2025年4月30日(水)6時0分 スポーツニッポン
【スポニチ蹴球部コラム Footひと息】京都がJ1リーグで旋風を巻き起こしている。29日はG大阪戦に敗れて首位から陥落したが、開幕前には弊紙で今季を展望した槙野智章氏が台風の目として注目していた。
それは沖縄キャンプや他クラブの仕上がりを見た私と槙野氏の独自取材に基づく見解の一致によるものだったが、ただ当時の私は何となく「いいな」と思っていただけ。その“何となく”の正体が何だったのか、今は少し見え始めている。
23年の神戸と“雰囲気”が似ているのだ。厳密に言えば、22年後半から23年開幕へ向かう神戸と、今季の京都から通じるものが(直感的に)多いと感じていたのだと思う。
(1)ベースの確立 京都の昨季後半戦は9勝6分け4敗。それまで全ての局面でボールを奪いにいく積極性を求めていたが、5月19日広島戦で0—5と大敗した後、奪いどころやゴール前の守備の仕方を整理した。その上で練習場での熱量の重要性を再確認。今も息づく指針は揺るぎないものになった。神戸は残留争いに巻き込まれていた22年夏に吉田孝行監督が就任。ハイプレス+ハードワークを掲げ、シーズン終盤に5連勝を手にして翌年の礎になった。
(2)ベースの向上 京都の沖縄キャンプで、驚きの風景があった。右サイドバックがボールロストした状況をつくり「攻撃→守備」の切り替えを求める練習をしていたのだが、対極に位置する左FWまでも猛ダッシュで自陣に戻るというものだった。チョウ貴裁(チョウ・キジェ)監督は「他人事になりそうな状況でも自分事に考えてもらうため」と説明したが、すでにJ1でも高い強度を誇るチームだっただけに“さらに求めるの?”と目を丸くした。思えば、神戸はチーム全体ではないがMF山口(現J2長崎)は23年元日に雪の中を走り込み、FW武藤はオフに初動負荷トレーニングを本格導入して走力を鍛え上げていた。すでに実力のある彼らの“限界突破”の精神は土壇場での強さにつながった。
(3)補強による上積み 京都は24年夏にFWエリアスを獲得。高い得点力でチームを残留に導いたが、今季はMFペドロやDFウイリアムが加入した。最後に“剛のチームにあって柔の技を持つ”MF奥川が加わり、多彩かつ分厚い陣容ができ上がった。神戸も23年にMF斉藤やDF本多、MFパトリッキらが加入。強度を高められる選手と圧倒的な速さで違いをつくれる選手がそろっていた。
現時点で京都に足りないものは、2度のW杯に出場したFW大迫やDF酒井のような大舞台での経験者か。ただ、E—1選手権でMF川崎やFW原が選出されて重みを知り、今秋のU—20W杯でMF平賀やDF喜多が自信を胸に帰国してくれば…。彼らの成長が新たな“勝者のメンタリティー”をもたらせるのではないかと期待する。
はたして、京都はどこまでたどり着くのか。台風の目だけにとどまらない、結末を見てみたい。(飯間 健)